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公共訴訟支援に特化したウェブプラットフォーム「CALL4」で、「セックスワークにも給付金を」訴訟のクラウドファンディングが開始

新型コロナウイルス感染症関連の助成金から、セックスワーカーが外された

2020年4月頃、厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症による小学校休業対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)支給要領」において、風俗営業者、いわゆるセックスワーカーに従事する方が支給要領から除外されていることが問題になりました。

また、従業員の雇用を維持するための「雇用調整助成金」も、風俗業界は支援から除外されています。

その後、要望を受けて4月に運用の見直しがなされ、性風俗業界も助成対象になりました。
しかし、「持続化給付金」や「家賃支給給付金」などの支援については2020年9月上旬現在も除外されたままになっています。

CALL4にて公共訴訟のクラウドファンディングが開始

その「持続化給付金」と「家賃支給給付金」から風俗営業者が除外されていることに関して、2020年8月下旬に国を相手取った公共訴訟のクラウドファンディングが開始されました。
(期間は2020年11月24日まで)

これについては複数のメディアで取り上げられ、(本訴訟の弁護団が調査・把握している限り)日本発の持続化給付金の公共訴訟ということで話題になっています。

公共訴訟支援に特化したウェブプラットフォームCALL4(コールフォー)(運営:Citizen's Platform for Justice、代表:谷口太規)は、「持続化給付金」と「家賃支援給付金」支給対象外となったことを職業差別とし、日本初となる(※)国を相手取った公共訴訟に向けて訴訟資金を集める性風俗事業経営者をサポートすべく2020年8月27日よりクラウドファンディングを開始します。
※本訴訟の弁護団で調査·把握している限り、日本初の持続化給付金等の公共訴訟として提訴予定

PRTIMES(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000045445.html)より

公共訴訟の内容

原告の方の訴えは以下の2点になります。

①本来は風俗店にも平等に支払われるべき持続化給付金と家賃支援給付金を支払うよう国に請求する訴え
②差別的な取り扱いを受け、訴訟せざるを得なくなったことによる費用と慰謝料も賠償請求いたします。

「性風俗産業は国に差別されてもしょうがない?」
性風俗産業経営のリアル

CALL4に掲載されているストーリー「性風俗産業は国に差別されてもしょうがない?」では、性風俗産業で経営を営んでいる方のリアルと、新型コロナウイルスの影響でひっ迫した状況にあることがまざまざと感じられました。

(一部抜粋)
原告はこの半年の状況を話す。

「お店は3月から徐々に売り上げが減り出して、4月は休業要請に応えて休業したので、売り上げは8割減まで落ち込みました。5月以降は7割減、6割減と推移し、やっと7月に3割減くらいにまで戻したところです」

「お客さんも来ないし、お店で働くキャストも来られなくなった。昼の仕事に移る人もいたし、兼業している人の中にはお休みする人も多かった。出稼ぎで遠方から来ていた人も、遠距離の移動が難しくなった。緊急事態宣言の前後は世間がピリピリしていて、『出勤したら叩かれるのでは』と不安になるキャストもいました」

キャストたちを束ねて営業する事業者の経営が厳しくなることで、働くキャストの側も厳しい状態になってきていると原告は言う。

COVID-19関連の助成金の中には、従業員の雇用を維持するための「雇用調整助成金」や、一斉休校の影響を受けた保護者を支援する「小学校休業等対応助成金」もあったが、これらの助成金も、当初は、性風俗業界を「公金を投じるのにふさわしくない」と支援から除外していた。

ところが要望を受けて4月に運用の見直しがなされ、性風俗業界も助成対象になった。

「追い詰められていたときだったので、見直しがあってとても助かりました。おかげで従業員に給料を払えたし、お店を閉めなくて済んだ。特に雇用調整助成金には、経営的にも精神的にもかなり救われました」

とはいえ、経営のためには人件費だけでなく、広告費や家賃、車代、交通費、遠方からの出稼ぎキャストの寮費などがかかる。雇用調整助成金だけではとうてい売り上げ減を埋められない。

「第一波は何とか、しのいだけれど、第二波、第三波を思うとどうなるか。今後の経営の判断がすごく厳しい。私はできるだけ長く、スタッフやキャストとの契約を切らずに続けたいと思っているけど、感染が出るのも怖い。自分で休業の決断をするのが辛いです」

「まわりでも何十件と閉店しました。グループ店の支店がなくなったところもあります。やっぱり一番大変なときに、まとまった金額が給付される持続化給付金と家賃の支援が受けられなかったことは大きかった」

