君の地球が平らになりますようにの感想

語り得ぬものについては沈黙しなければならないと言うのであれば、この本は私の経験では語れないとだけ書くべきでしょうか。22歳になってもお子様な私の恋愛経験では扱いかねるかも知れません。

この本は表題作含め5作品からなる短編集です。全て女性を主人公とした恋愛小説で、帯には「5人の女性がたどるそれぞれの恋と地獄」などと書かれています。
著者の斜線堂有紀さんの本は、これまでいくつか読んできましたが中でも『私が大好きな小説家を殺すまで』が好きです。胸に来ます。感動とかそう言うのではなく、どうにも収拾がつかない寂しさが胸に来ます。この『君の地球が平らになりますように』を手に取るのも、その寂しさを味わいたかったからです。

しかしながら、読めども読めども寂しくありません。何故でしょうか。多分それぞれの物語の地獄を理解できなかったからでしょう。
地獄というのは、叫喚地獄然りタンタロス然りアリ地獄然り、逃れられない苦しみ、手に入らない苦しみを含むものです。この小説における苦しみは惚れてしまったことに起因しますが、おそらく何故そんな人に惚れるのか、そんな状況で惚れるのかを理解できなかったので、読めなかったのだと思われます。

さて、ここで勘のいい読者の皆様は、経験が少ないから理解できないのか理解できないから経験が少ないのか、という問題の存在に気づいたことでしょう。
差し当たり、私にできることは書を捨て町に出ることでしょうか。あるいは、読書百遍意自ずから通ずでしょうか。
いずれにせよ、この本を読み終える為には、幾らかの時間と成長が必要であるようです。


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