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【徹底解説-長谷川目線】どうもAPEC参加国の4分の3は、ロシアに強い抗議はしたくないようですが、その理由を欧米諸国は理解していないみたい


速報でタイでのAPEC貿易相会合 ロシア発言中に日米など5カ国が途中退席というニュースが入ってきました。

『タイで行われているAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の貿易担当相会合で、ロシアの発言時に日本やアメリカなど5カ国が退席しました。  

21日からタイで開かれているAPECの貿易相会合には、日本からは萩生田経済産業大臣が出席したほか、ロシアからレシェトニコフ経済発展相が対面で出席しました。  

議長国タイの当局者などによりますと、会議中にロシアが発言を始めた際、日本やアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国が退席したということです。  

会合は22日に閉幕しますが、共同声明が採択されるか不透明な状況になっています』

ふぅ

APECの21ケ国の中で、ロシアの発言時に抗議の退席をしたのは、日・米・、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国のみ

つまり、アメリカと一蓮托生の同盟国ファイブアイの内の4ケ国と日本だけというわけです。

その他のアメリカの同盟国・友好国は、(多分、内内でアメリカに誘われたでしょうが)、今現在バイデン大統領が訪問中の韓国も含めて退席としませんでした。

思えば、アメリカが招集する対ロシアの会議に参加する国は、40ケ国ほどだといいます。

NAT0が30ケ国ですから、後は日本にNATO加盟申請をしているスウェーデンとフィンランド、NATOに入っていないファイブアイのオーストラリア、ニュージーランド、ほかには5ケ国ということになります。永世中立国のスイスとオーストリアが来るとなると、残りは3ケ国です。

即ち、ロシアのウクライナ侵攻に強い抗議をしているのは、ほとんど欧米諸国だけというのが、世界の実態のようです。

確かに、国連の3月2日総会緊急特別会合では、3月2日(日本時間3日未明)、「ロシアによるウクライナ侵攻を非難する決議」を賛成141ケ国、反対5ケ国(ベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリア),棄権35ケ国(アルジェリア、アンゴラ、アルメニア、バングラデシュ、ボリビア、ブルンジ、中央アフリカ、中国…)、意思を示さず12ケ国(アゼルバイジャン…トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベネズエラ)の圧倒的多数で、可決しました。

ただ、これは「ロシアという軍事大国が、軍事力ににものを言わせて隣の国を侵略して領土をとってしまうのはいけないから、反対だ」=「自分の国が、隣の国に攻められて、国がなくなるような国際社会であってはならないという意味での、賛成だった」のです。

しかし!

中国やイラン、またロシアの同盟国カザフスタンやアルメニアまでもが、棄権に回ったのは、「19世紀の強い国家は他国を攻め盗れるという、19世紀の国際社会に戻ってほしくはない」という意思の表れだと思います。(もっとも中国だけは、強い中国が他国を支配する帝国主義を夢見ながら、どうも分が悪いので棄権したのだとは思います)

ただ、国連のロシア非難決議には賛成したけれど、アメリカが招集する対ロシア結束会議には参加しない100ケ国(ロシアのウクライナ侵略には反対だが、だからと言って何もしない、世界の約半分の国)の、本音のところはどこにあるのでしょうか?

それは、「自国がウクライナのように隣の軍事大国に侵略されるのは嫌だ」しかし、だからと言って「ロシアが欧米型の民主主義国ではないという理由で、ロシアを悪い国だとは思わない。なぜならば、自国も欧米型の民主主義国ではないし、アメリカなどに自国の内政について人権云々と文句をつけられるのには辟易する」だと思います。

確かにこのことは理解できなくもありません。

その国の人たちが、自由に自分の意志で発言して行動しながら、法治主義で国が平穏に治まるには、国民の多数派が法律に従う順法精神を持っていなければ無理です。

この順法精神というものにレベルがあることに欧米民主主義国家は気づかなければならないのです

例えば、18世紀のフランス第一革命の時には、自由・平等・博愛の旗を揚げて国家の政治指導者となったジロンド派の権力者たちが、自分個人の財産を増やすために汚職に走り国はめちゃくちゃになりました。なぜこんなことになったのかといえば、国民が賄賂を政治家に渡して、政治家が賄賂を受け取り、賄賂をやり取りしている人たちだけで、富を分け合ったからです。

この構図は、アフガン戦争・イラク戦争の後で、自由な民主主義国の指導者としてアメリカに選ばれた、アフガン・イラクの政治家が世界中から寄せられた援助金を自分の懐に入れてしまったこととそっくりです。

