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倫理とは何か? をわかりやすく解説する

 今日からNHKでミニ番組『ここはぺこぱと倫理です。』が始まります。大のぺこぱファンである私は、以前からこの番組を楽しみにしていました。

 多様性を肯定する漫才でブレイクした芸人ぺこぱが、視聴者たちとどう〝倫理〟を語り合うのか、今からワクワクします。

 で、今日は番組スタートを記念して、倫理とは何か? 倫理を守るとはどういうことか? について少しお話をしたいと思います。

 と言いますのも、中学のとき、倫理の授業で先生が語ったエピソードがとても印象に残っているからなんです。それはまさに倫理とは何か? を私が理解するきっかけになりました。

 二次方程式とか、歴史の年号とか、古文の動詞の活用とかはほとんど忘れてしまったけど、大人になった今でも、そのときの倫理の授業だけはよく覚えていて、今も人生の指針になっています。

 教育とは、学校で習ったすべてのことを忘れてしまった後に、自分の中に残るものである。byアルバート・アインシュタイン

 であるならば、Y先生の倫理の授業こそが本当の教育だったのかもしれない、と大人になった今は思ったりもします。

 とはいえ、中学生のときはそんなことは夢にも思いません。受験に関係ない倫理の授業は、居眠りする生徒とか、他の科目の勉強をする生徒もたくさんいて、完全に息抜きの時間になっていました。

 特に倫理を担当するY先生は、退職間近のおだやかなおじさんだったので、やりたい放題でした。ようはちょっと生徒に舐められていたわけです。なのに、その先生の授業だけが今も記憶に残っているのは皮肉です。

 前置きが長くてすいません。さっそく、倫理の授業でY先生が教えてくれたエピソードを紹介したいと思います。

 イメージしてみてください。早朝、あなたは駅への道を急いでいます。朝の5時とか5時半とか、限りなく始発に近い時間帯。まだ空は薄暗く、犬の散歩をする人がいるぐらい。

 駅前には信号と小さな横断歩道があります。普段はそれなりに車が行き交いますが、早朝なので、車もバイクも一台も通りません。

 信号は赤で、あなたは横断歩道の前で足止めを喰らっています。急がないと乗りたい電車が来てしまいます。

 あなたは周りを見回し、車やバイクがいないことを確認し、赤信号を渡ります。つまり交通ルールを破ります。おかげであなたは無事に電車に乗ることができました。

 さて、翌日です。同じように朝の早い電車に乗ろうとあなたは家を出ますが、ここで昨日とは違う光景が!

 朝の5時ぐらいにもかかわらず、横断歩道の前に母子連れがいたのです(ホラーとかじゃないです)。お母さんは幼稚園ぐらいの小さな男の子の手をつないで、信号が青になるのを待っています。

 昨日と同じ早朝の時間帯、車もバイクも一台も通りませんし、来る気配もまったくない。横断歩道の前には自分たち三人しかおらず、他にひとの目はありません。

 そんな状況でもお母さんはしっかり信号を守っています。理由は言うまでもありません。子供に「赤信号は渡ってはダメ」と交通ルールを覚えさせるためです。

 さて――問題はその場に居合わせたあなたです。

 言うまでもありませんが、その母子は知り合いではありません。赤の他人です。男の子はあなたの甥っ子でもありません。

 乗りたい電車の時間は迫っています。その電車を逃すと、次の電車をホームでずっと待たなければなりません。正直、一刻も早く駅に着きたい。

 このとき、あなたはどういう行動をとりますか? ここで問われるのがまさに「倫理」なんです。

 あなたが赤信号を無視して横断歩道を渡ったら、その男の子はどう思うでしょう? お母さんに「ねー、お母さん。あのお姉ちゃん、赤なのに横断歩道を渡ったよー。どうしてー?」と問いかけるかもしれません。

 あげく、その子は赤でも横断歩道を渡ってもいいんだと思うようになり、母親の目がないところで信号無視をするかもしれません。だって、あのお姉ちゃんも赤で渡ってたじゃないかと。

 あなたがとるべき正しい行動はこうです――子供が見ているときは信号が青になるのをちゃんと待ち、横断歩道を渡る。あくまで模範的な大人として振る舞うのです。

 これが「社会の倫理を守る」ということです。あなたは普段、交通ルールを守っていないかもしれないけど、「倫理」は守ったのです。

 実際大人になってみると、似たシチュエーションに遭遇することがよくありますが、私は小さな子供がそばにいるときは、車やバイクが明らかに一台も通らない早朝でも、必ず信号を守るようしています。

 自分は成功者でもないし、お金持ちでもない。普通に働いて税金を納めること以外、社会に貢献できることはない。けど、大人として社会の倫理だけは守りたいのです。

 問題は「倫理」は時代に合わせて変化することです。

 ぺこぱの漫才で、女性が女性にプロポーズした後「女同士が結婚……したって別にいいじゃないか。愛はせんべいだ。いろんな形がある」というくだりがあります。

 昔はLGBTという考えもなく、同性同士の恋愛は倫理的に反しているとされていました。ですが、その倫理観はすでに古いものです。

 何が今の時代の正しい倫理なのか、自分たちは古い倫理観を他人に押しつけていないか。時代や社会のありように合わせて、常に問い続ける必要があるのが、倫理という学問の難しく、面白いところではないでしょうか。

 Y先生はもう鬼籍に入られてしまったのですが、学生の頃、もっと真剣に授業を聴いておけばよかったと後悔しています。人が社会で生きていく上で何が大事かを教えてくれる――それが倫理なのです。

ミニ番組「ここはぺこぱと倫理です。」
2021年1月22日(金)スタート
総合 毎週金曜 よる11時40分~45分

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