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モンハンに学ぶ期待値*応用編

今回の記事では、期待値の概念をより深く理解し、味わうために、応用編と題してボウガンの弾丸節約をトピックに考察していきたいと思います。無限等比級数などの数Ⅲ要素も含みますが、文系の人でも大筋を掴めるよう出来るだけ丁寧に記述しました。

前回の記事では「期待値」の数学的定義を基礎から説明しました。期待値とは何ぞや?という人はまずはこちらの記事からご覧ください。https://note.com/kuaty8944/n/n84b735a3912f

以降は【MH】モンハンに学ぶ期待値*入門編をすでに読んでいて、理解していることを前提として話を進めます。なお、記事で触れるのは数学としての期待値の部分のみで、実用的なお話(弾薬節約を採用するべきかか否かの議論など)はしません。


前回(入門編)のおさらい

期待値の定義を改めて確認します。

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この式が表現していることはとってもシンプル。起こり得る値(x)それが起こる確率(p)を掛け算して全部足せば、期待値(E)になりますよ、という意味でした。

実際に数字を入れてみたものがこちらです。

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前回登場した、攻撃力が100で会心率が80%の剣で与えられるダメージの期待値を求める式ですね。
xが取り得る値、すなわち「会心が発動しなかったときの100」と「会心が発動したときの125」のそれぞれに対して、それらが起こる確率pを掛けて足し合わせれば、期待値が求まります。

ここではxが取り得る値は2種類だけですが、xの取り得る値の種類がもっと多い場合は、起こり得る全てのxについて確率を掛けて全部足します。xの取り得る値が無限にある場合は無限に足します。最初に書いた定義式の通りです。


確率変数はダメージ量以外でもいい

確率変数というのは「確率によって様々な値を取る数」という意味でした。先ほどの剣では、確率(会心発動の有無)によって1回の攻撃で発生するダメージ量が異なったので、1回の攻撃で与えるダメージ量=確率変数(x)としていました。この式の赤の部分です。

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今回は、赤色で書いた部分の確率変数が”ダメージ量”ではない別のバージョンを考えてみましょう。


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ボウガンのスキルに「弾丸節約」というスキルがあるのをご存じでしょうか。『弾を発射したとき一定の確率で弾丸を消費しない』効果のあるスキルです。手持ちの弾が1発しかなかったとしても、弾を発射したときに弾丸節約の効果が運よく発動すれば、弾が減らないのでもう1発撃てます。


弾丸節約の効果は連続して発動することもあります。最初に持っている弾が1発だけでも、弾丸節約の効果が発動する限りは何発でも連続して撃つことができるのです。ガリガリ君アイスを1本だけ購入→当たりが出たので交換してもう1本貰う→それも当たりだったので交換してもう1本貰う→それも当たりだったのでもう1本貰う・・・というように、神引きをすれば手持ちの1発だけで何発も連続して撃ててしまう夢のような可能性も秘めているわけです。

撃てる弾の数は確率(弾丸節約の発動の有無)によって様々な値を取るので、撃てる弾の数=確率変数とすれば、期待値として計算できるのではないでしょうか…?


1発の弾を何発撃てるか

今回は「”所持している1発の弾”で撃てる弾数の期待値」を考えてみましょう。日本語としてやや不自然ですが、所持している1発の弾を実質的には何発ぶんくらい撃てるのか、その見込み弾数(期待値E)を求めてみようという意味です。

まず、弾丸節約のスキルを付けていない場合の「1発の弾で撃てる見込み弾数」を考えてみましょう。

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当然のように、1発撃ったら弾がなくなるのでそこでおしまいです。
1発の弾で撃てる見込み弾数はE=1ですね。


次に、弾丸節約のスキルを付けた状態を考えます。ここではちょっと特別に、弾丸節約の効果が100%の確率で発生すると仮定しましょう。この場合、最初から所持している1発の弾で撃てる見込み弾数は何発でしょう。

