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電子書籍化ニュース Vol.8

 1990年代初め、日本で最初の電子書籍が発売されて以来、30年以上たちました。
 ネットワークが今のように発達する前の電子書籍はフロッピーディスクやCD-ROMに収録されたデータをパソコンや専用端末で読むといったもので、当時はあまり普及しませんでしたが、今は皆さん当たり前のようにスマホやタブレットを使って読書を楽しんでいるのではないでしょうか。
 欲しいと思ったときにすぐに購入できる、場所をとらない、文字の大きさを読みやすいサイズに変更できるなど、多くのメリットがある電子書籍。
 産業編集センターでもKindleをはじめとした電子書籍サービスで、刊行した様々なタイトルを電子書籍化しています。
 「電子書籍化ニュース」ではすでに電子書籍化されている産業編集センターの旅の本、新たにラインナップに加わった電子書籍を随時紹介してまいります。


『机の上の動物園』著/椎名誠

 世界中を旅してきた著者が旅先から持ち帰ったモノや道具を一堂に集めた一冊。フランスのフライパン、パタゴニアのカンナ、アムチトカ島のナイフ、南米の飾り馬とホルスタイン、世界各地の道で拾った石ころ、アメリカ西海岸のなめくじ人形など、何の役にも立たないが、なぜか気になって手放せない愛しきガラクタたちを、旅のエピソードとともに紹介。
 椎名誠ならではのユニークな旅の流儀が見えてくる。作家生活45周年を迎える著者初の「モノ雑文集」。




『死を喰う犬』著/小林みちたか

 インド最北部 ヒマラヤの西のはずれにあるラダック。そこには 決して怒らない人々が暮らしている———。その言葉に誘われるようにラダックを旅した著者の 贖罪と再生を描いた私小説的旅紀行。
 ラダックの街の道端で見つけた凍りついた犬の屍体。徐々に明らかになっていく旅の理由。ラダックの荘厳な自然と現地の人々のおおらかさに包まれながら 過去から解放されていく著者の姿が描かれる。2020年度「わたしの旅ブックス新人賞」受賞作。




『旅する桃源郷』著/下川裕治

 今も精力的に世界を旅するベテラン旅行作家が、これまでの旅で出会った「桃源郷」を紹介。
 ラオスのルアンパバーン、パキスタンのフンザ、ウズベキスタンのサマルカンド、日本の多良間島、チベットのラサ、そして著者の故郷である長野県安曇野。自分にとってそれらの地がなぜ桃源郷なのか、自らの人生を重ねながら、その理由を紡いだ珠玉の紀行エッセイ集。
 旅の桃源郷は人によって違うが、そこに至るプロセスは酷似している。それぞれの桃源郷をみつけてほしい——と著者は読者に問いかける。忘れかけていた旅の魅力と力を改めて思い起こさせてくれる一冊。




『やがてすべては旅になる 壊れた自転車で行く四国一周』著/小林みちたか

 ある夜、突然襲ってきた死への誘惑。
 その危険な衝動から逃れるために、著者は四国一周自転車の旅に出る。
 途中、自転車が壊れるというアクシデントに見舞われてしまう。
 壊れかけた自転車を漕ぎながら旅を続けるうちに、脳裏に蘇るこれまでのつらい記憶と旅の断片。
 過去と現在が交錯していく中で、著者はこれまでの自分と真正面から向き合うようになっていく。
 果たして無事に完走できるのか、そして、前向きな心を取り戻すことはできるのか——
 過酷だが自然豊かな四国路を舞台に、壊れかけた心の再生を綴った異色の自転車旅行記




『罪深きシリア観光旅行』著/桐島滋

 無数に配置された検問所、瓦礫と化した町並み、
 そして、現地の人たちとの不確かで曖昧な会話……
 観光旅行者として入国した著者が見た、戦下の国シリアの今

 2011年から内戦が続くシリア。政府と反政府勢力の対立を軸に、宗教や大国干渉といった問題も孕みながら内戦は泥沼化。国民の貧困化とともに670万人以上とも言われる難民を流出させたアサド大統領による独裁国家は、今世紀最大の人道危機を招いたとして世界中から問題視されている。
 著者は、混迷を極めるこのシリアの現状を自分の目で見るために、一介の観光客として入国。わずか10日間の、しかもルート限定の観光旅行だったが、自ら果敢に戦下の町を歩き、地元の人々と言葉を交わしていく。国によって仕組まれた、作られた旅行ではあるが、わずかながらも垣間見えたシリアの今の姿を著者は見事に描写。なかでも悪名高きサイドナヤ刑務所で過酷な拷問を受けながらも生き延びたシリア人の話は圧倒的だ。
 異色の旅行記であるとともに、多くの人に読んで欲しい問題提起の書でもある。
 第3回わたしの旅ブックス新人賞受賞作。