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ファッション界を志す若者へ 私が伝えたいこと/ Fashion Creator note magazine vol.7

これからファッション界は、バーチャル、3Dモデリング
若者が、興味をそそる事にビジネスは流されます。

いまのビジネスは、効率に重点が置かれ
多くのプロセスは、自動化へ向かいます。

それでも若者は、すべてのプロセスを学び
自ら実践してみることが必要です。

それが 新しい種を見つける方法です。

企業のリーダーへ、問いたい・・・
若者は、未来に何を望むのでしょう

リーダーは、その答え示すべきです。
人は、それに共鳴し製品を買います。

それが 企業と消費者の共存する道であり
・・・ 若者の道標にもなります。

私が、受注生産にこだわる理由は・・・
そこに労働価値を高める種があるからです。

お客さま一人を満足させる
・・・ その種があるからです。

若者の未来に何が必要か・・・

その答えを提案することが
・・・ 私に残された仕事です。
2023年1月23日 水谷勝範


Fashion Creator note magazine vol.7

『商品化へのプロセス』 No.377 〜 410.


377. 生地から服へ
生地を服にするためには縫製の力が要ります。パタンナーが作成したパターンに基づいて各パーツに裁断し、これを組み合わせて縫い上げていきます。完成に至るまでには「企画(生地・商品)→デザイン→パターンメーキング→サンプル製作→展示会→量産用パターンメーキング→資材・副資材調達→裁断→縫製(前工程、後工程)→まとめ・仕上げ」の工程があり、それぞれに専門職がいます。

これが従来のモノ創りであり、デジタル化に移行されても認識すべきプロセスになります。しかし、ここから私たちのモノ創り思考は、次代に向け大きく変わりますが、まずは従来のプロセスに基づき解説します。

378. アパレル生産を担う職種
日本のアパレル産業は1970年代に急成長を遂げました。ファッションに夢を抱いた若者たちが服作りに邁進した時代でもあります。マンションの一室で服を作り、自分で売り歩く“マンションメーカー”と呼ばれたそれらがその後、企業になり規模を拡大しました。服が大量に売れたため、効率的に大量生産する物作りが必要になり分業化が進みました。デザイナー、パタンナー、マーチャンダイザー(MD)、モデリスト、サンプル縫製師など様々な職種が生まれました。

379. デザイナー
デザイナーの役割は、社会に必要なテーマをファッション表現として世に投げかけ、生活者の心を満たすことと言っても過言ではありません。パリやミラノなどでデザイナーが発表するコレクションはその象徴的な例と言えます。このテーマを視覚化するのがデザインとなります。テーマの実現に向けたコンセプトの設定に始まり、商品に備える価値を検討し、デザインに置き換えていきます。大切なのはコンセプトやターゲットなどを言葉で定義し、物作りから販売に至るまで現場に理解を浸透させることになります。それによって、デザインバリエーションから生産仕様、販促や売り場作り、販売に至るまでの一貫性が醸成されていきます。

380. パタンナー
デザイナーのデザインイメージやコンセプトを理解し、生地を服にしたときにデザイナーが意図したシルエットになるようパターン(型紙)を設計するがパタンナーの役割です。そのためには、次の5つの情報の収集や予測が不可欠になります。

①生地とその特性データ
②市場における対象年齢
③販売価格
④生産数量の予測
⑤製造原価の予測

これらの要素をパターンに集約し、設計意図をパターン企画書として記録することが重要になります。シルエットを生み出すにも、様々な角度から仕様を模索することになりますが、コンセプトに基づき優先する内容を明確にします。そして、製造原価、生地の要尺、品質基準などを分析しサンプル制作となります。

私たちが考える次代のパタンナーは、モデリストの業務として捉えております。それは企画から生産まで、すべての業務を認識できる存在となります。

381. マーチャンダイザー
マーチャンダイザーの業務は一般に商品化計画(マーチャンダイジング=MD)と言われ、市場動向を把握し、商品企画や素材企画、生産計画、販売戦略の立案・管理など多岐にわたります。ライフスタイルの多様化が進み、単なるトレンドや価格の安さではなく、商品の背景にあるコンセプトやストーリーへの共感が購買動機になってきた中で、今後はパタンナーとともに次に述べるモデリストへの進化が求められます。商品に関わるすべての業務についての知識と経験に基づき、商品開発・生産をリードする能力が必須となります。

