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校内居場所カフェ「ようこそカフェ」プロジェクト

高校生の社会的自立を支える校内居場所カフェ「ようこそカフェ」で「つながり」と「体験」を届けたい!

定時制に通う高校生の社会的自立を支える校内居場所カフェ「ようこそカフェ」。毎週水曜日、校内のフリースペースにオープンするカフェでは、「無料のお菓子・ドリンク」「リラックスしてくつろげる場所」「ちょっとした悩みから卒業後の進路まで相談に乗ってくれるスタッフ」による「交流相談」の場づくりが進められています。
オープンから2年、毎回200人近い高校生が立ち寄り、無料で提供されるドリンクやお菓子、軽食を片手に、友人とおしゃべりしたり、大学生や社会人のスタッフ、地域の大人と交流する中で、自立に向けての「つながり」や「体験」を少しづつ積み重ねています。

しかし、運営にかかる費用は公的な助成金や高校PTAからの寄付でまかなっており、週1回・通年でカフェを実施するためには、お菓子やドリンク、軽食にかかる費用が足りていないのが現状です。進路未決定や中退を予防し、卒業後の社会的自立を支えるためのカフェの継続にご支援・ご協力をお願い致します。

●はじめに:ようこそカフェとは?

皆さん、はじめまして。プロジェクトオーナーの公益財団法人よこはまユースの尾崎万里奈です。地域の青少年育成活動を支援する公益財団法人よこはまユースの職員として、「ようこそカフェ」の立ち上げからおよそ2年にわたりカフェ運営に関わってきました。
「ようこそカフェ」は、横浜市南区にある横浜市立横浜総合高校で週1回オープンしている高校生のための無料のカフェです。週1回、水曜日のお昼12時から夕方5時30分、校内にあるフリースペースでカフェをオープンしています。毎回200人近い高校生がカフェに訪れ、無料で提供されるドリンクやお菓子、軽食を片手に、友人とおしゃべりしたり、勉強したり、大学生や社会人のスタッフ、地域の大人と交流する中で、自立に向けての「つながり」や「体験」を少しづつ積み重ねています。
カフェでは、青少年育成や若者支援の分野で活動する団体のスタッフを中心に、大学生から社会人のはば広い年代のボランティアがカフェスタッフとなり、なにげない雑談やおしゃべりの中で高校生の悩みや不安に耳を傾け、直面する課題に一緒に向き合う「交流相談」の場づくりを行っています。

●プロジェクトの概要

私たちは「ようこそカフェ」の運営を通して、定時制高校に通う高校生に人との「つながり」や多様な「体験」の機会を届け、高校卒業後の社会的自立を支えていきたいと考えています。

 オープンから2年、「水曜日のカフェ」は高校生活に定着し、カフェを楽しみにしてくれる生徒も増えています。お菓子やドリンク、軽食を目的にカフェを訪れる高校生が、気が付けば常連になり、顔見知りになったスタッフと話し込んでいる様子は、カフェではお馴染みの風景です。また、カフェの取り組みを知って、ぜひ応援したい!と力を貸してくれる協力者や企業・団体とのつながりも増えてきました。

●費用面の課題ークラウドファンディングへの挑戦

一方で、運営にかかる費用は公的な助成金や高校PTAからの寄付でまかなっており、週1回・通年でカフェを実施するためには、お菓子やドリンク、軽食にかかる費用が足りていないのが現状です。
 今回のプロジェクトは、高校内の身近な「居場所」として定着しつつあるカフェを続けていくために、皆様からのご支援をお願いしたく、カフェの立ち上げから運営を支援してきた3つの団体(公益財団法人よこはまユース、NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ、NPO法人横浜メンタルサービスネットワーク)と、「校内居場所カフェ」の普及に取り組む横浜市立大学の高橋研究室、そしてカフェを主催する横浜総合高校が一緒になって立ち上げました。プロジェクトを通して、カフェの運営に必要な資金を集めるとともに、より多くの方に私たちの取り組みを知っていただき、活動に力を貸してくれる仲間を増やしていきたいと考えています。

●プロジェクト立ち上げの経緯

なぜ、定時制高校の中で無料のカフェをつくることになったのか?まずはそこからご説明したいと思います。
 「ようこそカフェ」を立ち上げるおよそ2年前、わたしは横浜市の青少年施設のスタッフとして、さまざまな子ども・若者と関わる日々を過ごしていました。施設にやってくる青少年のなかには、不安定な家庭環境や経済的困窮など様々な課題を抱え、なんとか高校進学するものの、高校に自分の「居場所」を見つけられず、半年足らずで中退してしまうケースも少なくありませんでした。

