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CLS高知 2024 初鰹編 ワーケーションツアーの記録

 年2回、5月と10月に行われるCLS(コミュニティリーダーズサミット)高知。昨年10月の戻り鰹編に初参加し、参加者・運営者のポジティブなエネルギーにすっかり魅了されました。
 高知にUターンしてから初めてのCLS高知は、せっかくなのでワーケーションツアーから参加しよう!と心に決めていました。

 今年のワーケーション先は高知県の東部に位置する安芸市。田野町に親戚がいる私にとっては比較的身近な地域ではあるものの、身近すぎて「安芸市に泊まる」ことを考えたことがありませんでした。また、身近ゆえに安芸とバケーションが結びつきませんでした。

 このツアーのタイトルは「ワーケーション」。ワーケーションはバケーション先でいつもの仕事をする、というのが通常かもしれません。しかし私は「このツアーそのものに対する仕事の目的」をセットして参加しました。

 私の仕事は大学生のキャリア開発。現在企画している授業は「高知で活躍する方々のキャリアの話を聞く」というもの。社会経験の浅い大学生が、卒業後の自分らしい進路を考えるにあたり、まずは多様な社会人の話を聞く場の提供から始めるつもりです。
 Uターンしてから3ヶ月、高知市より西の地域のオモシロイ方々にはけっこう出会えましたが、東部地域の方々にはまだ出会えていませんでした。また、出会えた方の多くは男性だったので、地域を盛り上げている女性にも出会いたいと思っていました。

 今回のワーケーションツアーでは、Hostel東風ノ家(こちのや)代表の仙頭杏美せんとうあずみさん、有限会社有光酒造の5代目見習いの有光由ありみつゆうさんにお会いできるとのことで、彼女たちとの「出会い」を第一目的として参加することにしました。

 参加チケット販売日の販売開始時刻。いつも争奪戦になるという噂を聞いていたので、その時間を待ってすぐに申し込みをし、無事に参加チケットを手に入れました。後から聞いたところによると、ワーケーションツアーは15分ほどで完売したそうです。
 宿泊先のオプションはいくつかありましたが、そこは目的に鑑みれば東風ノ家一択!

 ここからは目的に合わせ、「人」にフォーカスしてこのワーケーションを振り返ります。仙頭さん、有光さん以外にも、たくさんの素敵な方々に出会うことができました。


1.モネの庭 庭師・川上裕さん

 安芸市よりさらに東、高知県北川村にある「北川村モネの庭マルモッタン」。フランスの画家、クロード・モネは、フランス・ジヴェルニーに絵を描くための庭園を造っていました。現在もクロード・モネ財団が当時のままに管理しています。北川村のモネの庭は、この財団に認められた世界で唯一の「モネの庭」なのです。

 財団に認められるためには、それ相応の再現性が求められます。また、ただ見た目を整えるだけでなく、それぞれの場所に込められた「モネの思い」も反映する必要があります。庭園にモネの息遣いを吹き込むことで財団との信頼関係を維持するとともに、訪れる人々を喜ばせているのが、モネの庭の庭師たちです。
 今回のワーケーションツアーでは、庭園管理者・川上裕かわかみゆたかさんの案内でモネの庭を巡る機会に恵まれました。川上さんは2015年にフランス文化勲章「シュヴァリエ」を受賞しており、かつて情熱大陸にも出演したことがあります。

 モネの庭の建設には、北川村だけでなく京都も立候補していました。高知県東部の山中かつ海が見える立地は、睡蓮シリーズで有名な「水の庭」のみならず、モネがルノワールとともに旅した地中海「ボルディゲラの庭」の再現にも適していました。
 しかし北川村が選ばれた理由は、その立地だけではありません。ジヴェルニーと同じく小さな村だったこと、そして何より、当時フランスを訪れた北川村一行が、モネの庭に対する理解と共感を財団に示し続けたことが決め手だったようです。

睡蓮シリーズの絵画が生まれた「水の庭」

 しかし、ジヴェルニーとは気候がまるで違う北川村でモネの庭を再現するのは容易ではありません。事実、庭づくりは失敗の連続でした。それでも川上さんたち庭師は、モネが作りたかった景色に想いを寄せ、「色」や「光」を中心とした庭づくりに注力します。また、モネが生きた時代背景にも配慮しながら、できるだけ自然のままの庭づくりを心がけています。

芥子の草原は、枯れたらそのままにしておくそうです

 ガイドいただく中で、参加者からはたくさんの質問が出ました。質疑応答を通じて、くだけた雰囲気になってくる川上さん。
 庭園内の素敵なカフェを通過するとき、この場所はかつて庭師の仕事に必要な小屋だったことに触れ、「私たちの仕事場が…」とプチぼやき。笑
 また、反対したにも関わらず子ども用の遊具が設置されたそうで、黄色いすべり台を指して「景観の邪魔だから見えないように周りに植栽した」と心情を吐露。笑
 本音がぽろりと飛び出すたびに、参加者の川上さんの好感度は急上昇!さらに「花の庭」への道すがらで、そこにある噴水がかつてTBS「マツコの知らない世界」の「噴水の世界」で紹介されたことに触れ、「何が良いのかさっぱりわからん」(ジヴェルニーの庭に噴水はないのだとか)とおっしゃるものだから、参加者一同爆笑!なぜか噴水への期待値まで爆上がりして、噴水をバックに自撮りする参加者が続出する始末でした。笑

 庭師による本気の庭づくりの話を聞きながら巡る「モネの庭」は、控えめに言って最高でした。庭園内で打ち合わせを予定していた参加者が、川上さんのガイドが面白すぎてそれをキャンセルしてしまったほど。笑
 川上さん、どうもありがとうございました!