382. モデリスト
デザイナーが描くイメージやデザインの意図を理解し、パターンを引き、サンプルを製作する専門職を指します。デザイン、生地、パターン、縫製という服作りの全工程に通じ、コストや各工程の進捗管理も担います。欧米では非常に重視されている職種となります。この業務は日本では一般にパタンナーと縫製工場の分業で行われ、実務にはCAD(コンピューター支援設計)が活用されています。単なる商品の差別化を超えた独自性が求められる中で、全工程を一気通貫でプロデュースするモデリストの育成は大きな課題となります。主な業務は次の通りです。

①素材特性の熟知
②デザイナーが意図したシルエットの創出
③商品企画・生産工程の設計
④製造原価の分析・設定
⑤生産工場の熟知
⑥品質基準の設定
⑦顧客満足、品質クレームの把握

これらの業務を通して得た情報を分析し、課題を抽出して、その原因と具体的な改善策を提示します。

383. 生産管理(品質管理)
生産に関わる全工程を計画通りに進め、商品として販売できるまでにするための管理を行います。企画した商品の品質を小売業が定める基準を満たすよう保証し、予算化された原価(コスト)内で、計画された数量を納期に納めます。具体的には生産計画に基づき、工場への発注、原価管理、伝票作成、資材調達、品質管理などを担います。

384. サンプル縫製師
サンプルは、デザイナーが意図したシルエットやサイズ感などを確認するファーストサンプル、それを修正して全色分を製作するセカンドサンプル(展示会用)、量産用の仕様で製作する仕上げサンプルに大別されます。これらを製作するのがサンプル縫製師となります。日本のアパレル企業では、サンプル縫製専門の工場や内職の縫製経験者、サンプル製作にも対応する工場に依頼するケースが多くなります。

サンプル製作の留意点は次のようになります。

①縫製手順を分析し、縫製難度を区分・整理します
②手作業、機械作業の使い分けを見極めます
③サンプル工程のピッチタイムを分析します
④工程ごとの縫製の留意点、作業の品質基準を分析します
⑤縫製およびアイロン工程で知っておくべき素材特性をパタンナーと共有します
⑥生産工場での機械対応状況を把握する必要があります

385. 生産工場(縫製工場)
アパレル業界では、生地を縫製する工場のことを生産工場と言います。工場にはそれぞれ得意とする分野や技術があり、設備も規模も異なります。アパレル企業は一般に、作りたい商品の特性や生産量、コストなどに応じて工場を選定しています。工場はアパレル企業から生地や副資材、パターン、縫製仕様書などを受け取り、それぞれを確認後、生地を裁断し、パーツを縫い、組み合わせて仕上げます。近年は海外生産が主流になり、国内の工場は減少が進む一方、難度が高い商品や急ぎの縫製などが中心になっています。

<商品企画から販売までの流れ>
一般的なアパレル企業の商品企画は、次のような手順、業務内容で進められています。

386. 商品企画の立案
市場動向や実績に基づいてブランドのコンセプトやターゲットにズレはないか確認し、必要があれば再構築します。次いでシーズンテーマを立案し、そのスタイリングイメージやマスターデザインを作成し、基本となるカラーや生地、副資材、機能、品質基準なども設定します。商品構成の大枠も決めておきます。これにより販売予算を計画し、消化率を予測して損益分岐点を定めます。

387. デザイン、パターンメーキング
デザイナーはデザインでコンセプトを表現し、その意図通りのシルエットになるよう、パタンナーは服になったときの着心地も想定しながらパターン(型紙)を設計し、縫製仕様書を作成します。これをサンプル縫製師に渡し、ファーストサンプルを製作します。

388. サンプル製作
パターンと縫製仕様書に基づいて縫われたファーストサンプルを検討します。デザイン意図、仕様、生産対応など問題はないか、量産としての確認をします。不安定要素は、修正が必要となります。そして、展開を計画する型の全色のサンプルを展示会に向けて製作します。

次代に向け3Dサンプルが有効となりますが、実際のサンプルを作る意図を理解する必要があり、デジタルサンプルは、情報を共有するための手段として捉えることが望ましいと考えます。

389. 原価見積もり
製造原価と販売価格を想定し、原価を分析します。

390. 展示会
バイヤーらに商品とともに価格、納期を提示し、生産依頼を受けます。小売企業の要望に応じて、バーゲン価格への対応も必要となります。海外生産への対応として、この時点で副資材を見込み発注することも必要になります。

