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新生活を励ましてくれる本『しあわせの哲学』

4月中旬に育休から復帰する。2人の子どもを育てながら働くのはもちろん未知で不安もあるけれど、環境の変化を目の前にするといつも思い出す1冊がある。

東京医科大学哲学教室の教授である西研さんが書いた「しあわせの哲学」だ。

人にとってのしあわせとは何か、西さんが分かりやすく解説している本で、こんなくだりが印象に残っている。

ーー脊髄を損傷し首から下が麻痺して動かなくなったチンパンジーは、衣食住が保障された生活があれば、生きることができる。一方、同じように脊髄を損傷し首から下が麻痺して動かない人間は(西さんがある看護師さんから聞いた話)、衣食住が保障された入院生活であっても、"自分で虫一匹も追い払うことができない"と人生に絶望している。ーー

この例を用いて、西さんはチンパンジーと人間の違いについて、以下のように指摘する。

ーーチンパンジーは"いま・ここ"を生きる存在。一方で人間は"いま・ここ"だけでなく"これから"の可能性を考えながら生きる存在。『〇〇したい、そしてそれはできるはず』という生の可能性を見つめて、過去から未来にかけての自分の物語を描きながら生きていく存在。この生の物語は『できる=能力や資源』と『したい=欲望』の二つがそろうことによって成り立つ。ーー

人間は「できる」「したい」の可能性が失われると、これまで築き上げてきた人生の物語が壊れ、人生に絶望してしまうというのだ。

では、新しい物語を作っていくにはどうしたらいいのか。西さんはこう記述していた。

「首から下が麻痺して動かなくなった男性は、看護師や医師の励ましにより、口でパソコンを操作できる棒を使って、文字を打ち、メールを通して同じ患者とコミュニケーションをし、ついにはネットで買い物ができるようになった。一度ほぼ完全に損なわれた自分の物語を再構築していった。」

「私たちは誰もが突然、自分の物語を失う可能性がある。そんなときは、まず『自分の人生なんだ、自分から進もうとしなくちゃ』という意欲が出てくることが大切。そしてこれは、誰かに自分の気持ちを受け止めてもらうことで出現することが多い。これがうまくいくと『受け止めてもらう』→『安心感』→『自分の客観視』→『これまでとこれからのことを考えようとする』というプロセスを経るようになる。」

これまでの人生の物語が壊れ、書き換えを迫られたとき、誰かの力を借り、サポートやヒントをもらいながら、あらためて「したい」と「できる」の両方から点検し、考えてみることが大切です。そのうえで、「自分はこれならできるし、していきたい」という道が見えてくると、新たな物語ができていきます。

NHK出版 学びのきほん

しあわせの哲学

・・・

ちょっと大袈裟かもしれないけれど、1人目の育休から復帰したとき、わたしは、これまでの物語が壊れ、これからのキャリアの可能性を失ったような気持ちになっていたかもしれない。

働く時間も自分の時間も制限されて、出張もままならない。できないことばかり目に付いていた。

でもわたしは幸運なことに、職場でたくさん気持ちを受け止めてもらえたし、友人や先輩たちもいろいろな知恵を授け、励ましてくれた。そんな周囲の受け止めがあってこそ、だんだんと『できないことではなく、できることに目を向けよう』と、気持ちを切り替えられるようになった。

それからは、勤務時間や社内規程、夫の働き方など、自分の力でコントロールが難しいことには執着しないと決めた。制約がある中でできることを見つけ、それを成し遂げて自信をつけると、やりたいことも見えてくるようになって・・・を繰り返すうちに、出産後のキャリアを再構築することができたと思う。

育休から復帰すると『いままでできたことができない』『周りはできているのにできない』と感じることが増えるはず。

悔しい気持ちも愚痴りたくなる気持ちもずるい!と思う気持ちも本当によくわかる。そんな気持ちを否定しなくてもいい。

ただ、ひとりで抱えるのではなくて、信頼出来る人に受け止めてもらおう。先輩に両立のコツを教えてもらおう。するとだんだん『ならば、私ができることはなに?』と気持ちが切り替わっていく。

実感として、はじめは『したいこと』が叶わなくても、『できること』に目を向けると、自ずと『できる』『したい』が揃ってくる気がしています。

新生活を迎える皆さん、周囲に頼って弱音を吐いて励ましてもらいながら、できる・したいをコツコツ実現していきましょ〜!一緒に頑張りましょ〜!!






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