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『PDCE避雷針は雷を落とさない避雷針』~【web3&AI-テックビジネスのアイディアのタネ】2024.5.8

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■PDCE避雷針は雷を落とさない避雷針

気候変動により全国どこでも大落雷に見舞われる可能性があり、「事後の対処」より「事前予防」の時代 にあります。 積極的に雷を呼び込むために、落雷被害にあってしまう・・・落雷被害を無くしたいという技術者の思いがもとに開発されたのが、 積極的に雷を誘導する従来の避雷設備の避雷針ではなく、雷を誘導せずに目標物にしない落雷抑制型のPDCE避雷針となります。

関東地方は今日の午後は雷雨になるようです。
今は温かいのですが、雨が降り始めた直後から急激に気温も下がるそうですので、体調管理には十分気を付けましょう。

従来の「避雷針」は落雷を積極的に誘導して地面に電気を逃がすことで落雷の被害を回避しようとするものですが、これが時代に合わなくなってきているそうなのです。

文字通り、雷を避けるための避雷針「PDCE避雷針」というものを広告で見かけました。販売元の株式会社エイトエージェンシーのサイトに書かれている考え方や原理になるほど!と思わされつつ、FAQが人間味あふれて最高だったのでご紹介します。


PDCE避雷針は雷を避ける

従来の避雷針は、ウィキペディアによると

避雷針(ひらいしん、: Lightning rod)は建築物落雷から保護する仕組みのひとつ。
地面と空中との電位差を緩和し落雷の頻度を下げ、また落雷の際には避雷針に雷を呼び込み地面へと電流を逃がすことで建物などへの被害を防ぐ。そのため、「雷を避ける針」という表記ではあるが、実際には必ずしも雷をはねのけるものではなく、字義とは逆に避雷針へ雷を呼び寄せる、いわば「導雷針」ともなる。

とのことで、字面とは異なり雷を安全に落とすための装置です。

対してPDCE避雷針は

実験室での結果と設置実績と落雷情報のマッチングで言えることは、PDCEの高さの5倍程度の水平距離で100m範囲内であれば相当高い確率で保護されます。

100m範囲内に雷が落ちづらくなることが期待されるそうです。こちらのほうが文字通りの「避雷針」のイメージになります。こんなものがあるのですね。

より詳しい仕組みはこの動画で学べます。

・想定内の威力の雷であれば被害を避けられますが、想定以上にパワフルな雷だと被害は避けられない。
・従来の避雷針は建物を守る機能はあるが、建物の中にある電子機器を守るようにはできていない。
・したがって、雷が落ちないようにすることが最高の防御。


避雷針への落雷で電子機器が故障する

雷を「避雷針」に落とすことで被害を避けられればよかったのですが、現代では狙い通り避雷針に雷を落としても被害が出てしまうそうです。

FAQページによると、避雷針への落雷でさまざまな被害が出ているとのこと。

避雷針に落雷を誘導できたが、そこを流れる大電流(平均的には、3万アンペア程度)により次の様な事故が発生しています。

照明塔に付けた避雷針に落雷し、照明の制御モジュールが破損
【静岡県 某グランド】

三重塔に付けた避雷針に落雷し、内部に付けてあった火災報知機から出火
【岐阜県 某重要文化財】

電波塔の避雷針に落雷し、地電位が上昇して付近の民家の家電製品が壊れた
【石川県】

船舶に落雷し、レーダ、ジャイロコンパスなどが損傷
【某海運会社】

電気製品を使用していなければ、大電流が流れても何の問題もありません。しかし、現代の生活は電気製品抜きでは成り立たないくらい沢山の機器があります。これらの事故を防ぐには、大電流が流れることを防がなくてはなりません。

現代では各家庭レベルにまで電子機器が普及していますから、避雷針に落ちた雷のせいで電子機器が壊れるということもあり得ます。そこでPDCE避雷針のように雷を近づけない装置が求められるようになったわけです。

このFAQ、書いた人の誠実な人となりが滲み出ていて最高だったのでいくつかご紹介します。


人間味あふれるFAQが最高すぎる

Q. 今まで使用されてきた避雷針の何が悪いのですか?

もう、「何が悪いのですか?」という問いの立て方が最高です。
仮に実際に「何が悪いのですか?」と聞いてくる人がいたとしても、製品紹介のWebサイトにそのままの言葉遣いで載せることはないでしょう(笑)

