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太陽のようなひと

私は最近、作家になりたいと思ったのです。
写真展を通して、作品というものを媒体して、人と人は対話することができるのだという感覚が、人生のなかではじめてあったからです。私の中で、人間というのは絶対に100%で分かり合えないという前提があります。これは感情をそっくりそのまま伝えるすべがないからです。

伝えるすべはたくさんあるのだと思います。言葉を介したり、感情表現には涙を流したり、口調が荒くなったり、表情や態度に出たり。
私たちは共通の「言葉」というものを持っている。多くの人間は言葉を介して物事を伝え合うことができる。奇跡のような文明。

それでもそっくりそのままは、伝えられない。全く同じ経験をしないと、きっとまったく同じ感情にはなれないし、同じ経験をしてもなお、きっと全く同じ人間には育たない。
自分がどれだけ辛いかは、自分にしかわからないし、自分がどれだけうれしいかは、自分にしかわからない。だから生きているのだと、思っています。

そのもどかしさを抱えて、でも時々「通じ合って分かり合えたような感覚」になって、それを喜ぶのが、人間に生まれてきた醍醐味だなと。

しかし、自分の感じていることや伝えたいことを、作品という地点まで昇華できたら。もしかしたら、今度はたくさんの人と深い部分で共感しあえるかもしれない。たくさんの人が何かに気づいてくれるかもしれない。「世の中があたたかいほうへ広がっていくといい」。私の思想の根源の、強い味方ではないかと、感じたからです。

作品に昇華するというのは表現の1段階先だとも感じました。
もちろん作品を創るために、作家は日々努力をするのだけれど、それは口から偶然出た発言ではなく、心のうちで何度も混ぜ合わせて粘度が高くなったものをさらけ出すような、そんな感覚でした。

クライアントワークは、表現です。テーマや伝えたい想いはクライアントの意思です。それを色濃く表現するのが、クライアントワークで撮影する写真や、紡ぎだす言葉なのだとしたら。
作品づくりは、紛れもなく自分の思想・価値観です。そこに正しさや理解できるかなどは重要ではなく(しかし倫理観というものは存在するので、このあたりをどう役割付けするかは置いておいて)。
自分がこの生きているうちに大切だと思う瞬間や、この感覚は生まれ変わっても持っていきたい、と思ったものを、もっと作品にしたいと思いました。

そのひとつの手段が、写真。
写真がうまくなればいいとか、たくさん稼げればいいとか、そこが最も大事なのではなく、私は多くの人に伝えるすべを持ち、その機会を作れるようにまでなったのだから、この人生でできることがまだあるんじゃないかと希望を持っています。

やりたいことは、山ほどあります。
高らかに宣言した学士の資格を取り、知識を得ること(抱負の記事がめちゃくちゃたくさんの人に見られて、有言実行せざるを得なくなりました、ありがとうございます笑)。

https://note.com/misa_utsunomiya/n/n2b0390198f5f

たった一人が話したことでも、その一言が作品へと昇華し、多くの人が手にとれば、それは大きなイノベーションを起こすときだってくるのかもしれない。

ビジネスは数字を追っていき、方程式でまわしていくことなのかもしれないけれど、感情を動かすのは、何だと思いますか?

セールスやプロモーションの方法も基本があって、テクニックももちろんあるのだけれど。これだけたくさんのものを知ったり、聞いたり、体験できる私たちは、広告やPRで心を動かす生物なんだろうか?
これが綺麗事だと言われたとしても、感情を分離してロジカルに物事を説明することには限界があるのだと思う。慈善団体がいくら論理的にその事業を説明したとしても、どこかの難民の子どもが泣いている1枚の写真のほうが行動が起こせるのかもしれない。しかしそれも広告として成立していることを知っていて、本物も偽物もこの世にはいっぱいある。これならOK、それはNGで分けられないものがたくさんある。精巧であればあるほど高みを目指せるのは、科学技術の世界だけな気がする。

作品を手渡す相手に、具体的な感情変化を目的にするのはナンセンスだ。
受け取り方はなんでもいい。でも、そうやって作品を手に取ってもらって感情が動くような体験を創りたい。そしてその作品は、私のたった28年、咀嚼し、強い力でこねくりまわしてきた感覚で創りたい。

直接的な仕事でも、すごくすごく遠回りな作品づくりであっても。私はこの人生でもっといろんなものを見て、もっとあたたかく包み込めるひとになりたいと思っている。
30歳を前にして、そう思うのだけれど、これは私が表現するのがうまくなってきただけ、ずっとずっと思っていたことなのかもしれない。

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