大喜利の絵回答について

はじめに

おれが大喜利に呼ばれた理由であり、戻ってきた理由でもあり、
戻ってきて初期、それ縛りでひたすらやっていた絵回答。
今も時折、おれを助けてくれる絵回答。
でも人を選ぶ、絵回答。

最近あまり使わなくなってきたので、整理も兼ねて、
今日は絵回答について考えていこうと思う。


■なぜ絵回答は「コスパが悪い」と言われるのか?

当然だと思う。
理由は明白、「そもそも皆さんは絵を描き慣れていないから」である。

0からものを描くのはとてもむずかしい。
ひとはものを皆さんが思うよりもはるかに雑に見ている。
から、絵を描く時に、脳内の引き出しから、手に、そして、
生大喜利の場合はホワイトボードに落とし込むわけなのですが、
その工程にそもそも慣れていない場合時間がかかる。

1問あたりの制限時間が定められている場合、
文字を書くという工程のほうが多くの場合慣れているので当然速度が出る。
それゆえ、3分あたりの回答数で考えた場合、
絵のみで答えた場合は1答だったとしても、
文字回答の場合は3答はできることが多い。

これまでの学生生活でも、
図工・美術の授業より、なにかと作文を行う回数のほうが多いだろう。
出力方法として、いやでも文字ベースで発想する機会自体が多く、
脳内のイメージとしても、文面で想起する人のほうが多いと思われる。
ないしは、ビジュアル的イメージ想起を、
文字化して出力する、というケースのほうが多いはずだ。

脳内イメージをワード・ボキャブラリーで手を変え品を変え、
語り尽くすというのが人間の言語コミュニケーションの方法でもある。

ことネット大喜利の場合は、そこを問われるケースが多いように思われる。
(生大喜利では、非言語コミュニケーションも利用できるが…。というか、そこが割と重要なファクターの可能性もあると最近は感じている)

ネット大喜利の強い方のインタビューや大喜利のコツの記事を読んでいると、概ね、脳内にある変な・常識からズレたイメージを文章化する方法に長けている方のケースが多い。
(またそれゆえ、各々その方法を紹介していることが多い。)

したがって、だいたいの場合、
文字を書くことに慣れている皆さんは絵よりも文字を使って答えを考えるほうがよい。
絵で答えるのは難しいから、時間的にも、今から慣れるとしたとしても、
とにかくコスパが悪い
のである。

…という結論だと思う。

■では、コスパの悪くない絵回答をするには?

だが、自分の場合は当初、
脳内を出力する方法として絵が最適解だった。
ノートや教科書へのラクガキや漫画を描くなど、
日常的に「絵を描くこと」に慣れていたということが大きい。
特に、小学校の頃、かんたんなものは何でも描けるように練習していたり、
教則本を真似ていたりしていた。

このような、「シンプルだけど伝わるイラストの本」
みたいな洋書が家にあって、
それをよく見ていろいろ描いていたのが大きいだろう。

絵は描くと慣れる。つまり、描けば描くほど、描くのが速くなる。
筋肉を動かし、その軌道を身体化していくという面では、
運動であり、スポーツなどのフォームや武道における型とも近い。

ではどのようにして身体化していくか?
という部分であるが、「やる」他にないだろう。

よく、絵がうまくなる方法の一つとして、
「円を描きまくる」
というのが紹介されたりする。
それはあながち間違いではない。
基本の図形(丸・三角・四角)でイラストを描く方法の教則本も
あるくらい、基本の形であり、円をきれいに描くのは難しい。
曲線運動を体に覚え込ませて、身体化するという方法なのは間違いない。

描きたいものを描きまくることで、
「見ないで、ノータイムで描けるもの」を増やすことが
コスパの悪くない絵回答をする近道だと思う。

”絵がうまくなる方法”を絵回答集中時代に
よく大喜利会の休憩時間などで聞かれることが多かった。
その時の答えとしては
「あいうえお表にあるような絵を描ければ大体の絵回答は可能」
と答えていたと思う。

こんなの。

!!ここめっちゃ大事です!!
「絵がうまいこと」は決して回答の強度にはつながらないと思っている。
発想が良ければ別にテキスト回答でもウケる。絵いらない。

よく「絵がうまい」って褒められることがあるんですが、
そこは個人的にウリにはなってない気がしてなりません!悔しい!
こと大喜利に関しては、むしろ枷になる能力でもあるかなと思っている。

…とまあ脱線した(次の章で話します)が
この章での結論としては、

コスパの悪くない絵回答をするには、
見ないで、ノータイムでかんたんに描けるものを増やす
ことかなと思う。

■絵を描くな、絵で描け

もうここから本論なんでいつもの口語体で書きます!
この章だけ金取りて~~~~~!!!!!!!!
ってくらいには意識してて、
初期からやんわりとつかめてたことなんですが、
最近ようやくbigiriとかで勝てる確信ができるようになってきたり、
他の絵回答する人とか見てて感じたりして
言語化改めてしておこう!と思ったのでします!

