見出し画像

大きく見えた先輩はつまらない人になってしまった。

こんにちは、来年から不動産業界で働く予定の暮らしくんです。

実は暮らしくんはSNSが少し得意でSNSから収入を得ていたことがあるのですが、SNSで食べていくのはちょっと違うなと悩んでいたところ、ふとしたきっかけで不動産に魅せられ、不動産業界へ就職することに決めました。という過去があります。
今日はそんな暮らしくんと大学の先輩のお話です。



「卒業おめでとうございます!社会人生活頑張って、いろいろ教えてください!」

サークルの先輩達は今年の3月に大学を卒業し、晴れて社会人になって、それぞれ大企業に就職していった。

総合商社とか、メガバンクとか、大学生なら誰もが一度は憧れるだろうブランドの大企業に内定をもらい、先輩達の目はキラキラ輝いていた。金融、医療、食品、コンサル、それぞれの道は違うものの、みんな自分がやりたいことを選択し、晴れて社会人となって、これから人生を切り開いていくのだ。

有頂天になっているのを悟られまいと、トーンは控え目に抑えていながらも、今後の展望や夢を語っている先輩の口調は興奮気味で、学生の自分から見るとみんなかっこよく見えた。

そもそも、大学入学したてで右も左も分からない自分に、学生生活の手ほどきをしてくれたのがサークルの先輩のサトシさん(仮名)である。
授業の選び方、お酒の飲み方、合コンやイベントでの身のこなし等など、大学生活の楽しみ方を教えてくれた。
旅行にも連れて行ってくれたし、美味しいお店も紹介してくれた。就職活動のアドバイスもしてくれた。

自分より年齢が少し上なだけだが、先輩はなんでも知っているように見えた。とりあえず先輩の後を追っていれば、人生うまくいくような感覚を無意識に持っていたのかもしれない。

そんなサトシさんはメガバンクに就職した。実際先輩は優秀だった。大学でアメリカに留学へ行き、夏休みはバックパックで世界中を飛び回る。インターンにも精を出して、メガバンクからの内定を勝ち取ったのだ。
だから僕はそんな先輩を頼った。どうやったら面接で評価されるのか。どうしたら内定がもらえるのか。先輩のアドバイスは的確だった。
そんな先輩からのアドバイスもあり、僕は無事志望していた企業に内定をもらうことができた。

自分自身の就活が落ち着き、内定をもらってほっと一息した頃、久しぶりに先輩達と飲みに行くことになった。


先輩達は社会人になってから早3カ月、もう研修は終わってバリバリ働いてるんだろうか。

日本を支える大企業で働くことができるとは、いったいどんな世界が広がっているんだろうか。いつもとは違う話が聴ける気がして、学生時代から何度もお世話になった大衆酒場ちばちゃんへの足取りも早かった。

----------

「社会人どうですか?やっぱり楽しい?」

僕は目を輝かせて聞いてみた。すると先輩は意外な答えを漏らした。

「・・・つまんないよ。雑用みたいなことばかりで、業務もなにやってるかわかんないし(笑)」
「職場の先輩や上司を見てても、ああはなりたく無いって思うばかりだな~」
「それに上司の世代と違って、俺らの世代はポジションもどんどん無くなって、出世もできないんだろうな、ははは(笑)」

メガバンクに内定をもらい
つい3ヶ月前に今後の夢を語っていたサトシさんの姿は無かった。

サトシさんだけではない、配属で地方に飛ばされてしまった先輩。毎日朝4時に起きて出社している先輩。周りとの能力差に劣等感を感じている先輩。
輝いていた先輩達は、みんなどこか不本意そうな雰囲気で愚痴を漏らしている。

みんなストレスが溜まっているのか、酒を飲むスピードがいつもより早い。
飲み終わっても下げられないジョッキで机が埋まり、ジョッキについた水滴でテーブルが濡れている。

「起業したいな~。もっと自由に生きたいよ。」
「こんなアイデアで起業できないかな?ビジネスチャンス感じない?」

サトシさんは酔っ払いながらも、ときどき真面目な顔をしてそんな言葉を口にしている。

正直、僕には愛想笑いしかできなかった。

本当にそのアイデアで起業したいなら、早くプレゼン資料でも作って、投資家の一人にでも会ってピッチしてみればいいじゃないか。

余談だが、僕は大学時代、SNS中心にいろんな活動をしていた。数十人集めてメディア運営をしたり、いくつかの企業でインターンをしたりしていた関係上、大学生の中では経営者や投資家の方と繋がりがあるほうだと思う。将来的にスモールビジネスではなく、スタートアップを立ち上げたいという想いも強くもっている。

だから僕は少し知った気になって、サトシさんに言ってみた。

「とりあえず行動してみたらどうですか?アイデアだけじゃ儲からないですよ。」

「行動ねぇ・・・。でも、そんな時間はないんだよ。」

サトシさんは卑下するように言った。

僕はもうそれ以上の事は言わなかった。言っても仕方が無いと思った。

「ですよね、社会人大変ですもんね。」


その後はサークル時代のようにひたすら終電までお酒を飲んだ。


----------

「今日、こんな人と会うんですけど、サトシさんも良かったら一緒に来ます?」

あれ以来、面白そうな経営者と会う機会には、サトシさんには毎回LINEで声かけをするようにしている。
でも先輩からは「行きたい」という返事は来ない。なんやかんやと理由をつけて断りの返信が来る。

「平日は仕事だから、基本土日しか空いてないんだよね」

その貴重な土日もいつも飲んでるだけじゃんか。朝まで飲んでたまにサウナに行ってるだけじゃんか。
そしてまた沈鬱な面持ちで月曜日を迎えるんだろう?

そんな言葉が喉まで込み上げてくるけど、もちろんそんな事は言わない。

「了解っす。また連絡しますね。」と返信する。

先輩はつまらない人になってしまった。仕事内容について聞いてもあんまりパッとした答えは返って来ない。
口を開けば、「起業したい」「自由に生きたい」と言ってるけど、それに向けた行動は起こしていない。
そして休みの土日は飲み会かサウナ。

カッコよく見えた先輩たちは今、社会人になった。
大手企業で働ける先輩たちはやっぱりみんなかっこいい。そう思っていたけど現実は違うみたいだ。

では自分はどうしたら良いんだろうか。

このまま何も考えずに、先輩達の後を追っていたら、自分も同じようになってしまうのか。
なんとか自分も就活で内定をもらえたものの、このままじゃダメなんだろうか。
期待と不安と高揚と焦りが折り重なり、複雑な感情が渦巻きながら、忙しい毎日が過ぎていく。

----------

「また飲みに行こうよ。今度は真面目に語る会にしたい!」
サトシ先輩からLINEが来た。

本音を言うとあんまり行きたくないし、もううんざりしている。
「起業したい」「自由に生きたい」
また聞かされるんだろうな。そんな言葉はもう聞き飽きたよ。

「どうせ朝まで飲むだけでしょ(笑)」

感情を抑えて、返信をする。

いつまでも先輩たちと楽しく飲んでいたい。
だけど「つまらない」「行きたくない」と思ってしまう自分がいる。

かっこよく見えた先輩はもういなくなってしまったんだろうか。
「サラリーマン」であることってそんなにつまらないことなんだろうか。

わからない。未来のことは分からない。
だから今日も未来について考えてみる。
気になったことを徹底的に調べて、考えて、行動してみる。

そういえばこの間、開いた本にこんなことが書いてあった。

If you don't think of the future, you won't have one.  - Henry Ford - 
未来を考えない者に未来はない。- ヘンリー・フォード - 

なるほどなあ。偉人は大したことを言ったもんだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?