NFTの価値はどこから来るのか?

追記

2021/12/13 投機性による価値 を追記

お断り

私はブロックチェーンのエンジニアでもなく、ホルダーでもないです。
技術書ちょろっと読んだ程度のニワカが俺は(こう思うよ!)ぐらいのもんだと思って読んでもらえると幸いです。

概要

昨今、NFTの高額取引が話題になっている。
しかし、NFTはコンテンツを一方的に参照しているだけの記録(トークン)であり、コンテンツそのものではないし、NFTが自分のウォレットに移動した事により発生する法的権利はないし、身も蓋もない事にNFT自体にNFTの作者が誰なのか?を証明する機能もない。(外部のサービスによりトークンの真正を証明する必要がある)

やっちゃいけないけど、NFTを買わなくてもCryptoPunksのアイコンをDLしてきて使う事もできるし、NFT化されたコンテンツは技術的にも法律的にも保護されるわけではない(勝手に誰かが作ったデータだし)
さらに、ウォレットは匿名性が高く、仮想通貨は資金の流れを分からなくさせるミキサー(その名の通り資金洗浄)もあるので、任意のNFTを自由に釣り上げる自作自演も可能である(規約で禁止されるが、釣り上げ行為である事を技術的に証明する手段を持たない)

「NFTの価値…はアイコンにできる!」とかいう的外れな説明もはびこり、いよいよわけがわからない。
別にNFTじゃなくてもアイコンにできるし、なんならNFTはPNGとかJpegじゃないんだから、データ構造的にはむしろアイコンにすらできない(フルオンチェーンもあるけど割愛)

例えばNFTの原形になったCryptoPunksの最初は「ユニークなIDが割り振られただけで、どんなアイコンをしてるのか?は10000個のアイコンがまとめられた1枚画像から、IDを引数にして引いてくる」とかいう実装になってる。

え?何でこなもん取引すんの?というのが率直な疑問だと思う
おれもそう思う。

自分もそう思ってバカバカしいと感じたけど、色々調べていくうちにある程度は解釈可能になった。
結論を言うと、NFTの値段というは複雑なコンテキストの上で成立してるものなので、なまじ画像として表示してるのが本質を掴みづらくさせている。(のがNFTの良さでもあるんだけど?)

中央集権的保証と、非中央集権的保証

まず、NFTの価値を説明する為に前提を揃える必要がある。
勝手に名付けたのが「中央集権的保証」「非中央集権的保証」だ。

例えば、「土地の権利」について考えてみます。
最近、不動産にハマってて正直不動産とか不動産本読んでたりするんですよね。
土地の権利には借地権とか、底地権とかあって借地権の中でも色々あるんですけど、総称して「土地の権利」とします。

中央集権的保証においては、自分の所属してる集団で最も権力を持つ者が色々な権利を保証します。
この場合、自分の土地の権利は国によって保証されているわけです。
国という中央に権力を集約し、それによって保証するので中央集権です。

ブロックチェーンにおいては、分散処理によってデータが管理されています。NFTに限らずブロックチェーンは全てそうです。
前述したような自分の所属してる集団で最も権力を持つ者が存在しません。
では誰が保証してるのでしょうか?
それは、「ブロックチェーンに参加している集団同士で互いに保証している」という事になります。

どういう事かと言うと、ブロックチェーンに参加している集団にとって、本物の土地の権利書は本物として機能してくれないと困るし、偽物は偽物として処理してくれないと、互いが互いに困るわけです。
そうなったら、仮にブロックチェーン上に偽物の土地の権利書を発行した所で、ブロックチェーンに参加している集団はそれを否定するわけです(現在は運用ベースですが)

結果的に、偽物の土地の権利書を勝手に発行した所で、ブロックチェーンの参加者に対して「この土地は俺のもの!」と周知できないわけです。(集団が運用ベースで否定する)
まあ、結局の所…ブロックチェーンというデータ構造で管理してるだけの個人または集団に紐づく中央集権って事なんだけど…。
有名なトークンは「多くの人が本物を知ってる」って前提にしてちょ…

少なくとも、ブロックチェーンに参加する事を前提としたNFTを中央集権的に捉えようとするとおかしい事が起こります。
「NFTには保証する機能や権利が付随しない」という議論は暗黙的に中央集権的保証で解釈しようとしています。
ブロックチェーンは非中央集権的保証なので「でも、みんなが偽物のNFTと思ったら、偽物のNFTを取引しても意味ないし、偽物のNFTには値がつかないよね」となる。運用ベースで。