391. 発注数量の予測
展示会の受注状況から、ターゲット市場に対する販売予測を立て、工場の生産ラインを確保するため生産数量や納期を設定します。

392. 生産工場との連携
工場にパターン、縫製仕様書を提示し、生地・副資材を投入します。商品ごとの生産工程分析に基づいて、裁断、縫製、仕上げ、出荷に至るまでの業務を管理します。

393. 物流倉庫への納入、在庫管理
一般に入荷商品の検品から店頭への出荷明細の管理までを行います。

394. 小売店舗および通販での販売
実店舗やECなどでの販売と、その後のカスタマーサービスがあります。

395. 設計の重要性
服作りで重要な役割を担うのが、設計業務となります。価格訴求で市場拡大を狙う商品は大量生産によってコストを抑え、高価格の商品はデザインや生地はもとより、パターンの設計段階でも付加価値の創出にこだわります。中間価格帯の市場に対しては売れ筋に沿った生産が必要になります。いずれも、近年の市場特性として高い品質が求められています。

日本のファッション業界は、市場のシェア獲得に向け、他社よりも品質を高めることに注力し、品質管理は世界的にもかなり高いレベルにあります。ただ、近年は消費者の価格意識がシビアになり、ファストファッションの浸透もあって、品質の高さと価格の安さが同時に求められるようになっています。それを可能にするために加工賃の安い海外での生産が増加し、より安く生産できる国・地域を渡り歩く傾向も見られるのが現状です。しかし服は大量に売れ残り、廃棄・焼却処分によって環境問題をも招いています。サステイナブルな生産・流通構造への改革、製造原価、生産量、利益配分の最適化が迫られています。

そのスタート地点となる商品企画を具現化するのが、パターンの設計と言えます。パターン設計で重要なことは、製造原価に大きく影響する生地や副資材、縫製仕様、縫製難度の把握となります。生産工場の加工賃は一般に、設備投資の固定費、人件費、そして生産枚数に応じた加工日数によって設定されます。加工日数を左右するのが縫製仕様となります。サンプル製作の段階でどれだけ仕様を綿密に設計できるかがカギとなります。

ただし、工場によって設備も技術も異なり、そのため多くのアパレル企業が各工場の対応力に任せてしまっています。結果として、工場は現状維持の縫製対応を続け、次代の技術者が育っていません。様々ある工場をその得意分野を生かしてブランドやアイテムごとにチーム化し、人材を育て合える仕組みなど、今後は思い切った転換が必要になります。企画・設計を担うアパレル企業が主導権を発揮し、各工場の技術や工程管理のレベルを高めていく必要があります。工場もアパレル企業もノウハウの共有には抵抗があるのが一般的ですが、既存のサプライチェーンに山積する問題を解消し、次世代へ日本の縫製技術を継承していくためには、産業全体の生産性の底上げにつながる新たな仕組みが必要になっています。

私たちがデジタル設計を活用する目的は、産業全体の底上げをするためです。作業の標準化から、設計の基礎情報を共有することが重要となり、そこから企画設計の自動化が育まれていきます。

私たちがモデリストの業務を中心に考える意図は、AIを活用できる自動化を進めるためです。そのデータベースをファッション産業全体で活用するモノ創りが、次世代には必要と考えます。

396. 生産設計の要点
量産の服作りでは、製造原価を分析し、生産数量に合わせた生産工程を設計し、検証する必要があります。求める商品価値や生産する量によって服作りの重点は変わるからです。低価格の商品は大量生産が前提となるため効率化に重点が置かれ、高価格の商品はデザインや生地、縫製仕様、着心地など付加価値の追求が重要になります。

397. 大量生産する低価格商品の場合
①自動機で対応する工程、パターンシーマーおよびアタッチメントを活用する部位などを把握し、縫製仕様についても生産効率を優先する判断が必要となります。

②生産体制はバンドル生産が一般的となります。1人の作業者が同じ工程を担当し、決められた束(バンドル)の分を仕上げたら次の工程に回す方法です。円滑に進めるために、染色ロットに起因する色差など、生地・副資材の加工で発生する問題を予測し、品質基準を明確にしておきます。

③縫製工程を分析し、極端にピッチタイム(工程を完了するまでの時間)が必要になる工程は、商品の仕上がりを変えずにパターンを変更する必要もあり、各工程の縫製難度を分析します。

④低価格の商品は中間アイロンが少ないという傾向があります。アイロン工程で次の工程の縫製難度を下げる箇所を把握し、次の工程と的確に連携します。アイロン処理が必要な工程は、その目的を明確にしておきます。