もう結論から言います!

!!ここホントめっちゃ大事です!!
絵「を」描くな! 絵「で」描け!

↑これマジで絵回答する上で勘違いしてる人がホント多いです。

で、「コスパ悪い」って感じてる人は、
完全に前者の「絵を描こう」としてます。
そうなると、「絵のうまさ」が重視されるものと勘違いしてしまい、
絵自体の巧拙を考えながら描いてしまうので、
細か~く絵は描くものの、
回答そのものの強度はシカトする格好になります。
当然ウケません。そうすると、
「せっかくいっぱい時間使って描いたのにウケないじゃないか!大損ぶっこいた!」
となるので、
当たり前ですが、「コスパ悪い」と感じるようになるわけです。
それゆえ、ダメだった経験によって、絵に対して臆病になってもいきます。絵回答は決して怖くない。

あと、なまじ絵が描けるプレイヤーは
「逃げの一手」として絵に頼るケースもわりと見受けられます。
絵の力に頼りすぎてしまう。
ボードをめくる前は「ただの絵の説明」を発声してるだけのケースです。

絵は印象が強い分、強度の低めな=わかりにくい回答になると、
より「ダメなズレ」が明確化されてしまうので、
なおのことウケなくなります。
「描いただけ」ではウケません。これは自戒も込めて。
たまーに「描いただけだな~」って思う時があって、
自分自身背筋を伸ばすシーンが多いです。

自分がウケた絵回答のケースとしては、
発想を絵「で」描けた・発想を絵「で」補えたケース
という場合がほとんどです。その他のワシの絵回答はカスや。

脳内イメージ=発想を、上記のこれまでの人生で
まあまあ慣れたそこそこの絵で、
見ている人の抱えている脳内のイメージをより精緻に補ったのみ。
もしくは突き放す。けしてうまくある必要はないのです。

以下、例をあげながら見ていきましょう。

【例1・「補い」】MASTER=PIECE2023(2024.01.14)より

お題:本当に普通の人にドキュメンタリー番組の密着がつきなんとか山場を作ろうと無理してこんなことをしていた
答:フェチもののAVみたいに、エスカレーター乗ってる間だけずっとお尻のアングル

(絵回答)

おそらく、字面でも十分にいいとは思うんですが、絵回答にしたことで、見ている方の中にやんわりとある(こんな感じかな…?)というイメージをきっちり掬えた形になったのかなと思います。見ている方の気持ちとしては「これだー!!」って感じというんでしょうか…?フェチAVはストイックな世界なのですごい面白いし素敵です。環境音以外の余計な音がないので。もう侘び寂びの世界。…脱線しました。

【例2・「突き放し」】ボケルバ(2013.10.15)より

お題:画像お題(ビアジョッキでみんなで乾杯している画像)
答:「ビールジョッキに似ているアニメキャラクター第一位の野原ひろしさんでーす!」「しんのすけ、俺は今からビールジョッキに突っ込むからな、みさえ、ひまわり、シロのこと、あとは頼んだぞ!じゃあな!しんのすけー!」ドーンガシャーンバーン!!!

(絵回答)

一見、むちゃくちゃに見えますが、
お題には前提として「ビールジョッキ」で重ねつつ、
口頭である程度説明を入れているつもりです。なのでぎりぎりかすってる。
オチの絵面のインパクト・バカバカしさで見ている方を突き放しつつ、
自分の脳内と見ている方の脳内を一致させました。
「おれの見せたいもんはこれなんじゃ~!」的な。
ただこれはもう勢い。力技かもしれません。しらん。
でもひろしにはかなり世話になっています。