それに対してのアンサーも最高です。

A. 悪いと言っているのではなく、時代背景が異なってきたという事実です。

現在、多く使用されている避雷針は、約260年前にベンジャミン・フランクリンにより発明されたもので、それはエジソンの生まれる約100年前、電気が実用になる約130年も前でした。当時は、オイルランプの時代ですから、落雷がやたらな場所に落ちるよりは、避雷針に誘導した方が安全でした。

それから、260年を経て、現在は電力も情報もネットワーク時代となり、オフィスビルには100kmを越える長さのケーブルが張られているところも珍しくありません。落雷を誘導すと、それらのケーブルに電圧が発生し、接続された電子機器が破壊されることが多くなり、今までのように落雷を避雷針に誘導する方法の副作用が問題になってきているという事です。

なんだか電話口で論争している光景が思い浮かびます。
しかし説明されればなるほど納得です。

Q. PDCEには落雷しないのですか?

A. PDCEも避雷針ですから、条件によっては落雷を受けることもあります。
例えば、冬季雷などで、雷雲の高さが低い場合、標高の高い場所で空中に高く設置されたPDCEには雷雲でスッポリと覆われてしまう事もあります。
この場合には、確実にPDCEに放電します。また、その他の場合でも電界が非常に強ければ、PDCEとの間での放電、すなわち落雷は発生し得ます。

科学者っぽい誠実な回答で好感が持てます。雷雲にすっぽり覆われたら「確実にPDCE避雷針に放電する」、つまりPDCE避雷針に落雷するそうです。

これに追い質問を重ねます。

Q. PDCEに落雷したら、効果は無いのではないですか?

A. その場合、落雷を抑制するという効果は発揮できませんでしたが、避雷針として雷を誘導する通常の避雷針としての最低限の機能は果たしているということです。

社内でこういう言い争いを経営陣や営業さんと技術者の間で交わしたのでしょうか(笑)「PDCE避雷針に落雷したら意味ないじゃん!」「お客さんに何て説明すんだよ!」と言い寄られている様子が思い浮かびます。

Q. PDCEに落雷したら、破壊されますか?

A. その時の雷のエネルギーの大きさによりますが、破壊されることはあります。
PDCEの頂点付近に落雷すれば、PDCEの内部で放電し、そのまま地面へと電流が流れる構造ですが、自然は気まぐれで、必ずしも真上から頂点付近には落雷せず、側面に落雷することもあります。このようなPDCEへの直撃雷が予想される場合(地域)には、より耐久性能を高めた PDCE-Magnum があります。部品点数を大幅に少なくし、かつ、高圧送電線で用いられる高圧碍子の技術を取り入れて耐久力を大幅に高めています。

技術的な解説の場面で、自然は気まぐれ。なんかいいです。

Q. PDCEに落雷しない場合、隣の家に落雷するのではないのですか?

これが個人的には一番気になっていました。雷雲はエネルギーをどこかで放出するものですから、PDCE避雷針を設置している場所に落ちなかった雷は、別のどこかに落ちるのではないかと。

それに対するアンサーはこうです。

A. 落雷が一発ずつ順に落ちてくるのであれば、PDCEで避けたものが次には他に落雷するという心配はごもっともです。

おっと、意外に共感されました。続けます。

ところが、先行放電は同時多発で雷雲の複数の箇所から次々に並列的に発生し、それらが枝分かれしながら地面に接近してきます。接近してきながらほとんどは地面に届く前に消えてしまいます。この中で、地面付近まで到達し、地面からのお迎え放電を受けたものが落雷となります。落雷は、地面からお迎え放電が出やすい所に発生するでしょうが、それが隣の家かどうかは分かりません。落雷の発生は確率的なものです。

雷について調べると「お迎え放電」という言葉がちょいちょい出てきます。雷の仕組みについての勉強になります。

そして先ほどの「自然は気まぐれ」と同じように、「隣の家かどうかは分かりません。」と、どこかで放電はするが、質問の「隣の家に落雷しない?」にある意味まっすぐに答えています。「隣」であるかどうかは直接の質問の主旨ではないと思うのですが。