⑤各工程の作業手順と縫製基準を、抽象的な表現ではなく、明確な言葉で共有し、作業を進めていきます。そのためには、工場の技術レベルを把握し、工程間を連携させることが必要となります。生地に適したミシン糸調子などについて、現場の作業者の共通認識が重要になります。

398. 少量生産する高価格商品の場合
①生産枚数が少ない商品は作業者の技術力に依存することが多くなります。しかし、職人の高齢化や減少、市場の価格意識の変化など総合的な観点から見て、今後は量産の工場のように機械化を考えていく必要もありますが、技術に頼る仕様を減らしていく傾向もあります。いわゆる縫いやすい工程は、美しく仕上がります。機械化の判断には、ピッチタイムの分析が有効となります。

②生地に対する機械の糸調子やアイロン技術を、サンプル縫製段階で徹底して検証します。仕上がりの風合いの基準と照らして、各工程が連携します。そのためにも、基準は各工程の留意点として明確にしておきます。

③工場の生産効率は、縫製仕様のクオリティーに比例します。縫製加工に要する1秒を大切にするという認識が必要となります。デザインへのこだわりは大切ですが、縫製では加工にかかる時間が加工賃に直結します。パターンを確認し、縫いやすい線、縫いづらい線を理解します。このような知識は現場で学び、身につけていく必要があります。

④国内の工場が減少基調にあり、今後は高付加価値の商品も海外生産が必要になると予想されます。技術を伝えるためには、生産工程や作業内容を数値化(データベース化)して活用する習慣をつけておくことが重要になります。

以上のように、今まで海外生産へ依存してきましたが、2023年より国内へシフトする傾向もございます。しかし企業間での情報共有、各経営者が従来の認識を変えなければ、次世代の人材を育てることはできません。消費者と共に、私たちは変わる必要がございます。


399. パターンの設計
平面のパターン(2D)は素材特性や縫製難度などを分析し、3Dパターンへ展開するための設計図となります。デザインイメージから平面パターンへ展開する作業には、データベースの活用が有効となります。2Dパターンを3Dデジタル画像に変換してシルエットイメージを確認することで、次の段階であるトワル(パターン通りに生地を裁断し、組み合わせたもの)の製作労力を軽減できます。このときに重要なのは、生地のデジタル情報の数値から硬さ・柔らかさ、ダレなどを理解することです。感覚を数値に置き換え、服作りに関わる全員の共通認識とします。例えばシルエットを15型に区分し、マスターパターンとします。これらに生地情報を関連づけてチャート化し、マスターパターンを増やさずにシルエットのイメージを捉えやすくすることがポイントになります。

400. マスターパターンと縫製仕様
縫製仕様書は通常、パターンや縫製仕様、資材の詳細を説明したものであり、縫製手順は記載されていません。工場でサンプル(マスターパターン)を作成し、その仕上がりを確認するときに縫製上の注意事項や品質基準の説明があり、生産許可となるのが一般的となります。縫製は工場によって技術や設備などが異なるため、アパレル企業が縫製手順を提示することはありません。

しかし、一人ひとりのお客様の満足をより重視する場合(カスタマイズやオーダーなど)、アパレル企業と工場はもっと連携する必要があります。企画・設計側が製造原価を分析し、縫製仕様を決定する段階から、ターゲット市場や顧客の声、デザイナーの意向などの情報を生産側と共有する必要があります。また工場では、起こり得る問題の予測がとても重要になります。問題の発生で作業を停止するようなロスを回避するためにも、情報共有は効果的です。

このような連携ができれば、縫製仕様書に各パーツの仕様だけでなく、縫製手順や注意点、その図解説明などの詳細を加え、生地に応じた難易度を段階的に数値化し、実際の作業を円滑に進められるデータベースを作成できます。これにより工場はパーツを組み合わせるだけになり、ことに文化の異なる国・地域における生産では図解説明できることがメリットになります。

マスターパターンはデザインを確認するためのサンプルでしたが、より細かくターゲット市場の年齢層に合わせたマスターパターンを作成しておくことも重要になってきます。そのパターンデータの蓄積によって、より個別に敏速なニーズ対応が可能になります。

401. 縫製の品質・加工賃などの検証
衣料の品質は、仕上がりの基準をどれだけ明確にできているかにかかっています。商品仕様を検討する段階で、不良が発生する箇所は予測できます。不良が発生しやすい工程の作業手順と仕上がり基準を縫製仕様書に提示しておくことが大切になります。

