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自己反省:わたしが講師のセクハラ防止研修はまるでフリーズドライの味噌汁のようであった件について

 わたしは、サラリーマンだったころ、若手社員むけに、セクハラ防止のための研修を受け持ったことがあった。入社1年から3年めの社員を集めての研修だったが、こういっては何だが、皆さん、一応、大卒で、就職試験もパスしてきたわけで、セクシャル・ハラスメントが何かってことくらい知ってるはず、と思っていた。が、現実はそうでもなかった。
 この分野では、日本は本当に遅れているんだよね。

 ちょうどそのころ、20代の男性社員が、派遣社員の女性に対して、セクハラ発言をしてしまって、大変であったという現場からの報告もあったので、一応、わたしも心して、講師として臨んだわけである。

 そうはいっても、セクハラ防止研修の時間は、30分かそこらだった。だいたいその辺からして、わが社の意識の低さがわかるのだが…。
 いわゆるセクハラ行為とは、女性蔑視行為なのだが、そもそも女性蔑視とか差別とは何かってわかっていない社員が多いのだから、どっから説明すべきか困ったものだった。
 それなのに、上からは、女性が加害者の場合もありますよね、だから両性平等の立場で研修するようにと、注文ばかりが多かった。

 それで、しかたなく、わたしは、例えていうなら、本来味噌汁は、出汁の取り方から教えねばとは思うのだが、時間内に大人数分用意しろと言われているようで、フリーズドライの味噌汁を飲ませるしかないと判断し、そのような研修内容にしたのである。トホホ。

 しかし、フリーズドライ味噌汁風のセクハラ防止研修、案外これが評判が良かった。お手軽に理解できて、目的達成感を得られたのだろうか。

まず、セクハラの禁止事項を具体的に挙げる。
1 会社関係、取引先すべてで、絶対にボディ・タッチをしてはダメ。
2 異性のプライバシーを安易に聞いてはいけない。
3 宴会の時の座る席と会話には要注意。
4 これからの時代、問題となるのはセクハラ発言である。 等々。

次に、社内のセクハラ対策委員会について説明する。→ここが重要。
 今まで、委員会はあっても、具体事例について一度も開かれたことがない委員会であることを強調した。つまり、栄えある第1回目の被告人は皆さんかもしれませんよ。と脅す。→実は日本の会社風土はここが問題なのだが。

 特に、社内の地位による力関係は、まるでカースト制度であるので、民主的な判断を期待しないように、自分の身は自分で守るしかないことを、強調する。そして、そのためには、広く情報収集をしてねと強調した。

そして、最後に、そもそも差別とは何か、常に考えておく視点が重要であるであることを強調して、研修を終えた。
 セクハラ行為は、加害者が男女どちらであっても、その時は、ふざけていた、相手は抗議しなかったと言っても、それは抗議できない人を選んでやったと重加算されこそすれ言い訳にはならない。
 そして、ハラスメント行為は、女性の場合も同様であり、キャリアを積むほど、自分のなかの主流派意識に早くに気づくことが大切だと強調する。
 また、くれぐれも、男性は、フェミニズムや女性差別について知っているつもりにならないこと。安易に意見を言ったがために、墓穴を掘っても誰も助けには来ないと思うべしと締めくくった。
 
 受講した若手社員から、研修を受ける前と後では、みな態度が変わったと言われたものだった。でも、今、考えてみると、即効性を求めるのではなく、もっと根本的なことを話すべきだったと反省している。

 結局、行為や発言を抑えても、根本の理解がなければ、砂に水をまくようなものだったなと思う。やっぱり、そうしなかったのは、わたしも、サラリーマン生活に疲れていて、わきまえる社員になっていたからだと思う。

 

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