両手で「M」を作って「花の庭」で集合写真

2.有光酒造場 5代目見習い・有光由さん

 私が子どもの頃、知っていた高知の日本酒は土佐鶴、司牡丹、酔鯨の3つだけでした。最近では高知県がPRしていることもあり、「土佐18蔵」は多くの人が知るところとなりました。
 今回お世話になった有光酒造さんは、「土佐18蔵」のひとつ。「安芸虎」ブランドの日本酒で知られています。現在の社長(4代目)は、有光尚ありみつしょうさん。これから紹介するゆうさんのお父様です。由さんは昨年、家業を継ぐためにUターンされました。

 今回のワーケーションでは、初日の夜に東風ノ家で「安芸虎ペアリングナイト」が催され、安芸虎ブランドの日本酒各種と高知県東部の食材をふんだんに使ったお料理とのマリアージュを楽しみました。そして2日目午後は、普段は見ることのできない有光酒造場内を見学させていただきました。

ペアリングナイトでお酒の説明をする由さん
お酒のリスト

 尚さんも由さんも、実はほとんどお酒が飲めないのだとか。でも、だからこそわかるお酒の「美味しさ」があります。
 高知の日本酒は「キリッと」「スッキリ」「超辛口」が主流。食事と合わせるお酒というよりは、たくさん飲む高知の文化を汲んでいます。
 しかし安芸虎はどれも個性があって、それぞれに異なる味わいが特徴的。高知はお酒だけでなく、美味しい食材も豊富な地域。お肉、お魚、お野菜……食材に合う日本酒を必ず探せる、それが安芸虎ブランドの魅力です。

お料理は室戸の料理人・嵩本安友さん作

 有光酒造は小さな酒蔵。大手と同じような酒造りはできないため、多くが手作業です。大きな釜や網などの道具を目の前にして説明を受けながら、小柄な由さんには大変なこともあるだろうことは想像に難くありませんでした。しかしそんな素振りはまったく表には出さず、朗らかに説明する由さん。すごいです。

参加者の質問に笑顔で回答くださる由さん

 社長で4代目の尚さんは、かつては杜氏をしていました。あるとき、従業員の一人が杜氏になりたいと志願します。当初は杜氏の職を譲ることを渋っていた尚さんでしたが、第三者から「杜氏の志願者が今後いつ出てくるかわからない。社長業に専念するチャンスだ」と後押しされて、しぶしぶ杜氏の職を譲ります。うまくいかない場合に備えて、2年くらいしたらまた自らが杜氏に戻ればいいと考えていました。
 新しい杜氏は、大のワイン好きが高じて、料理に合う日本酒を開発したいという高い意欲がありました。尚さんの予測は良い意味で外れたのです。結果として、尚さんが社長として安芸虎を世に売り込み、杜氏が料理に合う日本酒をつくるという最高のコンビネーションが生まれました。

尚さんの解説に真剣に耳を傾ける参加者

 由さんはもともと、看護師をされていました。今回のツアーは「出会い」が目的のため、あえてそのお話は伺いませんでした。また改めてじっくりと取材させていただきたいと思います。尚さん、由さん、ありがとうございました!

3.完全天日塩職人・田野屋紫蘭さん

 ワーケーション2日目の夜は、安田重機さんのガレージをお借りして「土佐あかうしBBQナイト」が開催されました。希少な土佐あかうしのさまざまな部位を、地元産の上質な完全天日塩でいただく贅沢な時間です。

網ではあかうし100%のハンバーグが焼かれています

 今回のBBQで土佐あかうしに合わせるお塩はすべて、安芸市の東隣・安田町で完全天日塩を作る田野屋紫蘭たのやしらんさん作。屋号の「田野屋」からわかる通り、田野町(安田町の東隣)で塩作りに励む田野屋塩二郎たのやえんじろうさんのお弟子さんです。

 紫蘭さんはもともと、ご夫婦ともに埼玉県春日部市の職員をされていました。しかし、塩二郎さんの塩づくりに魅了されて田野町へ移住し、地域おこし協力隊として働きながら塩づくりを学びました。
 ちなみに、塩二郎さんはお弟子さんに「色+いきもの(動植物)」の屋号を渡すそうで、紫蘭さんの妻は田野屋白兎はくとさんというそうです。