縫製加工賃は、主に生産枚数、裁断加工条件、縫製工程、出荷条件などから算出されますが、その際に各工程の縫製難度を分析することがポイントになります。縫製難度は作業時間に基づいて分析し、生産国の人件費を加味して算出します。加工賃はパターンの設計段階で分析・設定することになりますが、アパレル企業の多くが、自社の設定する加工単価に見合う工場を探しているのが現状です。このような量と単価を基準にした取引がある一方、市場変化や環境問題などへの対応から、一人ひとりのお客様にとっての価値を生み出す取り組みへの進化も必要になります。私たちのデジタル設計は、1枚生産を実現するためのデータ構築になります。

402. 副資材の調達
副資材とは、資材(生地)以外のアパレル商品を構成する材料や、販売に際して付けられる表示類のことを指します。前者の副資材はサンプル製作段階で見本が作られ、生産数量が予測された段階で発注され、生産に投入されるのが一般的な流れとなります。

403. 副資材の種類
副資材は、その素材や用途により副資材と付属品に分けることができます。裏地や芯地、リボン、テープ、紐、縁飾り用レース、パッドなど、繊維からなるものは副資材とされ、ボタンやホック、スナップ、ファスナーなどは付属品と呼ばれます。他にネームやラベル、ワッペン、さらに縫い糸も副資材と総称します。

① 裏地
服の裏に使われる生地になります。着心地や着脱性を良くし、動きやすさや保温(清涼感)を高めたり、表地の形態を安定させたり、シルエットを美しく見せたり、下着の透けを防止するなどの機能があり、主な素材にはポリエステルやキュプラ、レーヨン、アセテートがあります。

② 芯地  / 下記に詳細を記す。

③ 紐 / 組紐、織紐、編紐、撚紐などがあり、それぞれに専業のメーカーがあります。

④ 留具 / ボタンやファスナー、ホック、スナップなどがあります。

⑤ ネーム、ラベル / ブランド名やメーカー名、産地名などを織りやプリントで表したものになります。

⑥ 縫糸 / 天然繊維では綿糸、絹糸、合成繊維ではポリエステル製のフィラメント糸やスパン糸、ウーリー糸、さらにナイロンやレーヨン、複数の繊維素材を撚り合わせた複合糸があります。

どれがなくても服は成立しませんが、縫製において仕上がりの良し悪しを左右するのが、次に述べる芯地となります。

量産のモノ創りでは、糸の特性を理解した選択が重要になり、付加価値の高い製品は、工程箇所により糸番手のこだわりが鍵になります。

404. 芯地の役割
服のシルエットを補うのが芯地の役割となります。芯を使うことは服作りの生産性に大きく関係しており、芯には成形、保形、寸法安定、可縫製といった要素が求められます。成形とは服のシルエットを補うことで、保形とは着用した際にも形を保つことであり、寸法安定と可縫性は生産性を維持するための要素になります。

405. 芯地を使うときの留意点
基布には織布、編布、不織布、複合布があり、それぞれの特徴を生かす芯地を用います。芯を貼ったときの伸縮性、経糸・緯糸の張り感、素材の落ち感、柔らかさ、軽さ、通気性、表に響かないなどを考慮し、デザインや作業性によっては芯の地の目を変えるなどの検討も必要になります。

接着剤には、完全接着(ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂)と仮接着(ポリエチレン樹脂)の2タイプがあります。塗布形状もドット(完全接着)、スピンテープ(完全接着)、ランダムパウダー(仮接着)、クモの巣タイプ(完全接着)があり、目的とする表面の仕上がり風合いに応じて使い分けます。使用箇所によっては表地に色差を生じることがあるので、商品に使われている全色で仕上がりを確認しておきます。

芯地を使うときには商品のデザインや仕様、生産性を考慮し、一般的な活用法にとらわれないことが大切になります。量産工場の作業環境は工程条件によって区分されていますが、芯の接着条件は明確に定義されていないため、現場で定期時間に機材調整が重要になります。接着条件としては、温度、時間、圧、水分などを確認します。中間工程などでスチームアイロン処理を施したり、当て布を必要とする場合もあるので、作業標準を明確にして現場と連携します。芯の大きさはミリ単位での配慮が重要になるため、商品設計の段階で各工程の作業手順を分析し、各工程での風合いやシルエットなどを検討します。このプロセスが商品の仕上がりに大きく影響するので、慎重な作業が求められます。

薄い素材の場合は、芯とアイロンのアタリに注意します。毛足のある素材は、アイロン圧によって目つぶれが発生します。これは接着ドットの大きさに関係しており、工程分析を行い、表からスチームをかけて消す作業を指示する必要があります。

