『SUNABACO今治』へ行ったら2回も生き返った話 【中編】
2023年9月2日
《1日目 今治(夜)》
いよいよイベントの開始である。
イベントのオープニングを飾るのは、SUNABACO代表のなかまこさんと、今治市の徳永市長、そして今回のライブの発起人でもあるTsunehisa Nakajimaさんの3名によるトークイベントである。
トーク内容の詳細はSUNABACO公式ノートをご覧いただきたい。このトークの中で、徳永市長のこの言葉が刺さった。
僕も地方のいち田舎に住む身である。放っておけば衰退していくしかない地域に住んでいる。
今治市には、1999年8月にしまなみ海道の開通を記念して始まった「今治ジャズタウン」というイベントがあったが、先日開催された2023年のイベントで最後になったらしい。町から一つ音が消える。寂しさを感じる市民の方は多いのだろう。
しかし、今夜はまたJAZZの音が帰ってくる。
ひとつが終わり、ひとつが始まる。
おそらく、バトンを渡したつもりも、受け取ったつもりも当事者にはないだろう。
しかし、それは運命的に渡されたような気がする。
まあ、こんな勝手な妄想は野暮というものだ。
さあ、楽しい音楽の時間だ。
舞台が光っている。もちろん、ただライティングされているだけだ。けど、僕には光って見えた。
こんな間近で演奏を聴いたことなんてない。というか、JAZZライブ自体が初めてなのだ。
JAZZに興味があるかと聞かれれば、答えはNOだ。興味がないというか、何も知らないから答えようもない。
普段聴く音楽はK -POPやJ -POP。noteを書くときにYouTubeでBGMチャンネルを流している程度。音楽について何も語れないニワカ以下の猫山である。
それなのに、JAZZというちょっと高尚な音楽など楽しめるのか? しかもライブで? 若干不安になるのも仕方ない。
演者でもないのに何を不安がっているのか不思議だが、未体験ゾーンに足を踏み入れるときはどうしても不安に駆られてしまう。居心地が悪くなる。それがこれまで自分の経験に蓋をしてきた。どうしようもなく悪い癖だ。
しかし、そんな癖を無理やり押さえつけることができるようになってきた。
この1年間、多くの機会をいただき、多くの人たちと交流できた。でも、そこに至るまでの時間は、多くの不安に襲われた。お話を受けたことを後悔したことも一度や二度じゃない。
でも、体験した後は一切後悔などなかった。すべて、素晴らしい経験として血肉になっている。
不安に感じる機会にこそ、新たな扉はある。
僕はやっと、それを信じられるようになってきた。
未体験の場所にいる。そして、ステージは輝いている。
音が、鳴り始めた。
感想を書くのはとても難しい。
ただ一言
「今日来てよかった」
これしかない。
JAZZは、僕の想像を超えていた。
演者の皆さんの技術は全然わからない。でも、本当に良い演奏だったと感じた。感動してしまったのだ。
今回はニューオリンズスタイルのトラディショナルJAZZとのことだが、なんのことかさっぱりわからない。わかるはずもない。てか、予習くらいしてくればよかった。
しかし、曲の合間に親切に説明があり、曲を「理解できる」ようにしてくれている。おかげでスッと浸ることができた。
黒人たちの悲しみ、辛さ、喜び、陽気さなど、僕にはわかるはずのないものが、圧倒的な演奏により届けられ、わかったような気になってくる。
わかったような気になる。これは冒涜なのかもしれない。
しかし、曲を聴いただけでズブの素人がわかったような気になってしまうのだ。これは異常なことだろう。
曲が進むごとに、みんなが夢中になっていく。圧倒的な演奏。圧倒的な音。お酒の力も手伝って、どんどん引き込まれていってしまう。
体が揺れ始めている。揺らさずにはいられない。
思えば、相当疲れていたはずだ。なんせ一回ホテルで寝ていたくらい。
疲れは取れていない。しかし、疲れを感じない。身体が、頭が、心が覚醒している。まるで蘇生したかのように、僕はいまここにいる。
昔に読んだ村上春樹の本に「音楽の効用」というエッセイがあった。
村上春樹は若い頃、喫茶店を経営しており、みっちりと肉体労働をしていた。その中で何かのライブのチケットを取ったものの、あまりに疲れすぎていたので行こうかどうか悩んだ末、結局行ったそうだ。
無理して行ったライブは、彼の想像を超えて素晴らしかった。そして、終演のあと、彼はあることに気が付く。
疲れが、全てなくなっていたのだ。
音楽には不思議な効用がある。それが、音楽をこよなく愛する彼の結論だった。
僕は20代の頃このエッセイを読み。「ふうん。そんなものなんだ」と感心しただけだった。だって、そんなもの体験しないとわからない。
