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バイトダンスのアプリ群戦略と技術ドリブンな組織構造ーー事業をフォーカスしなくとも成功するワケ

バイトダンスはTiktok、今日頭条をはじめとするサービスが知られています。しかし、バイトダンスはそれ以外も数多くサービスを打ち出していて、悟空回答Wukonghuida(中国版Quora)、西瓜視頻Xiguashipin(中国版Buzz Video)多閃Duoshan(中国版Snapchat)中に失敗しているものもありまして、成功しているものもたくさんあります。その結果バイトダンス系のアプリのMAUは15億も超えたそう(重複有りですが)で、アプリの「工場」までと言われています。

つまり、量産量死で高打率でサービスをリリースできたということです。
なぜそう実現できたんだろうか。
私は、「技術ドリブンな組織構造」と「科学的プロダクトプロデュースポリシー」という2点の理由で考察してみようと思います。

アプリ工場の全体像

まず、アプリ工場の全体像を見てみましょう。

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ニュース、ソーシャルそしてビデオ、教育、そして音声まで幅広く手を出したことがあります。

それぞれのサービスがうまくいっているかというと、結論うまくいっていると言われています。各サービスの概要は以下のような感じです。

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*七麦数据,Questmobile,艾瑞数据を元に作成

技術ドリブンな組織構造

パッと見天馬空を行くような事業展開だと思われますが、実は各アプリ間共通点をしっかり持っていまして、それはプロダクトのストラクチャーを作成する技術部隊「中台」と言われるところが一挙に複数のプロダクトを作成しているところです。
ここでいう「中台」は、「前台」、「后台」とペアで出現することが多いです。
それぞれの意味合いは以下の感じです。
・「前台」(Qiantai):プロダクトフロントエンドの業務。UIのデザイン、プロダクトの見た目を設計する部署
・「中台」(Zhongtai):プロダクトのミドルエンドの業務。プロダクトのバックエンドを各アプリに繋ぐ、ストラクチャを設計する、それぞれのアプリの技術適用
・「后台」(Houtai):プロダクトのバックエンドの業務。バックエンドのデータ環境整備

この概念は組織の構成を役割で横串に編成し、よくある事業別縦型の組織ではないのです。
「中台」はアプリの工場に大きく役に立っています。会社のプロダクトラインが複雑になっていて、複数なサービスを同時に走っている場合、それぞれシステム構築した場合は結構なリソース浪費になってしまうので、中枢的な機能を統合して、それぞれのアプリに使えるAPI開発、ツール開発を担う部門になります。

そして意図的に「中台」の役割を増幅している戦略を明示するために、「大中台」(ビッグミドルエンド)というふうに呼んでいます。同時に、「前台」は極少数に絞り、ほとんどの人を技術部隊に居させることにしています。50%の人も技術者と言われています。
色々調べたところ、「中台」は米テック企業発の言葉ではなくてアリババが当時Supercellを視察した後に内部組織構造をなんとなくその方向に動かせたという経緯があります。
そして、バイトダンスは知識吸収に貪欲に満ちるような学生みたいにアリババの組織戦略をパクリ、上手に組み込めたと言われています。

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「中台」は図の通り、技術部、ユーザーグロース、セールスという3つの部分に分けられています。簡単に役割をいうと、「既存ユーザーエキスペリエンスの向上」「新規ユーザーの獲得」「収益化」3つになります。技術部にアルゴイズム、ユーザーインタラクティブデザイン、特定プロダクト技術対応部と構成され、アルゴイズム部は各プロダクト共通のレコメンドアルゴイズムを開発します。ユーザーグロースはそれぞれのプロダクトに応じてグロース施策を考える部署で、横断的にも全社マーケ施策を考案するところです。セールスは販売用の商品開発、販売活動を行う箇所になります。

実際友人の話を聞くと、この組織はツール文化が濃い、ニーズ対応に早いとのことです。生産性を上げるために、従業員が自ら良いと思うツールをウィックに開発して、その中に使い勝手の良い物は社内に広がり、ないし一プロダクトとして世に公開するということです。

好例は、「飛書」(Lark)です。以前バイトダンス社内に使うコミュニケーションツールはSkypeーWechatーSlackーDingという順番でした。しかしどれも自社のニーズに合わないと思い、GoogleのInboxにインスパイヤされ、メッセージ機能、メール、ファイルを集約するツールを開発すると決心し、2017年にプロジェクトを開始しました。途中でSlack,Gsuite,Notion様々なツールコンセプトを参照しながら自社に最適なファイル管理、連絡ツールの開発に着々と進みました。その後、社内に大好評し、2018年に限定的に外部のパートナーにも機能解放してみました。もちろんそれも結果高評価をもらって、ついに2019年サービスを公開しました。