穴かがりの仕上がり具合は表地の特性に応じて判断し、機材は先メス仕様か、後メス仕様かに合わせて芯の適性を分析することで希望の仕上がりが可能になります。

406. 芯地の種類
芯の種類は構図にて解説しますが、一般的なアパレル商品に使用する芯地の分類と特徴を理解することが重要になります。基布の糸の太さや接着剤の量によって仕上がりが変わってくるため、目的とする仕上がりに沿った芯地を選びます。基布の選択にも、資材価格や表生地に適した接着度合い、接着作業の生産性などの分析が必要になります。

量産の商品は一般に完全接着芯を使いますが、温度や圧力、時間の管理が生地によって異なるため、生産工場でのテストが重要になります。工場では繰り返しの作業が継続するため、指定の温度に満たなくなった場合や、品番が変わって接着条件が変わった場合にも対応できる管理体制が重要になります。

量産品に使用される芯地の特徴は、仕上がりの風合いはもとより、生産性も含めて判断する必要になります。また芯地の選択は、表地の特性を生かすことが必須条件であり、縫製の作業難度を下げる場合も認識する必要があります。

海外生産の場合は、とくに接着条件の記録を取る管理が重要になります。作業者間で風合いを認識できる連携が必要であり、量産品の場合は商品が潰れて仕上がる傾向があり、また剥離不良を恐れて接着強度を優先するのが実情であるため、商い品価値に適した技術の連携が必要になります。

以上、従来アパレル企業における商品化のプロセスとなりますが、次世代のモノ創りは、個客の満足に対応する企画設計が必要になります。

<顧客へ提案するモノ創りから、個客と共存する生き方へ>

407. 個客に対応するモノ創り
一般のアパレル企業は、顧客となる市場を予測し企画設計されますが、その設計プロセスを個客に対応する要素へ段階的に変えることが重要になります。その理由は、企画から生産まで情報を共有するモノ創りが主流になります。量産のモノ創りでは、最低限の情報共有で対応できましたが、個客に対応する1枚生産を実現するには、企画から生産までの進捗情報の共有内容が鍵になります。段階的な改革とは、双方の企業が効率的に対応するシステム化が必要になり、それが一人ひとりのロードマップを描く人材育成です。

408. 個客に対応する要素
 お客さまのライフスタイルを共有する、これが企画設計の原点になります。お客さまの価値観に基づき、製品をデザインしますが、デザイナー、モデリストは、自分の人生観から提案することになります。

お互いの価値観を学び合う、これがお客さまと共存する意味になります。ファッションを楽しむ要素、着心地感、個性、お客さまの生き方にマッチする、それらをデザイン設計の中で試行錯誤することが、長く愛用していただける製品につながると考えます。

409. 量産設計とオーダーメイド設計の共存思考
 量産設計とは、生産工場における対応に重点が置かれます。機材設備から技術能力を有効に活用することが、品質の安定とコスト軽減になります。オーダーメイドというのは、お客さまの意向が中心となります。

双方がモノ創りのプロフェッショナルとして高い技術知識をお持ちですが、お互いの技術を受け入れる意識は低いと感じます。その原因は、作業時間を軸としたコストの捉え方にあると考えます。要するにビジネス思考を変えなければ、成立しないということです。ここでのビジネス思考とは、お客さまの価値観を捉える要素であり、次世代の若者がファッションに何を求めるかということです。

410. モノを大切にする生き方へ向かう
 
2023年1月、世界的に物価上昇は続きますが、アパレル製品ではTシャツ¥1.290-、ワンピース¥3.990-の広告がございます。糸の原料採取から生産工場の労働価値を補う大量生産、凄まじい企業努力です。
服にお金をかけることはない、そんな若者も増えており、安いことは有り難いと言います。
 私は日本の戦後からモノ創りを学び、その価値を次世代へ伝える責任がございます。安い製品を作るには知恵が必要ですが、付加価値の高い製品を作るには、知恵と技術が必要になります。
 人間が生きていく上で大切なことは、そのプロセスを知ることです。その労働力を知ることで、安い製品でも付加価値の高い製品でも、長く愛用する気持ちは生まれてくるものです。
日本人が向かうべき道は、モノを大切にする心意気と思います。

以上、ありがとうございました。
2023.1.23. 感謝月 水谷勝範

次回 notemagazine vol 8 は、『ファッションMDと生産』ご案内します。



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