【例3・「ひねり」】第2回花弁杯(2024.04.07)より

お題:セックスの地方大会で予選負けした技
答:みさえ返し・ひろし咲(ざ)き

<回答割愛>

下ネタ限定のbigiri大会ということで、インパクト重視の絵回答を競う格好になっていたのですが、まず前提として下ネタにまつわる絵を描く必要がありました。
このときの発想としては、まず「みさえを描こう」と思い、
まんぐり返し状態のみさえをひろしがズコズコと犯している…みたいな感じの絵面が浮かびました。
ただ、それでは上記ただの「描いただけ」になってしまいます。ひねりがないな~、と思ったので、ひろしが「咲く」というのはどうだろう?となりました。
こればかりは瞬間の思いつきになるので、あまり細かいプロセスはありません。ただみさえからひろしが生えてたら・産まれていたらどうだろう?夫婦らしくタッグ技みたいじゃないか??みたいな前提はあったかなと思います。笑顔で生えてたら面白いな、と思ったので、笑顔のひろしを描きました。bigiriってあまり知られていないのですが、1500点までしかインクが使えないので、あまり精緻な絵は描けません。ひろしのようにひげや黒髪の人を描くのは難しく、インクとの勝負でもありました。

で、「セックスの大会における技」というお題になるので、
何か既存の体位的というか、コンビ技っぽくいきたいな、と思いました。
みさえは返されているので「みさえ返し」(もしかしたら、ここは最初の発想段階から思いついていたかもしれません。)で、ひろしが咲いているので、「ひろし咲き」…なんですが、
ただ、ひろし咲きで「ひろしさき」と読まれるととても面白くなくなるな…と思ったので、あえて、ここはあえてネット大喜利なので「咲(ざ)き」と固定化させました。

以上、絵自体を描くプロセスでいくつかひねりつつ、
回答のテキスト段階でも何段階かひねれたので、ひねりをしっかり込め、
かつシンプルに強いイラストを描くことができたため、いい順位を取ることができました。
これは自分の中でも結果を含めて、非常に納得の行く絵回答でした。

…と、このように、発想はもちろんひねりつつ、
見ている方のイメージを補ったり、
回答自体の後押しをすることができると、
絵回答としては文字回答より優位に立てると思っており、
それが、「絵を描ける・絵回答が強い」という
アドバンテージになるのだと思っています。

なので、
発想を作りだしたとき、
絵「を」描くな! 絵「で」描け!
というわけなのです。

「絵」って考えるからヘンになるのかもしれません。
それでもなお、「絵回答はニガテだよ!」「絵はニガテだよ!」って方。

「図」回答って捉えるともう少しやりやすくなるかもしれません。

上記、「イメージの補足」「イメージの後押し」と考えると、
すなわち見ている方の脳内とこっちの発想を一致させればいいわけなので、
グラフやかんたんな図でもいいわけなのです。
言葉で
りんごの隣でうんことハゲタカが飛び回ってて、
すぐそばでトラックが突っ込もうと迫っている

と言うより、
図を描いたほうが早いわ!って時があると思うので、
そういうときの選択肢として、
「図」を回答のいち選択肢として捉えると、
答えの幅・引き出しが広まるかもしれません。
(うんこのどっち側に何があるんだよ!とかそういう疑問も潰せる)

地図とか、サッカーの作戦のやつみたいな図や、
「その時歴史が動いた」の合戦図みたいな
図解っぽい回答だったら多分おれは笑います。

■おわりに

もう言いたいことはあらかた言ったので、
あとは皆さん、快適な絵回答ライフを!
速く、そして精密に、発想と補いの世界へ!

あ~また色んな人に塩を送ってしまった…
違うだろ!とかむしろためになった!とか、
もっとこういうこと教えてくれ!とかご意見がある人は、

↑こちらに送ってください。よろしくおねがいします。

は~あ、精進精進…。

■おまけ bigiriで絵回答でいい順位をとる方法

おまけとして、bigiri(絵回答もできるリアルタイム型ネット大喜利サイト)
でそれなりに勝てる絵回答ができる方法をまとめました。

・1500インクMAX使い切る勢いで描け!
・極力キレイに描け!ペンタブとか使え!指ならやめとけ!
・影つけろ!陰影ちゃんとしてるとウケる!
・勢いある絵よりシュールな絵を描け!発想は動より静寄りで!
・キャラクターをしっかり描いて、かわいそうな目に合わせろ!
・下ネタの場合はどれだけオゲレツに描けるかだ!
・短くまとめられるならテキストにしとけ!

以上を守れば高順位間違いなし! おしまい!


という感じです。



道端に投げ捨てる感じで