子供のためのオルセー美術館(68)7人で描いた1枚の絵・みんなびっくり!/150年前のサロン、ラサールの絵
おもしろい! いいよ、僕たち協力するよ。
ここは昔から続く伝統的な展覧会、1874年サロンの会場、
すきまなくびっしり並んだ絵を見る人で、会場は大変な混雑です。
身を乗り出して絵を見てる人、すわってじっくり見てる人もいます。
革の手袋にパラソル、エレガントなドレスで着飾った人たち
みんなが持っているあのぶあつい本はなんでしょう。
これは展覧会のカタログ。絵の説明を読みながら、展示されたたくさんの絵からお気に入りの作品を見つけます。
絵には番号が書いてあるので、それがめやすになるのです。
なになに?
今回話題の絵? No. 292
カバイヨ・ラサールは、150年前の展覧会の雰囲気や様子が、とてもよくわかる絵を描きました。
そして……
この絵には、展覧会の最初の日に、みんながあっと驚くようなしかけがあったのです。
ここに描いてある6枚の絵は全部、
ラサールと仲の良かった6人の画家が、その年のこの展覧会で、初めて発表した絵でした。
ということは、展覧会に出す前に、すでにこのラサールの絵に描いてあったということです。
それに気がついた人たちの驚いたこと。
「 No.292 の絵に描いてある6枚の絵、さっき向こうで見たぞ。なんでもうこの絵に描いてあるんだ!」
「この絵の題名だって、1874年のサロンって。今のこの展覧会のことじゃない!」
みんな目を丸くしてこの絵を見ました。
実は、この展覧会が始まる前、
6人の画家仲間が、ラサールの絵に、自分で自分の絵を描きいれたのでした。
そのあとラサールは、額縁や絵を見ている人たちを描きたして、これから始まるその年のサロンの雰囲気を本物そっくりに表現したのです。
あのカタログの No.292 ラサールの絵の説明にも、ちゃんと 6人の画家の名前がありました。
展覧会を先取りした型破りなラサールの絵、No.292 は、みんなをあっと言わせて驚かせ、大評判を巻き起こしたのです。
Camille Cabaillot-Lassalle (1839-1902)
Le Salon de 1874
1874
Paris, musée d'Orsay, don Galerie Ary Jan et Segoura Fine Art, 2023
Salon, 1874, n° 292
カミーユ・カバイヨ=ラサール
1874年のサロン
1874
パリ、オルセー美術館、ギャルリー・アリー・ジャンとセグラ・ファイン・アート 2023年に新規寄贈作品
サロン1874年、No.292号
Eugène Petit, Chrysanthèmes et Pêches
Jules Jacques Veyrassat, Charrette en Forêt
Ernest Guillemer, Vallée de Franchard, Fontainebleau
Jean-Baptiste-Camille Corot, Le Soir
Léon Richet, Moulin à Vent, en Picardie
Henriette Browne, Portrait de M.E.S
ウジェーヌ・プティ 菊と桃
ジュール・ジャック・ヴェイラサ 森の荷車
アーネスト・ギルメール フランシャール渓谷、フォンテーヌブロー
ジャン=バティスト=カミーユ・コロー 夕べ
レオン・リシェ ピカルディの風車
アンリエット・ブラウン M.E.Sの肖像
お読みいただきありがとうございました。
昨年2023年にオルセー美術館に新規納入されたラサールの絵をご紹介しました。
伝統のサロンでも、このような7人の名手による合作が許されたのには驚きました。折しも、この1874年、印象派第一回展覧会が開催の年ですから、マンネリ化の隠せない古い体質のサロンにセンセーションを巻き起こしたのもうなずけます。
それにしても仲の良い6人の画家たちがラサールのアトリエに出向いて、それぞれ自分の作品のミニチュアを描いたというのですから、なんとも微笑ましい。
展覧会初日に訪れる人々の驚愕を想像しつつ、ワインでも飲みながら楽しんで描いたのでしょうか。
現在のオルセー美術館印象派150周年企画展にて。印象派展に対して、1874年当時のサロンの比較再現
サロン1874年カタログ
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