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ディズニーパークはラテン語の宝庫

私はラテン語を高2から始めてもう10年が経とうとしていますが、それよりも長くディズニーが大好きです。4歳の時に初めてランドに行ってから、ずっとディズニー沼にいます。ラテン語を初めて気づいたのですが、ディズニーパークにはラテン語が多く使われているのです。今回は、その一部分でも紹介できればいいなあと思って記事を書きました。ラテン語をもっと広めたいという思いで無料記事にしておりますが、気に入っていただけたらサポートもお願いします。パトロンさん募集中です。

では早速見ていきましょう。順不同です。

1. ギャグファクトリー

まさかのトゥーンタウンからとはちょっと意外かもしれませんが、とんでもないものがあります。ギャグファクトリーというショップの出口の上にCARPE GAGEMと書かれています。これは古代ローマの詩人ホラーティウスの『詩集』第1巻第11歌にある"carpe diem"「その日(の実)を摘め(→今日という日を精一杯生きろ)」というフレーズをもじったものなのです。トゥーンタウンという、西洋古典とはかけ離れたような場所で古代ローマの詩に触れることができるのです。本当に驚きです。

2. タワー・オブ・テラー外観

タワー・オブ・テラーの入り口のアーチのてっぺんに、MUNDUS MEA OSTREA ESTと書かれています。これは入り口上部のステンドグラスに書か
れている"The world's mine oyster, which I with sword will open.「世界は私のアコヤガイであり、それを私は剣で開けてみせる」"という英文の前半のラテン語です。この英文はシェイクスピアの戯曲『ウィンザーの陽気な女房たち』に出てくるセリフで、金を貸す気がない相手に向けて言ったPistolという登場人物のセリフです。アコヤガイは真珠を作るので、世界というアコヤガイを無理矢理にでもこじ開けて真珠のような宝を奪ってやるという意気が伺える一文です。

3. パラッツォカナル

ここにはStudio del Ritrattista「肖像画家の仕事場」と書かれた看板がある建物があるのですが、その看板の上部に"VERITAS NON ERVBESCIT"「真理は恥じ入らない」と書かれていますが、これはローマ教皇レオ八世の言葉Veritas non erubescit nisi abscondi「真理は、隠されること以外恥じない」の前半部分で、さらにこの文の元は教父テルトゥリアヌスによるNihil Veritas erubescit nisi solum modo abscondi.「真理は、隠されること以外は何も恥じない」(『ワレンティヌス派反駁』3章2節)です。まさかアトラクションでもレストランでもショップでもないところでこんなラテン語に出会うとは思ってもなかったです。

4. ケープコッド

ヴィレッジ・グリーティングプレイスの外壁やケープコッド・クックオフには、この町の紋章があり、そこには入植者と先住民で一匹の魚を持った姿と、下にHOC PISCE VINCIMUS「この魚を用いて我々は勝つ」と書かれています。紋章にラテン語は付きものですね。ここで考えたいのは、「この魚」とわざわざ言っているところです。紋章に描かれたあの魚が何らかのストーリーを持っているのでしょうか。

5. 「犬に注意」

シーのメディテレーニアンハーバーの中央救護室近くに犬のモザイク画があり、下部にCAVE CANEM「犬に注意」とあります。古代ローマ帝国の家では床に犬のモザイク画を作りそこにCAVE CANEMと書き、猛犬注意ということを示したものがいくつかあります。いまでもポンペイに残っています。ちなみにトゥーンタウンのベビーセンターの中にも"BEWARE OF DOG"「犬に注意」という看板がありますが、これがCAVE CANEMが元なのか、それとも新約聖書フィリピの信徒への手紙3章2節「あの犬どもに注意しなさい」が元なのか、、、前者だと願いたいです。CAVE CANEMは欧米ではよく知られたフレーズです。フランス人に「私ラテン語やってるよ」って言ったら、「CAVE CANEMは知ってるか」と言われました。

6. ザンビーニ・ブラザーズ・リストランテ

レジ奥の瓶にIN VINO VERITAS「ワインの中に真実がある」と描かれています。これは、酒に酔ったら人は本当のことを喋ってしまうものだ、と解釈されています。同じフレーズはフロリダディズニーのMama Melrose's Ristorante Italianoにもあります。ちなみにアリエルのプレイグラウンドにある鐘に書かれたIN AQUA VERITAS「水の中に真実がある」は、このフレーズをもじったものです。

7. フォートレス・エクスプロレーション

ここに限らず、S. E. A.(冒険家・探検家学会)関連の施設にはS. E. A. の紋章とともに、S. E. A.の標語"EXPLORATIO CONTINUA"「終わりなき探求」というラテン語が書かれています。S. E. A.関連施設は世界中にあるので、この紋章も世界じゅうのディズニーパークにあります。ただフロリダのタイフーンラグーンのMiss Adventure FallsにあるS. E. A.の紋章にはEXPLORATION CONTINUAと間違って書かれています。

8. タワー・オブ・テラーの記者会見を聴く部屋

ここの部屋の扉にはDraconi Dissoluti Perniciem Meritantと書かれています。タワー・オブ・テラーのポッドキャストのラジオドラマ(第12章)では"弱いドラゴンの破滅は当然の報い"と言っていますが、文法がめちゃくちゃです。「弱いドラゴン」というのであれば「弱い」と「ドラゴン」は同じ格にしなければならないのですが、draconiは与格でdissolutiは属格です。meritantも、意味は「稼ぐ」という意味なのでここには不適当だと思います。直すなら"Draco Infirmus Perniciem Meritam Patitur".です。ラテン語のかっこよさに頼るのであれば、文法はもっと勉強して欲しかったなあと思います。

9. エプコット

ワールドショーケースのイギリス館にあるパブRose & Crown Pubの看板にはOTIUM CUM DIGNITATE「品格ある間暇」と書かれています。これは古代ローマの政治家キケローが、ローマの政治家が目指すべきものとして提唱したものです。このようなフレーズを目にすると、背筋を正して酒を飲もうという気になります。

10. ヴィラ・ドナルド・ホームショップ

中に飾られているドナルドとデイジーの肖像画の上部に"AMOR VINCIT OMNIA"「愛は全てに打ち勝つ」とあります。このフレーズの元は、ウェルギリウスの『牧歌』第10巻にあるOmnia vincit amor et nos cedamus amori「愛は全てに打ち勝つ。我々も愛に屈しよう」の前半部分が元です。英語圏ではAMOR VINCIT OMNIAという語順で知られているので、ディズニーシーでもこの語順が使われたのだと思います(語順が違っても意味は変わりません)。では英語圏で広まったAMOR VINCIT OMNIAはイギリスのチョーサーの『カンタベリー物語』において、女子修道院長が身につけていたブローチに書かれた言葉が"AMOR VINCIT OMNIA"だったのです。

このように、ディズニーパークには本当に様々なラテン語が使われています。そうして、ただラテン語が書いてあるだけではなく、古代文学作品からの引用が多く、ディズニー側の知識の深さが伺えます。ディズニーランドやディズニーシーが再開した際には、ラテン語のフレーズを探してみてください。最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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