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かわいい赤ちゃんの探しかた

 2014年、『TV Bros』誌9月14日号の第2特集「かわいいという衝動」に寄稿させていただいた(第1特集はYUKIのインタビュー)。

 この特集は大森靖子、蒼波純、篠崎こころ、日笠麗奈、レディ・ビアード(ex. LADYBABY)ら、各界の人々が己はなにに「かわいさ」を見出し、なぜそれに「かわいさ」を感じるのかを論じるというもの。その中でぼくに回ってきたのは赤ちゃんのかわいさを語る論考だ。当時ぼくはInstagramなどで見つけたかわいい赤ちゃん写真をツイッターに転載していたのだが、それを掟ポルシェさん(ロマンポルシェ。 / ド・ロドロシテル)曰く

板垣退助風の政治家ヒゲ&ガッチリ体型の40代男性やさしそうな笑顔が魅力

な同誌編集部の土館さんにたいそう気に入っていただき、「おいお前、赤ちゃん好きじゃん? 赤ちゃんのかわいさについてひとくさり語れよ」とお仕事をちょうだいした。

 さりとて、以下のテクストのとおり、赤ちゃんがかわいいことなど自明の理。いまさらそのかわいさを因数分解する意味などまるでない。というわけで、かわいい赤ちゃん写真の探しかたをレクチャーするコラムを提出した。

 が、多くのかたがご存じだろうが、『TV Bros』誌は過日、紙の雑誌という形態で出版することを諦めやがった。上記掟さんの記事のとおり、noteで糊口をしのぐ道を選んでいる。それでなくとも一般的には雑誌のような定期刊行物の原稿の出版権(著作権もそう? 著作権はさすがに著作者=オレのもの?)はその雑誌の販売期間のみ出版社に帰属するものとされているようだ。要は隔週刊である『TV Bros』において、編集部がぼくの原稿についての諸権利をホールドしていたのは雑誌発売後2週間だけであり、しかも、もはやその雑誌がテイをなしていない。というわけで、当時の原稿を以下に転載しようと思う。たぶん東京ニュース通信社から怒られる筋合いはないと思うから。

以下、転載原稿。

ネットの海から赤ちゃんをサルベージする手立てについて

 赤ちゃんがかわいいことなど世の理。問答無用でかわいいのである。そう信じるがゆえ筆者はネットで見つけた赤ちゃん写真のURLを日々Twitterに投稿している。そこで本稿ではネットでフェイバリット赤ちゃん写真を見つけるワザを紹介しつつ、己が赤ちゃんの何に美を感じるのかに迫ってみよう。

 赤ちゃん写真検索に“使える”ツールの筆頭は、スマホ用写真共有アプリ・Instagramだ。ハッシュタグ機能が用意されており、任意の単語で検索すれば「#○○○」と添えられた写真=似たモチーフの写真が一覧表示される。

 筆者の考える特にかわいい赤ちゃんとは、とにかく丸い赤ちゃんだ。その丸みを形成する重要な要素たる頬肉が重力に惨敗。輪郭が台形と化した赤ちゃんは神々しくすらある。

 そんな赤ちゃん写真を探すハッシュタグとは何か?

「#むちむち」だ。この語で検索すると常時数千のむちむち写真がヒットする。小太りのブスの自撮りも引っかかるが、数は知れ。いろんな赤ちゃん写真の頬を指でなぞりつつ、心ゆくまでうっとりできる。またむちむち赤ちゃんには、むちむちしすぎるあまり、腕や太ももが輪ゴムで止められたような状態、一口大にちぎって食べるパン状になっているという特徴がある。それだけに「#ちぎりパン」なら、むちむちのお手々写真、あんよ写真を満喫できる。

 Instagramユーザーは「#赤ちゃん」で検索。その結果の中でも特にかわいいと思う写真に共通するハッシュタグを探してみよう。誰とも知れぬ連中が十中八九適当に書いたのだろうそのひと言が、自身の美への衝動を明晰に語ってくれるはずだから。

【2020年6月の赤ちゃん事情】

 上記テクストは2014年秋に書いたもの。その後、InstagramはFacebookに買収されたため、気に入ったインスタの写真・映像をツイートしても、ライバルSNSであるTwitter上には当該写真・映像のリンク先URLが表示されるのみ。サムネイル写真はTLには表示されなくなってしまった。当時のぼくのようにフェイバリット赤ちゃんを全世界3億人のTwitterユーザーに見せつけることはなかなか難しいのが現状だ。

 さらに当時と現在とではInstagramの普及ぶり、人気はまったく違う。いまでは全世界のいろんな人々が利用している。いまや「#むちむち」で検索をすると、残念ながら当時は少数派だったはずの自意識過剰で小太りなブスの半裸の自撮りばかりが引っかかる。「#ちぎりパン」についてもいろんなご家庭で焼かれたのだろう、あんまり美味しくなさそうな自家製ちぎりパンの写真ばかりがヒットする。

 そこで2020年のいま、フェイバリット赤ちゃん写真を探すのにオススメしたい最新ハッシュタグが「#lemonbaby」だ。若干幼児虐待の匂いがせんでもないが、全世界の赤子を持つ保護者の方々のなかにはレモンなどの柑橘類をお子さまに食させて、いかにもすっぱそうな顔をしている彼ら・彼女らの写真・動画を全世界に公開するのを愛好している人々がいる。そしてそんな保護者の方々がすっぱそうな我が子の写真・動画に添えるハッシュタグが「#lemonbaby」なのだ。この語で検索をかけると、困り顔の赤ちゃんを存分に楽しめるはずだ。

 またもうひとつオススメしたいハッシュタグが「#ハイハイレース」だ。「ハイハイレース」とは毎週末全国の「アカチャンホンポ」各店などで行われている、まだ立って歩くことはおぼつかない赤ちゃんたちがそれぞれレーンで区切られた直線コースをいかにハイハイで速く走破するかを競い合うもの。個人的には2021年の東京五輪の正式種目、ないしは公営ギャンブルとして採用するべきだと思っているこの競技なのだが、その熱いレースの模様を逐一記録して、Instagramの海に放り込んでいる保護者の方もまた少なくない。ひとたび「#ハイハイレース」でインスタを検索すれば、ボルトもかくやの勢いでコースを駆け抜ける赤ちゃん、コース途中で完全に座り込んでダーダーと泣きわめく赤ちゃんなど、フォトジェニック極まりない彼ら・彼女らの姿を満喫できる。

 しかも当時と違って、いまのInstagramにはハッシュタグのフォロー機能が実装されている。つまりお気に入りのインスタグラマーのアカウントをフォローする要領で「#lemonbaby」「#ハイハイレース」というハッシュタグをフォローしておくと、そのタグが付された写真・映像が自分のタイムラインに表示されるようになる。

 さらにInstagramは検索精度を日々向上させており、画面左下の「検索」アイコンをタップすると、過去にユーザーが「いいね」した画像・映像をリファレンスして、その人が好きそうな写真を一覧してくれる機能が用意されている。以下の画像はぼくの「検索」アイコンタップ時のオススメ写真一覧。日々、赤ちゃん写真・映像ばかりを「いいね」し続けていれば、Instagramがまだ見ぬ赤ちゃん写真・映像を自動的にレコメンドしてくれるのだ。

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 以上、このテクストがみなさまの明るいインスタライフ、明るい赤ちゃんライフの一助になれば幸いだ。