アイドルを目指したわけ/欅坂オーディション面接編


2015年 7月頃
自宅に一通の封筒が届いた。

『鳥居坂46の書類審査に合格しましたので面接審査にお越しください』

私はオーディションの類を親に言って受けたことは一度もない。今回もポストを先に開け誰にもバレないまま書類を受け取り面接に臨んだ。

私はスーパーポジティブなわけでも楽天的な性格でもない、どちらかと言ったらネガティブだし自分に自信はないし悲観的な性格だ。だけど今回のオーディションは合格する、という自信があった。なぜかは今もわからない。

オーディションは乃木坂46の二期生の面接審査が行われたのと同じ会場だった。


何年か前に通ったことある道、通ったドア、一度面接を受けたことがあるからなんとなく周りの女の子より一つ強い気がしていた。

当時の服装は、詳しく覚えていないけどミニのスカートにTシャツを着ていった気がする。背が高いのを自分のチャームポイントだと思っていたのでヒールのサンダルを履いてちょっとでもよりスタイルを良く見せようとした。

面接が始まり何年か前と変わらない質疑応答が続いた。


ただ一つ、以前とは明らかに違うことがあった。


「1番と4番の人、前に出てください」


今でも覚えている。わたしと、もう一人。
二人だけが呼ばれた。


「何かダンスでアピールしてください、まずは1番の方から。」


焦った。私は4番。


まだ後の方だからマシだけどさっきあの1番の子ダンス部ですとか言ってたよね??え?不利じゃない?私ダンスなんて一回もやったことないよダンスでアピールってなんだよ無理だよそんなの


必死に頭を働かせて突破口を考えたけど思いつかなかった。だってどう考えても、ダンス経験者の彼女にダンスの上手さで勝るのは無理だし創作ダンスをして芸術点を稼ぐ、というのも望めない。

もう仕方ない。前と同じ失敗だけはしたくなかったけど、ここはまた気を衒うしかない。


私は残された数秒でダンスを考えた。


ちゃんと振り付けも覚えている。


どうぞ、という言葉を待たずして手を上からひらひらさせながらしゃがんで下の方で楕円を描いた。


「なんですか?」


「好きな食べ物ダンスです。」


「それはちなみになんですか?」



「かき氷とオムライスです!!!」




どうだ、ウケるか?




ウケた。


勝ちを確信した。
以前は滑ったから落ちたんだ。

二人だけ前に呼ばれて質問されたし、さらにはウケた。
これは合格に間違いないだろう。


その子と帰り道自然に仲良くなった、連絡先を交換して絶対うちら連絡くるよと励ましあった。これも運命だし二人で合格しようね、って言い合って別れた。


八月上旬、学校の登校日の夏の日
高校2年生になった、汗だくの私の携帯に一通の着信が入っていた。

つづく

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