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弾丸節約が100%の確率で発生するので、弾は無限に撃ててしまいます。「ガリガリ君アイス絶対当たりしか引かないマン」がいたら、最初の1本のガリガリ君アイスを購入するだけで、当たり棒を交換し続けて無限に食えますよね。1発の弾で撃てる見込み弾数はE=∞です。

期待値は、3とか7.5のような数字だけでなく、このように無限大になることもあります。


では、弾丸節約スキルあり・弾丸節約の効果が20%の確率で発生すると仮定したとき、1発の弾で撃てる見込み弾数はいくつでしょうか。

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弾丸節約スキルを付けていないときよりはたくさん撃てそうなので、Eは少なくとも1よりは大きいでしょう。逆に、弾丸節約の効果が「発動しない」可能性も大いにあるので、Eが無限大になることもないでしょう。Eは1よりは大きく、無限大よりは小さい。実際どれくらいなんでしょうか?

前回の記事で剣のダメージの期待値を計算したときと同じように、撃てる弾数の期待値を計算してみましょう。

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xが取り得る値(実際に撃てた弾数)を赤のところに、それが起こる確率pを青のところに書けばよいのでしたね。それぞれを掛けてから足すので、撃てる見込みの弾数EはE=1.2かな?


結論から言うと、この式は間違っています。正確には、書いてある部分に関しては合っているのですが、まだ足りない項目があります。期待値を計算するときには、確率変数xが取り得る値はすべて列挙しなければならない決まりがありました。

剣のダメージの期待値を調べたときは、確率変数は”1回で与えられるダメージ量”だったので100と125の2種類で済みました。今回は弾数の期待値を求めたいので、確率変数は”実際に撃った弾数”です。実際に撃った弾数(撃てる可能性のある弾数)は上の画像のような1発と2発の場合だけでなく、3発のときもあれば4発のときも100発のときも10000発のときもあります。
100発や10000発というのは現実的には起こり得ないくらい極めて低確率な事象ですが、起こる可能性がどんなに低かったとしても、確率変数の取り得る値は全部書かなくてはなりません


つまり、正しく書くなら、こうです。

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そう、この式は無限に続いてしまいます。この無限の足し算を計算して初めて、本当の期待値Eが求まります。


0より大きいものを無限に足すのだから和は無限になるんじゃん?と一見感じられますが、無限に足していった和は、条件によっては無限にはならずにある数字に近づいていってそこに落ち着くこともあります。このことを数学用語で”収束する”といいます。今回の場合は、無限に足していった和はある値に収束します。(※足していく数は後ろにいくほどグングン小さくなっており、それが和に与える影響も次第に小さくなっていくことが体感的にわかる)

無限の足し算の和は数Ⅲウェポンを使えば一瞬で解決します。ちゃちゃっと計算しちゃいましょう。この記事では結果だけ知りたいので、導出過程はさっぱりでも大丈夫。(画像は読み飛ばしていい)

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とりあえずああしてこうして計算した結果、さっきの無限の足し算の和は1.25になりました。


もともと何を求めていたかというと、弾丸節約スキルあり・弾丸節約の効果が20%の確率で発生すると仮定したときの「1発の弾で撃てる見込み弾数」でしたね。結論としては、見込み弾数EはE=1.25となります。

ちなみに期待値はその結果どうしをを足したり掛けたりしても問題ないので、例えば先ほどと同条件のスキルのままで「弾倉に入っている10発の弾で撃てる見込み弾数」などを知りたいときには1.25×10を計算します。この場合は12.5発

20%の確率で発動する弾丸節約により、見込みの撃てる弾の総数も20%増しの12発ちょうどになりそうですが、実際には12.5発なのです。期待値が分かると、こういった数字をより正確に知ることができるので、ちょっと面白いですね。
【注:弾丸節約の発動率は、記事内では計算の簡単のためゲーム本編とは異なる数値を採用している】


あとがき~1発の弾を何発撃てるか(別解)

弾丸節約スキルあり・弾丸節約の効果が20%の確率で発生すると仮定したときの、撃てる弾数期待値の求め方の別解も載せておきます。理系の人だけサラッと読んでください。それではさようなら。

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