見出し画像

樹原涼子ピアノランドフェスティバル レポート

音楽の喜びを感じてもらうのが音楽家の仕事なら、
今、それができた喜びでいっぱいだ。
コロナ禍でも諦めずに「ピアノランドフェスティバル」を開いてよかった。
一度諦めたら、翌年復活させるのはとても大変なこと。
諦めなかったから、10月に世に出る新たなシリーズ『ピアノランドプラス』から
新曲を初演することができた。
一歩でも前へ進めたのは、応援してくれる皆さんのおかげに他ならない。

ピアニスト小原孝さんと、作曲家で次男の樹原孝之介と共に
3人だけのピアノランドフェスティバルが感動のうちに幕を下ろした。
今は配信のための編集作業真っ只中で、
全てのスタッフ、協力してくれた方々に感謝を込めて
興奮冷めやらぬピアノランドフェスティバルについてレポートしたい。

第一部は、新旧のピアノランド対決?

1991年以来、ピアノランドシリーズはいつの間にか190万部になるのだそう。
20代で使命感を持って書いた曲の数々は音楽之友社のピアノ教本として
多くの人に愛されて32年目となる。

そして、2022年10月に新しいシリーズ『ピアノランドプラス』が誕生する。
すでにロングセラーである前作の存在が大きく、
これまではそれを広め、補強する教材や大人のための曲を書いてきたけれど、
いよいよもう一度、子どものためのメソッドに取り掛かる時が来た。

今年のピアノランドフェスティバルの最初は、
『ピアノランド①〜⑤』と『ピアノランドプラス 四季のうた』のそれぞれから、
季節にちなんだ曲を選び演奏していく、
新旧のピアノランド対決のようなコーナーになった。
長年愛されてきた曲たちに、新しい曲たちは対抗できるのか?

どちらも自分の曲とは言え、新曲が昔の曲には負けるわけにはいかないし、
また、簡単に負けるようなピアノランドでも困る。
さて、その行方は?
と、心の中にはそんな思いもあって収録当日を迎えた。

23年目のピアノランドフェスティバル
開催にあたっての挨拶
写真は全て、@ヒダキトモコ
ピアノランドフェスティバルのパートナー
小原孝さんと
『ピアノランド』の季節の曲を楽しく連弾後、
『ピアノランドプラス 四季のうた』から10曲を歌いながら連弾
生徒パートの後ろを通って、先生が移動して伴奏する「思い出の夏休み」
様々な音域を使って演奏を楽しむ


弾き終わったときに思ったことは、
作曲者としてどちらも私にとって大切な作品群だということだ。
どちらかではなく、どちらも、それぞれに強烈な個性を持っている。
新しい境地が開けたかもしれない、と感じられたことは嬉しいが、
答えは、出版後に皆さんが決めてくれるのだろうと思う。

ここでは音をお聞きいただけないのが残念だが、
ヒダキトモコさんの写真から音楽が溢れそうだ。

新刊からのソロは、物語付きで

楽譜『ピアノランドプラス 四季のうた』では「四季のうた」10曲に続いて
6曲のピアノソロを物語で紡いでいく形になる。
フェスティバルでは時間の都合もあり、初めの4曲を選んだ。

どんな物語かは楽譜の出版を待っていただくとして、
物語の冒頭の一文を紹介すると……

ある日僕は気がついた。鏡に手を伸ばしたら、そのまま中へ入っていけることに!

『ピアノランドプラス 四季のうた』「僕と王子の物語」(仮)より
  1. 真夜中のお出かけ

  2. 怖くないよ

  3. 魔法の館

  4. 小さな王女のメヌエット (当日の演奏はここまで)

  5. 王子の冒険

  6. 花の饗宴

恐る恐る鏡の中に入っていく主人公のドキドキは……
1曲目の「真夜中のお出かけ」では、楽譜中に膝や腰を叩く指示がある
さぁ、主人公はどうなるのだろう?


こうして、少々現代曲っぽい響きや(全音音階で1曲ペダルを踏んだままとか)
今の感覚でバロックスタイルを取り入れた曲とか、
ソロでも様々な様式を経験できる面白い曲を書いたつもりだ。
音楽は、弾く人も聴く人も楽しめるのが第一だ。
表現したい曲でこそテクニックも伸びていく。

「僕と王子の物語」(←6曲の仮タイトル)は私の中でどんどん膨らんで
絵本や児童書を書きたい気持ちがムクムクと湧き上がるくらい
今、私自身が楽しんでいる。
それを、小原さんの見事な解釈と繊細な音色で初演していただけて嬉しい。


第二部 小原さんのオリジナル曲から

これまでのピアノランドフェスティバル小原孝ソロコーナーでは
NHKFM「弾き語りフォーユー」形式でクラシックやポップスを演奏されてきた。でも、「今年は、僕もオリジナル曲にしてみようかな」という訳で
『ようこそ ピアノアイランド』小原孝作曲(カワイ出版)から
レッスンで使える「大相撲#場所」他楽しい曲たちが披露された。


コーナー最後は、YouTubeでも人気、お馴染み「スタニアンストリート」

小原さんもオリジナルを演奏された結果、
他はもちろん樹原涼子の作詞作曲尽くしのピアノランドフェスティバルなので、
今年は全曲出演者の作品のみの演奏会になってしまった。
なんだかめでたい💐


6手連弾の楽しみ

続いて、6手連弾を3曲続けて。

  1. 王宮の音楽 『ピアノランド③』より6手連弾の定番曲

  2. 聴いているよ 『ピアノランドプラス 四季のうた』より 
    5拍子の旋律短音階を使った、カノン風の美しくもの悲しい曲

  3. 雲に乗って 『ピアノランドプラス 四季のうた』より 
    楽しい3拍子で、最後はアッチェレランドで!

