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ハンドソープ

ハンドソープを詰め替えたりすること、いと心もとなし。常にポンプに入るハンドソープの残りが十分の一に減りぬると、直ちに新しきパッケージより注ぎ足さむと心に決めたるに、かくも常に容器に溢れんばかりになりて、あふれ出づる事、少なからず。わかっておりながらも、石けんの無駄遣い止まず。

疫病の時は月毎に替えたりしたが、疫病の警が五類に移りてより一年、もう過去の事となりぬ。新しき漫画企画にかの疫病の事を織り交ぜたれど、既に古しとされて削除せしめられたり。たった一年の事なれど、遠く感ぜられ。

手を洗うにも、「ハッピーバースデー」を二度歌えばよく洗われるといふ事もありしが、今は不思議に思はるるものなり。誰も祝はず、ただ心中で歌うのみ。あの時、手を洗うこと、世に重大なりしと。出版社より次亜塩素酸水を配られ、ニュースにて消毒液のなき店主命を絶たることも報ぜられし。

見えざる敵に対して、私どもは全力を尽くし戦いし。専門家でなき者多く、ほとんどが想像の世界に足を踏み入れし。過ぎ行くと共に、その敵も如霧のごとく消え去りぬ。

今は手洗いもおろそかになり、神社の手水に似たるほどの手洗いをするがあるのみ。故にハンドソープ減ること少なし。如何に過ぎし日の思い出が、今の我々の日常となりしや、物思うべし。

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