 施設でのこうした青少年との出会いをきっかけに、「高校中退者が社会との接点や居場所を失ってしまう状況を変えたい」と考えていた時、神奈川県立田奈高校の「ぴっかりカフェ」のマスター石井さんのお話を聴く機会があり、高校の中に「居場所」となる場をつくり、学校との協力しながら若者の社会的自立を支えていく「校内居場所カフェ」の取り組みに出会い、興味を持ちました。その後も「校内居場所カフェ」についてより深く学びたいと勉強会などに参加していた2015年、横浜市立大学の高橋寛人教授をきっかけに横浜市立横浜総合高校と出会いました。
 高橋教授は「高校内居場所カフェ」を軸とした自立支援を横浜市内の高校で広めたいと考え、横浜総合高校の天野校長(当時)に提案、実現への道を探る中で居場所カフェ運営を担う団体として私たち「よこはまユース」を推薦したことから「ようこそカフェ」は動き始めました。

3部制の定時制高校であり、単位制・総合学科という特長をもつ同校は、1000人以上の生徒が在籍する大規模校。生徒は自分のペースで主体的に学習に取り組める反面、クラス担任と生徒の接点は限られており、高校が生徒ひとりひとりの背景や事情を把握して支援するのが難しい状況の中で、中退や進路未定での卒業を予防することが課題となっていました。
 また、生徒の中には厳しい経済状況や不安定な家庭環境に育ち、周囲の大人から十分なサポートを得られないまま、高校卒業という社会的自立の岐路に立たされる若者も少なくありません。
 このような社会的自立に向けた課題を抱える高校生をサポートするために、学校外部の資源を最大限に活用する必要がある、と考えた天野校長や当時の進路指導部の教員たちの全面的なサポートを受けて、横浜総合高校に「校内居場所カフェ」を立ち上げることになりました。

また、同じ時期、横浜総合高校に大学生によるキャリア支援事業を提案していたNPO法人多文化共生教育かながわ(Me-net)の事務局長である高橋清樹さんと出会い、協力してカフェ運営に取り組むことになりました。高橋清樹さんとつながりのあるNPO法人横浜メンタルサービスネットワークの代表・鈴木弘美さんもカフェの意義に共感し、運営に協力してくれることになり、高校が主催する校内居場所カフェを、青少年育成や若者支援を専門とする民間団体が協力して運営する形を目指すことになりました。
 その後、およそ1年をかけて高校と運営協力団体で話し合いを重ね、校内居場所カフェの先輩である「ぴっかりカフェ」や「ぽちっとカフェ」を運営している方々にも相談しながら、横浜総合高校にあったカフェの形を模索し、およそ半年間の準備期間を経て2016年10月から「ようこそカフェ」がスタートしました。

●カフェの様子と反響

できるだけ沢山の生徒と出会うために、「すべての生徒が登校する(予定の)水曜日」、「1部の授業終了~3部の授業開始の時間帯」、「教室に向かう生徒も先生も誰もが通る渡り廊下に面したフリースペースでオープン」するなど工夫をこらした結果、「誰も来てくれなかったらどうしよう…」という私たちスタッフの不安をよそに、2016年10月5日のオープン初日から200人近い生徒が参加してくれました。

お菓子や飲み物が「無料」と聞いて最初は遠慮がちだった生徒たちも、年齢の近い大学生から社会人までの年齢も価値観も立場も異なる多彩なスタッフと交流する中で、だんだん打ち解けていき、週1回、趣味や共通の話題から、学校生活のこと、勉強のこと、人間関係のこと、将来の進路のことまで「雑談」と「相談」が入り交じったおしゃべりができる身近な「居場所」として定着していきました。
 「どうやって運営しているの?」「スタッフはボランティアですか?」など運営を心配してくれる生徒も多く、オープン当初は、まじめで礼儀正しい生徒が多い高校、という印象を持ちました。

カフェのオープンから5か月ほど経った頃、参加している生徒にちょっとしたインタビューをしてみました。
 「カフェができてどうですか?」という私の質問に対して、「カフェができてよかった」「実家よりも安心する」「カフェで話ができて発散になる」 「考え方が違う人に出会えた」 「カフェは居心地が良い。家に帰りたくない」 といった答えが返ってきました。

 カフェが生徒にとって「居心地の良い場所」になっていると聞いて嬉しい一方で、家族との関係や家庭環境に悩みをもっている生徒や安心して過ごせる場所が見つからない生徒が少なくないことも感じられました。
 また、お菓子をかばんに詰めて帰る生徒、春雨スープやインスタントのコーンスープを何度もお代わりする生徒、「今日は朝からなにも食べていない」と話す生徒など、生活面、特に食生活が心配な生徒が多く、おにぎりやおかゆなどちょっとした軽食をカフェで提供する食の支援にも取り組むようになりました。

そんな状況を知って、料理研究家の長島由佳さんとパルシステム神奈川ゆめコープさんが支援を申し出てくださり、「食育」をテーマに季節の食材を使った栄養バランスの良い簡単メニューを、カフェで提供することになりました。最初は不定期でスタートしたこの取り組みですが、今年は「ココロとカラダに美味しいcooking!」として毎週実施しています。

