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おかえりモネと、朝ドラと、会社の固定席

おかえりモネ、みていますか?自分探し系朝ドラの中でも最高に自分探ししていて、朝ドラではお馴染みの親戚感をしっかり持たせてくれるドラマ。朝ドラは、私が見始めて以降(あまちゃん以降)基本的にヒロインみんな自分探ししてます。でも、モネちゃんほどのゼロベースからの自分探しはなかなかない。半分、青い のすずめちゃんですら、方向性がないという方向性があった。

あんなにゆったりと何者でもない自分のことを考えられるなんて。モネちゃんには羨ましさと、つらいよね、でも頑張れ、ていう見守りの気持ちが湧いてきて、見てる私の親戚感がすごい。

今回の朝ドラをネタに職場の先輩方と朝ドラの話がしたい。もうあんな時間持てないんだろうか。リモートワークだし。フリーアドレスだし。固定席で生まれてたコミュニケーションが懐かしい。

会社員を始めてから長らくずっと固定席だった。新卒の頃は山田課長(仮名)に目をつけられて、席替えしてもずっと課長の隣か向かいが私の席だった。メールは全部課長をCCに入れて、送るたび、

「ねぇちょっとこのメールなんだけど、この言葉使いだめだから」

とか、電話に出ては、

「あの言い方はだめ。この資料持ってもう一回電話しなさい」

とか、それはもういちいち小言を言われた。なんでこんなに一挙手一投足にいちゃもんつけるわけ?しかも私にだけ!!と思ってた。先輩が同じことをしても何も言わなかったのである。

でも一年たったら、ぴたっと言われなくなった。「もう、あなた大丈夫だから。展示部の鈴木ちゃん(仮名)もあの子は大丈夫って言ってた」って言われて。まわりには、「あの山田学校を卒業した子」と言われた。山田学校卒は上に2人いて、2人とも一目置かれている人たちだったから、お仲間入りしたのが嬉しかった。

後から聞いたところでは、私は入社してすぐの時に片道2時間通勤と緊張による疲労により(多分)、お昼休みとは言えデスクに突っ伏して寝ていたことがたびたびあるらしく(記憶にない)、山田学校始まって以来の大型新人と噂されていたらしい。だから上の2人が私と同じ教育だったかはわからない。山田課長も私には腕がなっていたのであろう。

前提はともかく、山田学校を卒業してからはパートナーのように、何でも相談させてもらい、課長も何でも相談してきて、もちろん教えてもらうことの方が多かったけど、今思えば不思議なくらい、対等にみてもらっていた。

異動して課長の下を離れて、その後思うところあって転職を決めた。課長には一番に伝えた。会社的には、いわゆる、手塩にかけて育ててようやく物になった頃、だったと思う。反対されたり、怒られたりすることを覚悟していた。

「私はいいと思う。挑戦するために辞めるなら止めない。あなたは大丈夫」

山田課長はそう言ってくれた。隅から隅まで口出しする必要があった新人ですよ私は。そしてご指導はたった一年。身につけきれなかったこともある。でも、大丈夫と言ってくれた。

これは、会社を辞めてから今までずっと、新しいことを始める時、自信を失いそうな時、思いどおりにいかない時、支えになっている。

あの時の課長の歳に近づいてきて(恐怖)、課長だって完璧じゃなかったことがわかる。そして、新人を教えるのは、隅々まで口を出すのは、決して楽なものではないし、どちらかと言えば面倒くさいということも。でも、今しかない、と思ってくれたんだということも。

山田学校時代、朝方課長のまわりに先輩方が来て、朝ドラの話でひとしきり盛り上がっていた。

私は家を出るのが早くて(なんせ片道2時間)実は当時朝ドラが見られなかったんだけど、先輩方があーだこーだと、主人公が心配だだの、あいつのあの言い方はないだの、あの生き方はリスペクトだの、主人公の親戚かのように話すのを聞くのが楽しくて、へー、そうなんですねーと言うだけなのに話に入れてもらっていた。始業の頃には茶々丸ちゃんも若いんだから頑張らなくちゃ、私たちも頑張ろう、的に解散していく。

それで今、私は毎日在宅勤務。出社したとしても今の会社はフリーアドレスだから、同じ顔ぶれで毎朝似たような話をすることなんてない。中途が多いうちの会社では、もちろん学校なんて存在しないから、みんなそれぞれのやり方で仕事をしてる。へー!そんな感じで!とびっくりするようなやり方の人もいるけど、誰も指摘はしない。

私は私で、山田学校で教わったとおり、「について、いかがでしょうか」とは言わないし(何を聞きたいのか明確にせよ。丸投げするような言い方をするな)、「言った通り」とは書かないし(通りはストリートだけ)、「させていただく」は極力使わない(主体的に動いていることを忘れないようにしなさい)。

今の環境は決して悪くない。スパルタ指導は最近では問題だろうし、私だって最初からのびのび褒められて仕事をしていたらもっと伸びたかもしれない。

けど、おかえりモネで、何者でもないことに焦りながらも少しずつ進んでいくモネちゃんを観ていると、固定席で山田課長から逃げられなかった頃が懐かしくなる。ああいう風に、何もできない私をなんとはなしに誰かが見守ってくれていたことがあったなぁ、と思う。そして、大丈夫と励ましてくれていたんだなぁと。

私も歳を取りましたよーー。西島秀俊が出る時間は特に釘付けですよーー、え?内野派ですか?ていうかとにかくモネ、頑張れ!って思いますよねーーー!19歳、何だってできますよねーーー!

的な会話が、先輩方としたいなぁぁ、とおかえりモネを観ながら、感じています。

コロナが終わったら、飲みにお誘いしなくては!





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