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新刊楽譜『ラプソディ第2番』が、届いた!

いよいよ本日(8/6)店頭に並びます。
ピアノ連弾&ソロ『ラプソディ第2番』の見本が届きました。

新刊の見本が届いたときの喜びはとても大きい。
1冊ごとに出版までのドラマがあって、
何冊目であっても感動が薄れるということはありません。

本間ちひろさんの表紙。
私の曲集の表紙を数多く手がけてもらっていますが、
中でも、この絵は一番好きです。


ラプソディ 書影


webページで調べたら、楽譜だけで多分30冊くらい出版してきました。
本人は楽譜のつもりで書いても「書籍」として
カウントされるものもあるから冊数は時々迷うのだけど。
(あ、こういうことも今度書いてみたら面白いのかも)

表紙を見ると、「その年にはこの楽譜を出版した」という
強烈な思い出が蘇ってきます。
「保育園のお迎え時間までに急いで校正しよう!」
「寝かせつけたら作曲のつづきを……」と、
男の子二人を育てながらの日々が思い出されたり。


『ピアノランドたのしいテクニック上中下』を書いていた頃は、
5分とゆっくりピアノの前に座れなかったのに
どうやって書いていたんだろう。
そうそう、今はウルトラマンと怪獣で戦いごっこしてるから
ちょっとの間書けるかな、と
リビングのピアノの前を通るたびに何小節か書いては、
息子たちの相手をして、手抜き家事をして。

若くて体力があったかったからできたのかなぁ。


欲張りな、私

4小節とか8小節の長さ(短さ)に
練習の目的をいくつも(1つでは気がすまない)ギュッと詰め込んで
いかに楽しい課題にするか!という理想は
私を奮い立たせました。

だって、退屈で役に立つ練習は山ほどあるのだから、
面白くて役に立つ練習があれば
ピアノを習う子供達はもっと幸せになるはず。

私は、1粒で2度3度もおいしいテクニック課題を書くんだ。

そう心に決めて頑張っていた懐かしい日々。

息子たちが保育園に通っていた頃は、
ピアノランドセミナーの出張がとても多くて
(そのおかげで日本中に広まったのだけど)
新幹線から在来線に乗り換えながら
「我が子をおいてまで、
 他所の子のピアノ上達のために出かけなくちゃいけない?」
と目を真っ赤にして自問自答したこともありました。


あ、昔の楽譜の話ではなく、新刊の話を書くんじゃない?

そうです、そうなんですけど、もう少しお待ちください。
ちゃんと繋がってます。

この頃、あまりにも忙しかったから、
ピアノ教室の発表会を開くときに自分のソロ曲の練習時間がなくて、
「でも、先生が演奏しない発表会ってダメでしょ、若いのに!」
と自分を叱咤激励して頑張った結論は、
〈即興演奏をする〉でした。

多分、この手は2回くらい使ったと思うのですが、
1回は全くの即興で、出たとこ勝負。
弾き終わった瞬間、ホッとしてどんな曲だったか忘れてしまいましたが。

もう1回は、当時気に入ったテーマでよく遊んでいて、
それを使っての即興演奏。

この演奏を母がとても気に入って、
こう言ってくれました。
「私はこういうのが好き。
 あなたの“子供達へのバラード”もそうだけど、
 どんな曲なのか、言いたいことがが聴く人にパッと伝わるのがいい」


母は、とてもハッキリとした意見を持つ人で
合わない部分も沢山あったのですが、
音楽については母の感性に一目置いていたので、
私はなんとか曲を完成させようと試みました。

時間を置いて2回ほどチャレンジするも
なぜか上手くいかなくて、
このテーマはいつの間にか冷凍保存となってしまいました。
こちん。

そして、長い年月忘れ去られていたのです。


忘れられた曲の、復活劇

ところが、2019年2月に小原孝さんとデュオコンサートを開いたとき、
8年前に出版した『ラプソディ第1番』(連弾)を演奏したところ、
ピアノの先生やファンの皆さんから
「第2番を聴きたい!」との声援が止まず、
「わかった! 書くから!『ラプソディ第2番』書きます」
と、ステージ上で約束してしまったのです。

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こちらは、1番の楽譜。
同じく本間ちひろさんの表紙です。


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あの声援は本当に作曲家として嬉しく、有難いものでした。
待っていてくれる人がいるというのは
信じられないくらい素晴らしいことでもありますが、
上手くいかないときにはなかなかにプレッシャーにもなります。

約束はしたもののいっこうにいいアイディアがわかず、
初演予定の夏のピアノランドフェスティバルが迫って来る……。

担当編集者の山本美由紀さんが昨年春に訪ねてくれたときにも
まだ1小節も書けていなくて
苦し紛れにふと、「昔書いた曲なんだけど」とさわりを演奏した途端、
「先生、これです! これでいきましょう!」と
大きなキラキラした瞳で大喜びしてくれたのには驚きました。
「え、ほんとにこれでいいの?」

ですが、担当編集者が気に入ってくれたということは、
もしかして、ほんとにこれでいけるかも。
そうだ、あの母も気に入っていた曲なんだから。


本当に、よかった。

そうなんです。
それが、今回の『ラプソディ第2番』のテーマです。
何年も忘れ去られて楽譜も見つからないのに、
音楽のディティールまでも私のなかに眠っていました。

そんなわけで、昨年の春はこれを連弾作品にすべく死力を尽くし、
小原孝さんと夏に初演を果たすことができました。
鳴り止まない拍手の中、本当に嬉しかったのは言うまでもありません。


いよいよ、出版の時が来た!

そして、昨年連弾で初演したけれど元々はソロの即興、
「一人でも二人でも演奏できる形にして
 2020年のピアノランドフェスティバルでソロ初演と同時に出版しよう!」
と、私なりに頑張ったのが『ラプソディ第2番』

だから、途中凍っていたとはいえ、
私の作品のなかでは形になるまで最長時間を要した思い入れのある曲。
喜びも一入(ひとしお)です。


浄書が上がってきたら
弾きにくいところがないかも小原さんにチェックしてもらって、
連弾に負けないソロバージョンにしようと
何度も何度も見直しました。

8月20日のピアノランドフェスティバル配信コンサートで
小原さんのソロ版の初演を聴けるのかと思うと、
この2週間がとてつもなく長く感じます。


実は、表紙にも、とても長いドラマがあって、
それはまた書きますね。


「ラプソディ」の意味

「ラプソディ」は多くの作曲家が書いていますが、
日本語では「狂詩曲」と言われています。
自由な形式で民族的な香りがする作品が多いのですが、
私にとってのラプソディは
人生で出会うさまざまな出来事によって揺れ動く
私たちの心の詩、歌、物語。
ときに情熱的に、ときに穏やかに、ときに切なく狂おしく
人生の旅はつづきます。

連弾とソロとでは、演奏する人の心にも大きな変化がある曲です。
連弾では、役割を分けあい、聴きあい、影響しあって
音楽が紡がれていきます。

ソロでは、連弾を1つにまとめたというのではなく、
凝縮してより自由に表現できる面白さも生まれました。

さぁ、今日は、この曲の産みの苦しみから解放されて
演奏する人のものとなる、旅立ちの日。

今夜は夫と乾杯しよう。


最後に、どんな曲かチラッとだけ聴きたい方は
ピアノランドフェスティバルの予告動画でチラッと聴くことができます。


樹原涼子のwebページでの案内はこちらです。


『ラプソディ第2番』の初演(ソロ)、お聴きいただけたら幸いです!

そして、皆さんもご自宅のピアノで演奏していただけますように。




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