そばの悪口 -駅そばについてのイントロとして-

駅そばについて書きたい。書きたいが、実のところ蕎麦はそんなに好きじゃない。
という話で書きすぎてしまった。唇寒しである。

私的麺類ランキングの中でもほとんど最下位を占めるのが蕎麦である。別に嫌いというわけでもなくて、ただ他の麺類に及ばないだけで万年下位の不遇な麺である。
例えばラーメンは、味が濃くて種類もあって美味い。出汁に脂はもうほとんど鬼に金棒に近い。二日酔いの時など絶好である。
そしてうどん。うどんは麺にコシがある。啜った時の口の具合が、そして更には喉越しが、食っても食っても飽きやらぬのです。出汁もすっきりして良く合う。讃岐香川はうどんで持つ。
さて翻って、蕎麦である。先程も書いたように、嫌いなわけではない。ただ何となくパッとしない。冴えない。もっさりとした出汁にやわこい麺。何となく、気に入らない。
大体漢字からして拉麺、饂飩、蕎麦と並んだ時の垢抜け無さったら無い。

蕎麦と言えば年越し蕎麦であるが、多分この思い出も悪さをしている。
小さい頃の話である。大晦日も10時ごろになると父がいそいそと準備を始める。閉め切った部屋が出汁のいい匂いで満たされる。それはいい。
問題は夕飯を食べた後さらに蕎麦を食べないといけないことである。父は、よく食べる人であるからいい。我々の目は不幸にもX線を感知できないから、他人の腹の具合など分かりもしない。従って、こと胃の具合に限ったとしても、人と人は分かり合えないらしい。
毎年大体、ゆく年くる年が始まる辺りで蕎麦が食卓に並ぶ。年越しそばであるのだから、ゆく年がゆく前に蕎麦を啜り終えねばならない。さて制限時間は15分。啜っても啜っても蕎麦。
そんなこんなしてるとくる年がくる。小さな私はそこで明けましておめでとうとひとまず言って、また蕎麦を啜る。
大きくなるにつれて、その様なことも無くなったのだが。

その様な次第で、特に温かい蕎麦はそんなに好きじゃない。いや嫌いなわけじゃないんですが。

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