PDCEは、地面付近まで届く先行放電のうち、自分の頭上に来るものを拒否しているだけで、その時点では既に離れた所でいくつもの落雷が成立しているかもしれませんが、それはPDCEの頭上で先行放電が消えたことと関係ないことです。

因果関係としてはそうでしょう。でも質問の意図はそうじゃない・・・

もう少しマクロ的に、PDCEで落雷させなければ雷雲全体の電荷量が温存されるので他に落雷する可能性があると言うことであれば、雷雲全体の電荷量は雲間放電、雲中放電、空中放電、落雷などで常に変化し続けています。一般的に雷雲の発生から消滅までの時間は20-40分程度で、その間、移動しながらエネルギーが費やされます。

なんか技術的な話を膨らませて話がはぐらかされていく、よくある科学者と話が噛み合わない感じがちょっと心地よいです。

以上の理由により、PDCEで落雷を避けたことでPDCEの保護範囲のすぐ外に落雷があるかといえば、それは実証できません。ただ、今までの例ではPDCEを設置した事で、近隣とトラブルになったことは一度もありません。

おっと、質問に回答が返ってきました。科学的な仕組みの説明も面白く読みましたが、営業サイドからすると「近隣トラブルは起きません」が一番大事な回答でしょう。

雷雲としてはエネルギーをどこかで放出はするが、必ずしも落雷というカタチだけでなくいろんな放電でエネルギーを失い、20~40分で雷雲は消滅するものだから、PDCE避雷針で「うち」に雷が落ちなくなったとしても、「ほか」に落ちるわけでは必ずしもない、という説明で納得しました。

Q. PDCE避雷針の材質はJIS規格に適合しますか?
A. もちろんです。

「はい、適合しています。」ではなく、「もちろんです。」の回答も素敵です。嬉しくなったのか、解説が続きます。

JIS規格の表2、表5には、鉄、銅、アルミニウムの3種類が記されているために、これ以外の材質は許されないのかと言いますとそうではありません。表4には、「溶解亜鉛メッキ鋼」「ステンレス鋼」等が示されている他、これらの材料と同等の機械的、電気的、化学的(腐食)特性を持つ材料(たとえばチタンなど)も使用する事ができます。 PDCE避雷針は、既定の厚さを十分に満たすそれらの材料でできています。JIS規格の解説は、(社団法人)電気設備学会発行の「建築物等の雷保護 Q&A JIS A 4201:2003対応」 オーム社 に詳しく解説されています。

根拠の説明ではありますが、質問者もそこまでは聞いていないと思います。

Q. 冬の雷雲の特長は?
A. 防衛大学 道本光一郎博士の観測結果
によりますと、上空の気温がマイナス10度になる高度と地上気温の関係が重要であることが観測の結果明らかになっています。
1)雷雲の天頂部がマイナス20度でマイナス10度高度が1800m以上の時には、つねに強い雷が観測されている
2)雷雲の天頂部がマイナス20度でマイナス10度高度が1800m以下の時には、一発雷か非発雷になる
3)雷雲の天頂部がマイナス20度より高温の時にはマイナス10度高度に関係なく発雷しない
4)マイナス10度高度が1800m以上で、地上気温が3度以上の時には、常に強い落雷があるマイナス10度の高度が冬の落雷に影響しているが、冬季にはほとんど3000m以下で厳冬期には1000m以下になる。夏の積乱雲に比べると冬の雷雲が低い高度であることが観測されています。

もう製品の説明ではなくなり、共通の話題で盛り上がることを楽しんでいるようです。

まとめると、PDCE避雷針は

基本的には直上の雷を「避ける」効果があり、しかし稀に従来の避雷針のようにPDCE避雷針に落雷することもあり得る。直接PDCE避雷針に落雷した場合には電子機器が壊れるなどのリスクはあるかもしれないが、それは従来の避雷針と同じ。だったら現代においてはPDCE避雷針で落雷自体を避けるほうが合理的。

だと理解しました。

先進技術は雷に弱いものです。AIを動かすデータセンターの数はもっと増えるでしょうし、家庭にロボットが配備される時代がくるかもしれません。PDCE避雷針のように落雷自体を避けるソリューションは今後さらに需要拡大しそうです。


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