20数年の時を経て、やっと音楽の効用がわかった。僕は、蘇生していた。
生演奏を間近で聴く迫力。音は振動をもって伝わり、耳じゃなく身体を震わせてくる。それも外側じゃない。内側だ。
激しく優しくしなやかに、音は姿を変えて身体に染み込んでくる。細胞が反応しないわけがない。
素晴らしい演奏を聴きながら、ふと横を見る。なかまこさんが仕事をしている。
僕は音楽の素人なので、なかまこさんが何をしているのか詳しくはわからない。でも「音を制御している」というのは知っている。
この心地よき音を発生させているのは演者の皆さんだが、その音を僕に届けているのはなかまこさんだ。ちゃんと届くように変換してくれている。
なかまこさんはこれが本職だ。僕は、彼の本職の仕事ぶりを初めて見た。そして、見るのを楽しみにしていた。
なかまこさんでなければ、ここまで心地よくはならなかったのだろう。それを確信できるほど僕はわかっているわけじゃない。てか、何もわかっていない。けど、それは間違いなさそうだ。
舞台にはツネさん(Tsunehisa Nakajima)がいる。Xで知り合いになって、今日初めて会えた。
ちらちらと動画でベースを弾いておられるところを見ていたが、とってもかっこいいと思って見ていた。渋い。イイ。
今日はネクタイなんかしちゃってめちゃかっこいい。スイングの仕方?もかっこいい。表情なんかも時々「くうううぅぅぅぅぅ!!」みたいな顔をしてたまらない。
ツネさんはアメリカ国籍を持つ、元日本人のアメリカ人である。
アーティストとして渡米したが、一回どん底まで落ちてから、ソフトウェア会社のCOOにまで上り詰めた人である。よくわからない。豊臣秀吉か。
つまり、日本からアメリカへ国籍を変え、どん底から経営者まで駆け上がり、ベースもエロく弾けるという数え役満みたいな人である。
そんなイカすおっさんが、最高に楽しそうに演奏している。もう素直に羨ましいのである。
絶対モテるやん。楽器は卑怯やて。弦切れろ!!!! と全力で呪っていたらギターの佐久間さんの弦が切れた。俺のせいじゃない。
おっさんがかっこいいのは最高である。
ツネさんも、そして「卓」の前に佇むなかまこさんもかっこいい。そうなりたいと願わずにはいられない。
身体が熱くなる。
音楽で蘇生し、かっこいいおっさん達が熱をくれた。
今夜は、JAZZは、おっさんは、最高じゃないか。
+++++++
ライブの後はいよいよ「BAR NEKOYAMA」の開店である。
前編でもいったように、僕はお酒など作れない。なのでカウンターの前に座って、お話をしに来てくれた方と話すことにした。
代わり、というわけではないが、実質的にSUNABACO今治のサポーターとなっている鈴木社長がカウンター内に入ってくれていた。助かるのである。
正確にはライブの前だが、衝撃の事態があった。
僕こと猫山課長が、ある会社のCFOに就任した。
てか、知らない間に就任していた。
何を言っているかわからないと思うが、ありのまま今起こったことを話すぜ。
(株)nyansという会社の代表取締役の谷口氏に「初めまして、これお願いします!!」といって渡されたのがコレ
何度も言うが、初対面である。初対面である。大事なことなので2回言いました。
「これは久々に香ばしい人物に絡むことになったぞ……」と、金融機関20年で培った警報器がけたたましくなっている。ちょっとやそっとのガス漏れじゃ鳴らないレベルのヤツが鳴ってる。
安請け合いはできない。むちゃくちゃなことをやっているバンカーの自覚はあるが、根はまともで真面目で普通である。
普通なら「申し訳ないですけどできないです。自信も能力も時間もないです」と断るところだ。
しかし、nyansはSUNABACOが支援している会社だ。ならば、僕は支援しなければならない。
SUNABACOのフィルターを、僕は信頼している。nyansは、支援に足る会社なのだ。そこに疑問は挟まない。
なので、快諾する。頑張りましょうとか言っちゃた。
その後、谷口社長と話したが、ここまで目がイっている人間を久々に見た。目を見るだけでゾクゾクしてくる。こいつはやべえ。例の警報器がまた鳴る。と同時に、ワクワクしてくる。絶対に面白いことになる確信がある。
SUNABACOは最高だ。いつだって僕に刺激をくれる。
恩を返すべく貢献しようとしても、返すものよりもいただくものの方が多い。ちっとも恩を返した気にならない。
僕にできることは決まってる。全力の貢献。それしかない。
気合を入れ直す。ちょうどさっき蘇生したばかりだ。気力はみなぎっている。
さあ、明日はいよいよ僕の出番。
報恩の時だ。
《後編へ続く!》
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