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angela礼賛

 一昨年2018年の秋、我が家に音楽ユニット・angela特需が起きた。

 当時は彼らにとってデビュー15周年記念イヤー。それに伴い、2枚のベスト盤のリリースや東京・日比谷野外大音楽堂でのライブの開催など、周年企画の数々を展開していた。そしてぼくはかつての『音楽ナタリー』在職時の彼らのインタビューを気に入っていただけたのか、ボーカルのatsukoさんから直々のご指名をちょうだいして、ベスト盤のライナーノーツやライブパンフレット用のインタビュー、野音公演の公式レポートなど、いろいろなお仕事を担当させていただいた。

 そんな中のひとつにタワーレコード各店で頒布されたベスト盤販促用のチラシへの寄稿というものがあった。

 ベスト盤は絶賛ナウ・オン・セールなので、そのライナーの中身を転載するわけにはいかない(読みたきゃ、下のAmazonリンクからCDを買え)。またパンフレットに載っているのはインタビューなだけに(ベスト盤のライナーもそうだけど)、angelaメンバーであるatsukoさんとKATSUさんのご許可をいただけなければさすがに転載はできないし、根っからの面倒くさがりもあり、たかだかnote風情のためにそこまでの手間はかけたくない。だいたいまずもって高倍率のライブチケット争奪戦を勝ち抜いた上でパンフを手にしてくれた、ぢぇらっ子(angelaファンの総称)のうれしいがんばりのことを考えると、ここでロハで読ませるのはさすがに忍びない。

 その点、タワーのチラシはベスト盤の販促タイミングでロハで頒布されたもの。今は店頭に置いてない。しかもその中身は? といえば、メンバーインタビューではなく、ぼくによるなんともふんわりとしたレビュー原稿だ。

 というわけで、angelaメンバー、彼らの所属プロダクションであるミュージック・ワンダー・サーカス、所属レーベル・キングレコードに怒られればマッハで引っ込めるが、そのチラシのテクストを以下に転載してみたいと思う。関係各所にバレない限り、怒られない限り、載せ続けておこう。

 マジメな話、angelaさんは、こと音楽については偏屈で狭量なぼくが全幅の信頼を置いている音楽グループだ。シンコペーションするストリングスでアゲなリズムを作るマイナーアップのベタなアニソンを作る一方で、ギターがやたらとギターがうるさいラウドでエモいロックや、インダストリアルなビートが渋いテクノ、戦前・戦中の軍歌を思わせるマーチを、1コーラスの再生時間(89秒)すらも決まっているガッチガチのフォーマット・ルールに縛られたアニメソングの世界にドロップしてみせる。面倒くせえ(失礼)としか言いようのない、諸処の制約ありきのその世界で15年以上サヴァイヴし、ベテランと呼ばれるに十分な格であるにもかかわらずなお、それでもお手盛りは許さない。常にオリジナルな表現を希求し続ける野心的なグループであることがとても素晴らしいと思っている。

以下、チラシの表。

 KATSUさんの言葉を借りるなら「アニソンはJ-POPよりも8年遅れている」と言われたゼロ年代、そしてアニソンが一大ムーブメントになったテン年代前半、その爛熟期のただ中にあるテン年代後半。今回angelaが放つベスト盤2作には、この15年の音楽シーンにおけるアニソンの決起から勝利、繁栄までの歴史が刻まれている。そしてそれはすなわち彼らの闘いの歴史そのものにほかならない。

「明日へのbrilliant road」で華々しくデビューを飾り、その後も「Shangri-La」「Spiral」とサウンドの切っ先を研ぎ澄ますことで当時のJ-ROCKに見事に比肩。さらに「蒼穹」「KINGS」と、“テン年代のアニソン”のフォーマットたる楽曲群でシーンを牽引したかと思えば、その後半には自らが構築したそのデザインを美しいまでにあっさりと解体し「シドニア」「騎士行進曲」でこれまで誰も聴いたことのない、しかし紛れもないアニメソングを作り上げてみせる。

 angelaがシーンと寝たのか? シーンがangelaと寝たのか?

 その実態は判然としないが、彼らが15年間、アニソンシーンの王道を歩み続け、しかも革命を起こし続けてきたことはまず間違いないだろう。