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真の愛の発見

結婚適齢期を過ぎて独身を続けていた綾は、結婚に対する固定観念にとらわれている自分自身に気づき始めた。

「理想の相手なんてきっと存在しないわ。むしろこれだけは絶対ダメ、というタイプを避けることが大切なのかもしれない」

そう考えるようになってから、綾は意識的に出会いの場に足を運んだ。趣味のサークル、友人の紹介など、様々な機会を通じて相手を探した。

最初はぎこちなかったが、次第に「絶対に嫌な相手」というイメージを明確にできるようになっていった。マナーが悪い人、お金遣いが荒い人、誠実さに欠ける人など、自分に合わないタイプを見極める目が養われていった。

そして、そうした好ましくないタイプの人と出会っても、それほど動揺することはなくなった。

「これならなんとか付き合えるかもしれない」

そんな柔軟な気持ちを持てるようになっていた。

ある日、綾はサークルの飲み会で出会った一人の男性に惹かれた。名前は大輔。年齢は32歳。仕事は会社員で、趣味はキャンプと写真撮影だという。

最初は「これも理想の相手じゃないかも」と少し警戒していた綾だったが、大輔の誠実さと価値観の高さに徐々に惹かれていった。

しかし、つきあうにつれて、綾の中で「もっと素晴らしい相手がいるかもしれない」という思いが膨らんでいった。

大輔とは趣味も合うし、性格も優しい。でも、どこか物足りないような気がしたのだ。綾は、自分の中で理想を捨てきれていなかった。

ある日、綾は大輔に本音を打ち明けた。

「大輔、あなたのことは本当に好きなの。でも、私は自分の理想を追い求め続けてしまっているんです。これ以上あなたとの関係を続けるのは、お互いのためにならないと思います」

大輔は少し動揺した様子だったが、綾の気持ちを受け入れた。

「わかりました。私もあなたのことを好きですが、あなたの幸せが第一です。無理に一緒にいるよりも、お互いに納得のいく形で別れるのがいいかもしれませんね」

二人は良い思い出を残したまま、それぞれの道を歩むことにした。

その後、綾はしばらくの間、出会いの場から遠ざかっていた。しかし、焦りは収まらず、再び活動を始めた。

そして、ある料理教室で出会ったのが、浩二だった。年齢は35歳。仕事は自営業で、趣味はサッカーと料理だった。

最初は戸惑いながらも、綾は浩二と会話をを重ねていった。浩二は綾とは正反対のタイプだったが、その飾らない人柄と料理に対する情熱に惹かれていった。

綾は浩二と付き合うようになって、初めて自分が本当に求めていたものが何なのかを悟った。それは、条件に当てはまる理想の相手ではなく、自分を受け入れ、一緒に成長してくれるパートナーだった。

浩二は、綾のそんなありのままの姿を愛してくれた。そして、二人はついに結婚することを決めたのである。

理想を追い求めていては、一生結婚できないかもしれない。しかし、「これだけは絶対ダメ」というラインを引いて、柔軟に相手を受け入れることができれば、素晴らしい出会いに恵まれるかもしれない。

綾の経験は、そんなメッセージを私たちに伝えてくれている。

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