詩 曠野に雪ぐ
詩 曠野に雪ぐ
嘘みたいに夥しい
湿潤の羽根が
殻を砕いてまろびでた
ばかりの足許を
滴ってる
淡い光のほうへと 体毛が靡いていく
上気する胸と 覚束ない唇
けれど瞳が
屋根のような翼から
放たれる 影を
貫くように
淡い光のほうへと 視線を注いでいく
この辺獄を
遥かに覆ってしまうほどの
号哭が
うつくしくも柔い喉元から
振り絞られて
庭渡神は翔び立った
これからは
見渡しきれない土気色の曠野を
救いの希求を捜すように
巡廻するのだ
祈りのもとへと駆けつけて
声を授けるために
翔び立ったのだ
産まれたばかりの
柔肌と体液に包まれた
まだ固まりきらない精神が
自分を省みることなど知らずに
ふらついてでも
それ以外の選択肢など
ありはしないかのように
溺れる空を泳いでいく
光線を必要とせず
輝きを放つこともなく
ただ
そこにいる
そこにい続ける
『東方鬼形獣』に登場する庭渡神『庭渡久侘歌』を基にした詩