「王宮の音楽」のエンディング、キマるととてもいい気分!
「聴いているよ」は大人にも弾いてほしい6手連弾曲だ


Liokoの部屋 トークと演奏

最後のコーナーは、3人でゆっくり話しながら代わる代わる弾いていくコーナー。
私は、このコーナーがとても楽しかった。
孝之介から見た先生としての小原孝さん、
小原さんから見た弟子としての孝之介。
そして、母としての樹原涼子は? 等々話は尽きない。

今だから、恩師や母に言えることもある
ずっと変わらず、いつも穏やかで朗らかな小原さん


トークの後、まずは樹原涼子ピアノ曲集を出版年代順に、3曲続けての演奏。

  1. 時の砂 『こころの小箱』より 孝之介

  2. 夢 『夢の中の夢』より 小原

  3. やさしいまなざし 『やさしいまなざし』より 涼子

ピアノだけの音色で、それぞれが何かを語っているのを聴く。
静謐な時が過ぎていくのをステージの上で味わうって、なんていい時間だろう。

「やさしいまなざし」を弾いていると、無我の境地になる


次は、『風 巡る』という曲集から、小原さんがソロで「夢見る妖精」を、
私は小原さんのピアノで「君が笑えるように」を歌った。
コロナ禍で、そして毎日のように続く自然災害の中で生きている私たち皆、
1日も早く、心から笑える日が来ることを願いながら……。

師弟ならではのデュオ 〜 アンコール

そして、この日の目玉となったのは小原さんと孝之介の師弟コンビによる連弾
『時の旅』からの「ゆらぎ」の演奏だ。
小原さん仕込みの孝之介の音色は小原さんのセコンドとよく溶け合って、けれど
全く違う個性を持って歌い合う二人の音楽は不思議と調和して「揺らぐ」。

書いた自分が予想していない美しさや面白さ、深さに出逢って、
作曲家としての醍醐味を味わえた瞬間でもあった。

遠藤湖舟さんの写真「ゆらぎ」を使わせていただいた
連弾組曲集『時の旅』の表紙


組曲「美しい時間」の1曲め「ゆらぎ」を聴き
二人の全曲演奏を聴きたくなった


この後、第二部の最後の曲は息子たちが小学生の頃に書いた「君は 君のままで」。
子育て中の親御さんや、今育ちつつある子どもたちに聴いてほしい歌だ。
誰もが親になった瞬間から一生懸命だ。
上手くいかないことも、間違いもいっぱいある。
けれど、その全てが尊い、と今思う。

プログラム


アンコールをいただき、小原孝さんに捧げた『ラプソディ第2番』(ソロと連弾2バージョンで出版)の連弾版を、初演以来久しぶりに演奏した。
今回は私がセコンドだったけれど、いつかパートチェンジもしてみたい。
演奏するとちょっとハマる曲なので、
皆さんもぜひ、演奏してみてください!

『ラプソディ第1番』に続いて出版した『ラプソディ第2番』

お別れに、小原さん作詞の「願い〜ピアノランド31周年」を3人で。
昨年の30周年に作詞していただいたものを「31周年」にして歌ったのだけれど、
皆さんへの感謝の気持ちをステキに表現した歌詞で
歌っているとじ〜んとしてツーンとしてくる。

曲先で書いた「願い〜クリスマスの日に」が、
小原さんの作詞で何度も違う曲に生まれ変わっていくのを目の当たりにして
作詞の才能にも改めて驚く。
(2.願い~大切な日に→ 3.願い~震災を乗り越えて→4.願い~ピアノランド30周年)

配信で、ぜひお聴きください

会場には関係者、取材、そしてご支援くださった方が集い、
少ないながらも昨年までの無観客配信とは全く違う手応えを感じることができた。

と同時に、「それでも遠くにいる方に伝えたい!」という燃えるようなエネルギーが原動力となり、配信コンサートとしての計画も実現できた。

遠くにいても、『ピアノランド』を、
そして秋に完成する『ピアノランドプラス 四季のうた』を、
そして大人のために書いた数々のピアノ曲たちを
ご家族で楽しんでいただけますように!

配信は、8/11~9/30まで、何度もご覧いただけます。


来年こそは、多くの方に生でお会いできますように!

ピアノランドフェスティバルで演奏した曲たちは、
下記の出版物のページをご覧ください。


写真は全てヒダキトモコさん!
ありがとうございました♡

このピアノランドフェスティバルのリハーサルの日に感じたことを
こちらで綴っているのでよかったらどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?