参加者とお話する紫蘭さん

 この日、テーブルに準備された紫蘭さんのお塩は3種類。「あかうし」など、特徴や合わせる食材が一目でわかる名前がそれぞれについていました。
 あかうしを堪能していると、紫蘭さんが「試してくれませんか」とおもむろに鞄から別の塩を2種類取り出しました。そこには「梅干し」「ミルキークイーン」と書かれています。
 梅干は、BBQで出されたおにぎりにぴったり。ミルキークイーン(お米の種類)は、しょっぱさはあまりなく、甘みのあるまろやかなお塩でした。

お肉のテーブルには、紫蘭さんが作った3種類の塩が置かれていました

 例えば巷でよく売られている「抹茶塩」などは、塩と抹茶粉をブレンドしたもの。そうではなく、塩に素材の味が入っているのが紫蘭さんのつくるお塩の特徴です。完全天日塩は時間をかけてつくるため、その時間を利用してどんなものでも塩の「中」に味を入れることができるのだとか。

 また、良い塩は美味しい食材の美味しさを引き立てるが、美味しくない食材は引き立てない、というお話も興味深かったです。だからこそ、高知の食材と合わせてほしいと紫蘭さん。

 私たち消費者も紫蘭さんのお塩を購入できますが、ビジネスのメインは料理人からのリクエストに応える塩づくりになるだろうとのこと。紫蘭さんのお塩が全国各地の美味しい食材を引き立てると思うと、ワクワクしますね!

4.Hostel東風ノ家代表・仙頭杏美さん

 2泊3日のワーケーションツアーで私たちの疲れを癒す空間を提供してくれたのは、Hostel東風ノ家代表の仙頭杏美せんとうあずみさん。明るくて物言いも歯切れよく、カラっとした雰囲気の仙頭さんは、頼れるお姉さんという印象です。

ワーケーション初日夜、仙頭さんにご挨拶いただきました

 東風ノ家はごめん・なはり線の安芸駅からもほど近く、車がなくても高知市内から訪れやすい立地にあります。築100年を超える平屋の古民家は、母屋、中庭、はなれがあり、扉や家具もできる限りそのまま残してあります。
 印象的だったのは、お風呂場へと向かう廊下の壁。「群青漆喰」というそうで、昔の安芸市では一般的だったそうです。

はなれ側から見た中庭と母屋

 この2泊3日の宿泊はワーケーションツアー参加者の貸し切りでしたが、仙頭さん以外の方が運営するランチタイムやカフェタイム、バータイムに東風ノ家を訪れるお客さんがいて、ワーケーション参加者と会話が弾む場面もたくさんありました。

居間でワーキングタイム(仙頭さん撮影)

 仙頭さんは安芸市出身。進学で一度高知を離れるも、高知で働くことを希望してUターンされます。ライターとして高知県東部を担当するうち、地元の魅力に気づいていったそうです。
 また旅行もお好きなのだとか。東風ノ家には世界地図が貼ってあり、来訪客の出身国にピンを打ってありました。
 仙頭さんにも、別途じっくりキャリアのお話を伺いたいと思います。

 安芸市の古民家というローカルスポットに、グローバルな交流が生まれる東風ノ家。これからも素敵な出会いがたくさん生まれることでしょう。

CLS高知 本編にて、仙頭さん、有光さんと


 2泊3日、おなかも心も大満足のワーケーションツアー@安芸市。参加者同士の交流も存分に楽しみ、出会いにあふれる時間となりました。
 企画・運営を担当された皆さま、素敵な時間をありがとうございました!!!

最終日はみんなで川サウナ@伊尾木川


《付録》安芸虎ペアリングナイト メニュー

 室戸の料理人・嵩本安友たけもとやすともさんにご提供いただいたお食事一覧はこちら!高知県東部の食材がたっぷり詰まったメニューは、文字を追うだけで垂涎モノです。

嵩本さんによる料理説明

〜つめたいもの〜
■備長炭のシュー ~クリームチーズと室戸のビワのコンポート~
■ディップ3種類 (安芸虎の酒粕クリームチーズ 、焼きナスのペースト 、東陽町の鮎のリエット)
■安芸のナスのマリネ
■室戸のムロアジのトマトサルサ
■室戸の梅とじゃがいもを使ったポテトサラダ

備長炭のシュー ~クリームチーズと室戸のビワのコンポート~

〜あたたかいもの〜
■奈半利町のゆず豚 野菜巻き
■安芸のシラスのオムレツ
■北川村のジビエロースト(イノシシ、シカ) 
■室戸の鯛のグリル 小夏を直絞りで! 
■安芸の土佐ジロー  安芸虎酒粕漬け焼き  肝のアヒージョ 〜麺もの〜
■安田町の自然薯パスタ

奈半利町のゆず豚 野菜巻き
北川村のジビエロースト(イノシシ、シカ)

〜デザート〜
■室戸の有機レモンと田野町の天日塩パウンドケーキ
■奈半利町のいちじくと酒粕のセミフレッド

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