プロジェクトの目的/課題認識

●プロジェクト実施している中で抱いた課題認識

「ようこそカフェ」では高校生が直面するさまざまな課題が見えてきます。そして、見えてきた課題やニーズにひとつひとつ向き合い、「こんな問題があるけど、どうしたらいいかな?」、「こんなことをやってみたらどうだろう」「あそこに、こんな支援をしてくれる場所があるからつないでみよう」という具合に、運営団体のスタッフや学校の先生の間で相談しながら、ひとりひとりの生徒の支援やカフェの運営を進めていきます。

困っている時や悩んでいる時、悩みや課題が深刻であるほど身近な人には相談しにくいことは誰しも経験があると思います。カフェで出会った生徒たちは、家族や友人、学校の先生には言いづらい悩みや本音を吐き出せる場所、話を聞いてくれる人を求めていました。「高校やめたい」「学校つまらない」「将来やりたい仕事なんてない」…一見ネガティブな言葉の裏には、生徒たちが抱える悩みや課題が隠れています。この悩みや課題をそっとつぶやける場所が必要です。
 毎週水曜日を楽しみにしている生徒のひとりに、「どんな人になら相談したい?」と聞いてみたことがあります。生徒の答えは、「よく知らないひとに話せるわけないじゃん!」という当たり前の一言でした。
 自分の悩みや課題を言葉にして人に伝えるのは、大人でも簡単ではありません。その人をよく知らなければ猶更です。何かあった時に「相談できる相手」になるためには、お互いを知り合うための場と時間が必要です。そのため、校内居場所カフェは週1回程度のペースで、継続的に実施する必要があると感じています。

●次のステップ

ようこそカフェは高校生にとって身近な「居場所」として、定着しつつあります。
 私たちは次のステップとして、カフェでさまざまな体験(例えば仕事体験や学びの体験)の機会を提供していきたいと考えています。高校卒業あるいは中途退学によって学校を離れた若者たちは、進学や就職などさまざまな進路を経て社会的自立へと向かっていきます。しかし、学校から仕事へと移行していくことは、経験値の少ない若者にとって時に困難であり、学校を離れたものの、仕事にたどり着けず、行き場を失ってしまう若者も少なくありません。そこで、カフェを拠点に企業や団体など地域の社会資源と学校がつながる場をつくることで、高校生と社会の接点を生み出し、高校在学中にさまざまな「体験」の機会を提供していきたいと考えています。

プロジェクトの達成目標/創出効果/成果物

●プロジェクトの達成目標(短期・中期・長期目標)/創出効果/成果物
≪短期目標≫
・身近な「居場所」で話をきいてもらえる、相談の機会を増やす
・定時制高校を中退・進路未定で卒業する高校生を減らす
・高校生が多様なひとや体験と出会う機会を増やすことで、価値観を広げ、進路選択の幅を広げる
≪中期目標≫
・高校生の課題や現状を発信することで、若者支援や高校生の社会的自立に関心を持つ人が増える
・高校生の就業体験やボランティア体験の受入れ先が増える
・校内居場所カフェを拠点として、学校と地域の接点を増える
≪長期目標≫
・地域や社会全体で高校生の社会的自立を支える活動が生まれる
・校内居場所カフェが学校と地域をつなぐ拠点として制度化され、学校が社会資源を活用する取り組みが増える

≪創出効果≫
・身近な「居場所」&相談の場となるカフェの定期的な開催(週1回程度):年間30回
・カフェに参加する生徒の人数(年間延べ):6000人以上
・中退率の低下:8.9%(H28年10.1%)
・カフェでの交流相談を通して、生徒の相談ニーズを幅広く受け止める体制をつくり、傾聴や雑談によって自己解決に向かうことができる課題と専門家による相談支援を必要とする課題を選り分ける。後者については、高校内に配置された相談員や連携団体、その他関係機関と連携し、集中的に支援することで中退や進路未定での卒業を予防する。
・ボランティアや地域企業・NPO団体など多様なひと・団体の協力を得ることで、食育やボランティア活動、就業体験など多様な体験の機会を提供し、生徒の職業観を養う。学校と地域をつなぐインフラとしての機能を発揮する。

プロジェクト構成メンバー/経歴

□プロジェクトオーナー:尾崎 万里奈(公益財団法人よこはまユース 事業企画課)
□プロジェクトメンバー:
小市 聡(横浜市立横浜総合高校 校長)
高橋 清樹(NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ事務局長)
NPO法人多文化共生教育ネットワークかながわ www15.plala.or.jp/tabunka/
鈴木 弘美(NPO法人横浜メンタルサービスネットワーク 代表)
NPO法人横浜メンタルサービスネットワーク forest-1.com/ymsn/index.html
高橋 寛人(横浜市立大学 教授)
杉浦 裕樹(NPO法人横浜コミュニティデザインラボ 代表理事)
長島 由佳(料理研究家、食育コーディネーター、ユカナガシマクッキングサロン主宰)
堀谷 沙貴(横浜市立横浜総合高校 教諭)
余 泰順(一般財団法人神奈川ゆめ社会福祉財団 事務局長)

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