全国で持続化給付金の給付対象外とされたのは、性風俗業界のほか、公共法人、政治団体、宗教団体のみだった。
(一部抜粋)
「今回のことでまず思ったのは、もらえなかった理由が分からない、ということでした」

「国会などで言われているのは、反社会勢力とつながっていて、犯罪が多く起こっているとか。これまでの給付金との整合性とかです。でも私の店は反社会勢力ともつながってない」

性風俗業界の事業であることを理由に制限を受けたことは、今までもあったと原告はいう。

「たとえば、銀行の法人口座が作れないとか、審査に落ちるとか。ほかにも、電話応対を勉強したいなと思って電話応対のセミナーに申し込んだときに、『風俗業の人は参加できません』と断られたこともあった。そのときにはちょっとショックでしたが、企業側にも選ぶ自由はあるだろうと納得はしていました。うちの店だってお客さんを選びますし」

「でも、国がそういうことをするというのは話が違うよなと思いました。私は納税しているし、国民だし。適法に設立した法人だし」

個人的な考えを述べるならば、いち法人として法に則って営業しているにも関わらず「風俗業だから」という理由で法人口座の開設を断られたり、補助金の対象外だったり、ビジネス系のセミナーに断られることは非常に理不尽なことであると思っています。

にも関わらず、そうした理不尽な、偏見に基づいた対応がまかり通っているのは、社会の偏見と、日本という国がそうした偏見を正当化するような制度の運用をおこなっているからであると考えています。

国は、コロナ給付の対象から性風俗業等を除外する理由として、「国民の理解が得られない」ことを挙げました。

いや、公平・公正であるべき国がそれでいいの?
社会に性風俗に対する偏見がある状態で、「国民の理解」を判断の根拠にしていいの? 

少なくとも、私はその判断をいいとも、適当であるとも思いません。

この訴訟は「性風俗業界に対するスティグマを取り払おうとする訴訟」であり、「私たちの中にもあるスティグマを明らかにする訴訟」である

ストーリーでは、「性風俗に対するスティグマ(属性に対する偏見などの負の烙印)」について繰り返し言及がなされていました。

「風俗業界で働くことに対しては、今までずっと、もやもやした感情がありました。この仕事はしてていいんだろうか、とか、この仕事してるのに普通に暮らしていいんだろうか、とか。そんなことをずっと思っていました」

「でも、自分の中にある『仕事に対するもやもや』と、『国の決定』がつながるとは、考えていなかったんです。国の決定って、公平なものだと思っていたから。『いかがわしい』というような理由で何かを決定することはないと思っていたから」

国の決定と、社会(に生きる個人個人)に根差している偏見を繋げるものとして、「国民の理解が得られない」という言葉は象徴的であると、私は感じています。

特定の職業に対する社会の偏見を国が吸い上げ、それを政策・制度の意思決定の材料にする。
それがいかに理不尽で不合理であろうとも、今まではそれが「いつものことだ」と許されてきてしまっていました。

それに一石を投じる試みであるという点で、今回の公共訴訟は画期的なものであると考えています。
裁判が上手くいって欲しいのは勿論ですが、もし上手くいかなかったとしても、公共訴訟の記録が残ることは素晴らしいことだと。

経済的に余裕が出来たら、私も少しばかり寄付させて頂きたいなと思っています。

原告は裁判にあたって、以下のことを述べています。

「私は、『この扱いは差別なのか』という個人的な疑問に答えがほしいと思っていた。でも、差別って、大多数が決めたのであれば許されるものではないんだな、一人でも戦っていいんだなと思った。私もそこに違和感を持っていたんだなと思った」

「声を上げていいのだと思った。『この扱いは許されない差別なのだ』ということを、裁判を通じてはっきりさせたいと思った。そして、『業界を合理的な根拠もなく差別しないでほしい』という思いに行き着きました」

全ての職業を平等に取り扱うことが公正・公平なありようであると考えますし、困った時にいかなる事業主にも平等に社会のセーフティネットが利用できるようになって欲しいですね。
裁判がよい結果になることを願っています。

🍋CALL4「セックスワークにも給付金を」訴訟関連リンク

クラウドファンディング:「セックスワークにも給付金を」訴訟 期間:2020年11月24日まで

ストーリー「性風俗産業は国に差別されてもしょうがない?」(前編)



今まで頂いたサポート、嬉しすぎてまだ使えてません(笑) note記事を書く資料や外食レポに使えたらなと思っていますが、実際どう使うかは思案中です←