なので、NFTに中央集権的保証がないのは当たり前で、その代わりに非中央集権的保証が参加者全員によってなされているとする!というのが非中央集権的保証。

非中央集権的保証が信じられないなら、集団に参加しない方がよく。
ブロックチェーンの集団に参加するという事は、非中央集権的保証を信用せざるを得ないということになる。

ここから先は「非中央集権的保証を前提とした、本物と偽物が運用ベースで判別可能な世界である」という前提で話を進めます。

CryptoPunksは俺にも描けるかもしれないが、誰も作る事はできない

CryptoPunks (引用:OpenSea)

これはNFTでめっちゃ有名なCryptoPunksという作品で高額で取引されては度々話題になってる。
おそらく、これを見た999割ぐらいのは(俺にも描けそうじゃね?)と思うだろう。正解、たぶん描けます。

では、「CryptoPunksを作れる」だろうか?
それは、CryptoPunksの原作者でさえできないのである。
(は?どゆこと?)と思うかもしれないが、これこそがNFTの価値である。

大前提として、Ethereumという仮想通貨はBitcoinのような通貨用トークンの他に、色々な機能を付けたトークンを作る事ができる。
NFTもそのEthereumの機能を使って作られたトークンの1つだ。

一般的に言われてるNFTというやつはEthereumの(ERC-721 NON-FUNGIBLE TOKEN STANDARD)という規格でできてる事が多い。
これはNFTの条件を満たすのに必要なパラメータと関数を定義したインターフェースです。
プログラマーの人はgithubでソースコードを見たほうが早い。

で…CryptoPunksはというと、EthereumのERC-20という規格で作られています。
CryptoPunksができた時はそもそもERC721は存在せず、ERC20を原形としてNFTのコンセプトを実現したプロジェクトです。
CryptoPunksは10000個しか存在せず、かつそれぞれに固有のIDが振られています。
そして10000個のアイコンが1枚の画像として結合されており、IDを参照して該当するアイコンを取得するというような方法でできています。
ここで10000個のアイコンが見れます。

CryptoPunksが24Pixelなのは縦横に100個並べたアイコンがそれぞれ24Pixelだと2400Pixelのpngに収まるのでwebで扱う画像のサイズとしてはちょうどいいからじゃないでしょうか。
12pixelだと小さめだし、48pixelだと大きめだし

つまり、CryptoPunksは「俺にも描けそうなドット絵」なんだけど、CryptoPunksはNFTとかブロックチェーンにおける歴史なので、今からその歴史をもう一度作ることは誰にもできないよねって代物なのである。
これらの技術的、歴史的面白さに価値がある。
ドット絵を買ってるではなく、歴史的技術的ブラックロータスを買ってるだと思ったら少しは納得感あるんじゃなかろうか。
間違っても、ドット絵を描いたら高額で買ってくれるというわけではない。

参考:CryptoPunksとは?
参考:CryptoPunksのGithub

そして、非中央集権的保証

現在NFTの市場に参入してる人口はまだまだ少ない。
参入人口が今後も増加すると予測するのであれば、まだ見ぬ金持ちが(このPunksマジでほしい!)と思うかも知れない。

そして、勝手にコピーしてアイコンに設定する事だってできてしまうが…コミュニティはその人が持ち主ではない!とするし、自分のウォレットに入ってないNFTを使っても実感としてはただ虚しいだけである。
そうなると、前述したように中央集権的保証もなければ、権利もないトークンだが、そのトークンを取引する以外に、非中央集権的保証を信じてる集団に対して、自分の権利を主張する術を持たないのだ。
これこそがNFTの持つ価値。「他人にNFTを渡した事実を作ってやれる」のはその集団の中で本物とされているNFTを所有してる者のみだけ。
(ウォレットと個人の真正が運用ベースでとれるものとする)

非中央集権的保証という枠組みに参加する以上は「そういうものである!」とする他ないのである。
この感覚がいまいち納得できないのは自然だ。
何故なら、今まで多くの人は中央集権的保証の中で活動していて、非中央集権的保証というのはブロックチェーンならでわの新しい価値観だから。

投機性による価値の上昇

もう1つNFTの価格を押し上げてる理由が「もっと価格が上がるかもしれないから買う」という投機性です。
投機の善悪だとか、どこからどこまでが投機か?の議論は無意味なのでしません。その人が主張したい論旨によるので。

