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cotton 紺野キタ

「そう
たとえば コットンのような
しろくて 肌ざわりのよいもの
そういう やさしいもので
はだかんぼうで ふるえてる あの子を
くるんであげたい」

という、1ページ目の詩。

白くてではなく「しろくて」
優しいものでなく「やさしいもの」
裸んぼうでなく「はだかんぼう」
包んであげたいでなく「くるんであげたい」

主人公奈月から見た理子(みちこ)の姿は ひらがなだ。

これだけでどんな風に彼女を見つめていたのか。
見目にデザインされている。
本当に素敵。ホッとため息をついて読み始めた物語でした。

<あらすじ>
雨の降る交差点で、女子高生に傘を貸した奈月。女子高生の態度に涙があふれ、そのまま女子高生に傘を渡してしまう。そんなことがあったなんてすっかり忘れていたある日、姉の結婚式で、新郎の妹というあの女子高生・理子と再開する。後日、傘を返しに来た理子にいい印象を抱かなかった奈月だったが、なぜか理子に一方的に懐かれてしまう。だけど……。

といったお話なのですが、この2人に恋愛感情はありませんので(……と、私は思ってる)王道ではないのかもしれませんが、私はとっても素敵な百合だと思っています。

作中、主人公本人も言ってますが、触るもの皆傷つける繊細さの塊のような理子に懐かれる様は、まさに野生動物を手懐けるようなもの。
その快感たるや、わかります。

でも、皆が理解できない子に懐かれると人一倍わかった気になるんですよね。調子に乗ってしまう。
自分も同じような失敗、何度もしたことあります。
わかるわあ、こんな子いたんですわあ。私の周りにも。
妙に母性をくすぐられて、焼かなくていい世話まで焼いちゃうんですよね。

でも、この物語では、相手は剥き出しで飛びかかって来ますから。
主人公の奈月だって、自分を剥き出して向き合うしかなくなってしまうんです。
理子のようにまっすぐ怒れなくなっている自分に気がつき唖然とする。子供でいるようで、ちゃんと心を殺して大人になってしまっている自分に気がつくんですね。

傷晒し合って、ぶつかり合い2人で大泣きするシーンは私もジンとしてしまう。
無様で美しい、いい、シーンです。

魂の片割れに出会うことって、それが伴侶や恋人なら素敵だけれど、友人だって親戚だって構わないと思うのです。
そういう人に出会えることこそが幸せでありがたいこと。

理子ちゃんはきっと素敵な大人の女性に成長することでしょう。
いくら汚れても、洗い直して、やさしい手触りを取り戻せる。そんな2人の女性のお話、希望をいただきました。

この後に収録されている他の短編もとっても面白かったです。ノスタルジックで、素敵。そちらも是非。

希望に満ちた異色の百合。いい。ごちそうさまでした。

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