その国の政治は、その国の国民を映す鏡だと申します。また、どこの国の法律でも、賄賂を渡してよいとは書いてありませんし、窃盗・障害・殺人は違法でありましょう。しかし、法律で禁止されても、汚職政治家が権力を手にできるということは、賄賂を渡す国民がいて、汚職政治家に投票する国民がいるということなのです。

なんでまた、自分たちに害する汚職政治家に投票するのでありましょうか? それは、自分の属する民族・部族・宗教代表だからとかの理由かもしれません。即ち、その人物の政治的素養よりも、自分に益する分捕り合戦の力量で投票するのかもしれません。だから、その国の政治が分捕り合戦になるわけです。

この場合には、政治的に負けたほうの陣営の不満は、警察力で押さえつけることになりますので、必然的にその国の政府は権威主義的になります。
19世紀のヨーロッパもそうでしたし、今世界の多くの国で選挙制度を取り入れながらも、少なくない国が治安警察力で国の平穏を保っているのはこのためです。

故に私は、今洋の東西を問わず中進国の政治が不安定なのは、19世紀のヨーロッパで国民的デモが荒れ狂って、国が不安定だったことと同じなのです。

即ち、国民に教育が普及するで、国民の間に「政治家の汚職によって国の富が一部の人たちの懐に入ってしまうことは、不当なことである。法律に反することだ」という意識が広がって反政府デモが発生して、その国の政治は100年単位の時間をかけて、徐々に民主化してゆくのです。

この長期的な視線(フランス各革命の例をひいて)で、現在のロシアのウクライナ侵攻を観ると、フランスの第一革命(ジロンド派)の自由汚職政治がエリティン自由汚職時代で、経済破綻後に「安心して暮らせるのならば強い政治家に服従してもよい」と、当時のフランス人が政治家に強さを求めたナポレオン皇帝を誕生させたように、ロシア人がプーチン大統領の独裁を受け入れたような気がします。

ここでもし歴史が繰り返すのであれば、ナポレオン皇帝が自己過信に陥りついには実力以上を望んで敗れたように、プーチン大統領もウクライナで一敗地にまみれることになります。

ナポレオン戦争の戦後は、フランスでブルボン王朝が復活したためかもしれませんが、戦争に負けたはずのフランスはお構いなし状態だったために、新たな戦争は引き起こしませんでした。

一方で、第一次大戦では戦後に敗者になったドイツに多大な賠償が課されたために、ドイツ人の恨みつらみが第二次大戦をという結果を生みました。

ですから私は、ウクライナ戦争の戦後処理について、ちょっと心配になっています。

ウクライナと欧米諸国が勝ちに乗じて「ロシア国民が恨みを持ち続ける戦後処理をしてしまう」のではないかと心配になりました。

私は、ロシアはプーチン大統領以後に、ベラルーシはルカチェンコ大統領以後に、自然発生的に民主化の風が吹くと思います。それは彼らの年齢を考慮すれば、そう先のことではありません。

勿論、もしウクライナがプーチン大統領の思惑通りに2日で堕ちてしまっていたら、その次はモルドバが狙われていたかもしれません。下手をすれば、中国の習近平と語らって「中国は台湾へ攻め入りなさいよ。ロシアは北海道に攻め込みます」なんて事になっていたかもしれませんので、今ウクライナを援助することは至上命題ですが、同時に、次のことを忘れてはいけないと思います。

北朝鮮の金正恩氏や、イランが、ここまで核に固執するのは、「核兵器を持たなかったゆえに、イラクのサダムフセイン元大統領やリビアのカダフィ大佐が、欧米の気に入らないというだけの理由で滅ぼされてしまった。だから、核兵器を持ちさえすれば、自分は米国に殺されない。」と考えているからだろうということです。

ロシア国民は、世界の4分の3の国の中で見れば、自由で民主主義を求める気持ちが強いほうだと、私は感じます。なのに、バイデン大統領をはじめとして、今ウクライナの援助に全力を尽くしている人たちがロシア悪玉論で戦後処理をすると、ウクライナ戦争後の世界が本当に割れてしまいます。

つまり、「欧米先進諸国が、自分たちは正しくて善なのだ」と錦の御旗を振り回すと、ついてこれずに(自国の中で本当の民主政治をしようとすると、かえって犯罪者がのさばって国が混乱するので) 中国にすり寄る国が出てきて、世界が割れてしまうような気がします。うまく説明できませんが、だから,私はウクライナ戦争の戦後処理を心配しています。

つまり、APEC参加国の4分の3は、ロシアに強い抗議はしたくないようだということを、欧米は忘れてはいけないのであります。

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