もちろん、コレクターの方も居ますし、投機性以上の意味を持って高額で買ってるホルダーも居ます。むしろ、ここを理解しないとNFTは売れないです。
遊戯王のブルーアイズだって、投機性を抜きにして数十万でも安い!と思うお金持ちのコレクターは居るわけですから、全てが全て投機のマネーゲームだと言うのはあまりに乱暴です。

しかし、ブロックチェーンという性質上、一般的なモノとは大きく異る特殊性があります。

例えば、投機で価格が変わる株式と比較してみます。
株式は公平性を保つために色々な法規制がありますが、ブロックチェーンの法整備は株式ほど進んでいません。それは悪意を持った人間に自由が与えられているという事でもあります。
お金の握力はすごいですから。NFTに参入した人だって「お金が欲しいから」というのは動機の何割かをしめるはずです。
悪意をもった人でお金を目的としてる場合、法規制が進んでない事と匿名性の高さは非常に都合のいい技術になります。

個人的に大きな落とし穴だと思ってる点を紹介します。

ブロックチェーンは匿名なので自作自演の入札も可能、つまり、自分のポケットに入ってる金を右から左に移し続けるだけで、金額の総量は変わってないのに取引高の総量を大きく見せる事ができる。技術的に自作自演の断定もできない。
見せかけ上の売上(バリエーション)を作る事だって、技術的には可能です。

次に「100万円相当のEthereum」は「100万円」ではない。
当たり前の事を言ってるようですが重要な事です。
たしかに現在のレートに直したら「100万円」かもしれないですが、EthereumはEthereumであって円ではないです。
みんなまどろっこしいので円という事で話してますが、それこそが価値の不均衡を生んでいます。

ビットコインの逸話で有名なのが1万ビットコインでピザを買った話です。
今のレートに直すと100億円になります。ピザを100億円で買うわけないですよね?
当時1万BTCに価値はないと思われてたからです。ただ電気代のかかる数値でしかないという実感から来るレートが1万BTC=ピザです。
それが結果的に今のレートになってますが、100億円でのピザ決済と当時の1万BTCのピザ決済の”””痛み”””が等価なわけないです。

Ethereumも1年半ぐらい前は1Ethereumで2万~4万程を行き来してました。それがいまだと1Ethereumで40万~50万を行き来しています。
さて、現在100万円相当のEthereumで買われたNFTとは、本当に100万「円」なんでしょうか?
そこは強く意識する必要があります。

ただ、儲けたい!という需要を作れたからこそEthereumの価値は上昇してるので、全てが全て幻というわけでもないので難しいです。

まとめ

他にもジャックドーシーのツイートが3億円のミスリードについて書こうかと思ったけど、さらにクソ長になるのでやめた。
個人的に思うのは完全な非中央集権って中身虚無になっちゃうし、人間の経済活動的にも無理な話なので、Web3の理想論的なのはどうかと思うけど、Ethereumをベースとしたトークンはごくごく一部の使いようによてはアリだなと思う。

サービス提供者視点では、ブロックチェーンはサーバー持たなくていいし(それは参加者に負担させるという事でもあるんだけど)、中身分かってない投資家にはウケいいだろうし、ユーザーが増えてったらトークンの価格上昇という形でリターンを出せる”””かもしれない”””のは使いようだと思うので、CryptoGameとか、プラットホームの機能をトークンとして渡すのはアリかなと思った。

拡張されてないNFTが提供してる機能は「他人に譲渡できる(NFTコミュニティにおいて有効な譲渡した事実を周知させれる)」だけなので、あまり過信しすぎはよくないと思う。

ただし、これもNFT運営次第で…例えば、コミッション代わりに有名なアーティストに似顔絵描いてもらってそれをNFT化してもらって、コミッション代として購入すれば、アーティストのコレクションの一部という形で自分のインプレッションを稼ぐ事ができる。
ニュースとかになったり、NFT美術館とかで展示されればまた相乗効果的に話題になる。
つまり、画像を買うというより、話題になるような仕組みづくりの中にNFTを混ぜるといった方が効果的。
あとブロックチェーンという匿名性を利用すれば…(これ以上はいけない)

まあ、売れた売れないの話はつまんないけど、Ethereum関係のgithubとかは普通におもしろい。
確かに、国のあずかり知らぬ所で経済の仕組みを設計できるのだから、これに夢中になる気持ちも分かる。

以上、現時点での個人的な意見です!

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