外部にプロダクトがあるのに、わざわざ開発する必要がではないかという考え方もありますが、それぐらい開発のパワーを所有し、瞬時に自社最適な物を作れるのです。ただ本質的に開発力の話だけでなく、効率の話であると思います。以前職場の経験上で開発するどころか、新しいツールの導入でさえ容易でないことになっています。またこれも次元の違う話ではありますが。

従って、バイトダンスは「中台」戦略によって技術ドリブンな組織図を描き、大量なプロダクトを制御する能力を手に入れました。

科学的プロダクトプロデュースポリシー

他方、「科学的プロダクトプロデュースポリシー」も1つ大事な要因となっています。

少し創業者張一鳴の経歴を遡ります。

2005年張一鳴は大学卒業後、企業向けに社内コミュニケーションツールの開発を経て、2006年に旅行検索サービス「酷讯Kuxun」に入りました。検索技術の責任者として3年間働いているうちに、検索で何かのサービスを立ち上げたいという考えが固められました。その後マイクロソフトでマネジメント経験を積み、2009年「九九房Jiujiufang」の不動産検索サービスを創業しました。検索を一貫してやってきましたが、2010年ごろスマホシフトの動きを気付き、今後情報のディストリビューションのあり方が根本的に変わると確信していました。

なので、本人が別にメディアをやろうとするわけではないですが、情報のディストリビューションの変化を起こせそうと判断し、バイトダンスを創業するというロジカルな選択を下したわけです。

この考え方は徹されました。今日頭条を運営している間にお笑いのツール、ライブストーミングツール、ショートビデオツール、プロダクトのロードマップはもはや「この課題を解決したい」という基点ではなく、「課題を全部もってこい、アルゴイズムで解決してあげるから」という感覚で、マットリックスを作り、出たアイディアを一つずつ検証しにいきます。

もちろんTiktokとはMusical.lyの類似商品だったり、悟空问答は知乎Zhihuのパクリ品だったり、ただ模倣しているではないかと言われます。ただし、バイトダンスはデータに基づき、サービスをやるべきや否かを判断し、この技術はどれだけ情報の届き方をどれだけ変えれるかの考え方をしているのです。ですので、模倣するか関係なく、自分の技術を使って相手を100倍を超えれるようであれば単純にやってしまうよ、にすぎないと考えております。

ですから、プロダクトのアウトラインを振り返ってみると今日頭条や内涵段子は文字を中心とするもので、それから番茄畅听と言った音声中心のサービス、それからTiktokを中心とするショートビデオのサービス、という感じで情報の伝え方を軸にサービスをプロデュースしているのと、車領域、美顔カメラといったバーティカルな軸ででサービスをを開発しました。結果、行き渡るところは全部バイトダンスがいる状況になりました。

張一鳴の考えでは、お笑いで世界を変えようと考えていないであろう。ただただトラフィック取りに行けるものを徹底的に科学的にアプローチしていると思われます。

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「技術ドリブンな組織構造」と「科学的プロダクトプロデュースポリシー」、この2点でバイトダンスのアプリ量産能力の下支えとなっていることがわかりました。もう少し抽象化すると、生産力と生産方針の2点が掛け合わせてブレずにしっかりやってきたとも言えると思います。この能力はテンセントもFacebookも恐れていると言われています。

もちろん、1つのプロダクトにフォーカスするのはリソースが限られている状況下では、一番合理的な選択肢だと思います。しかし、AIという武器を使って、未曾有な効率を取得できたら、選択と集中ではなく、ガンガン生産し、ジャンジャン検証するのが逆に筋かもしれません。
相手に圧倒的に勝てる武器を手にいれたときには、隠さずに一刻も早くその武器を使って勝ちに行って、相手に反応の時間を与えないことは張一鳴の心の中に、秘めている戦略なのではないでしょうか。

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以上は今回のお話でした。拙い文を最後まで読んでいただきありがとうございます。ご指摘などございましたらぜひお願いいたします。

文中に言及した「中台」ミドルエンドの概念を作ったアリババとYJキャピタルが議論するイベントを企画中です。「中台」の組織戦略をとことん聞けるので、是非こちらフォローして告知を逃さないでください@LukeLee

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