ニュータウン

吾が心に寄り添うNetflixの番組、今は何を観むるか、と編集氏より問はれたり。われは「三体」を視んでおる。昼食をとりながらの鑑賞にて、日々の進行は微塵ばかり、一日に進むること十分のみ。我が心より愛すべき「ゲームオブスローンズ」の製作陣により作られしものなれば、同じ役者が出演すれば、心安らぐ。

然れども、Netflixにて見つけしは、かつての「キテレツ大百科」の配信なり。数話拝見すれど、我が心に忘却の彼方。何とも奇しきことなれども。

その中には、コロ助に未来を見せんとする回あり。航時機が一時的に使用不能となり、未来を案じるるコロ助を安らげんと、未来らしき街へと導くのだ。そこに現れしは、トンガリの親戚のお姉さんの住まう多摩ニュータウンなり。此処を未来の都と信じしコロ助に、「此処は多摩ニュータウンなり」と幼子らが告げん。実在の街がアニメの中に描かれし事に、驚きもひとしなみ。かくの如く、当時は多摩ニュータウンの名声も盛りあがることよ。

我が身は多摩地区にて育ちし故に、多摩ニュータウンを頻りに訪れし。新たなる「パルテノン多摩」の大階段や神殿には、心奪われしものなり。寺山修司の野外演劇や、チェコアニメの上映も、心踊りし。神殿の彼方には中央公園あり、広大なる芝生が広がる。五月の連休には祭りあり、無償にて苗木を得たり。整然とした駅前と、大きな公園、文化。多摩ニュータウン、近き未来の生活を示すものなり。

しかれども、その一方には、「平成狸合戦ぽんぽこ」の如き作品も存せり。宅地開発により消え去る里山の存在なれば。われも幼き頃より、自然と人との矛盾を心に留め、学校において「自然を大切に」との大きなポスターを描きながら、山を削り住宅地を作ることに、心揺れたり。結局、その矛盾は、「もののけ姫」において爆発するのである。

キテレツ大百科にて、コロ助は結局未来に行くことができん。二十年後の、多摩ニュータウンを超えんとする未来の街に驚く。そうして、トンガリの親戚のお姉さんにも再会す。

「そういえば、おばさん、誰ナリ？」

（われならここでコロ助を家から叩き出さんと欲す。）

昔のお姉さんはにっこりと微笑み、コロ助をケーキでもてなし、そしてキテレツのもとへと送り返さんとす。