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エッセイ「通りぬけできまへん」

 決して裕福ではない暮らしをしておるため、何にお金を使うかを真剣に考えなければなりません。というと、裕福な人たちは真剣に考えずにお金を使っているというような書き方ですが、きっと裕福な人たちも裕福な人たちなりに真剣に考えて消費されているんだと思います。今度、裕福になってみたときに自分がどの程度真剣にお金の使い方について考えられるかを試してみたいんですが、果たしてそんな時がやってくるのか。ああ、裕福になりたい。
 裕福ではないため、お金の使い道が限られます。物価高の影響もあり、もはやお昼ご飯を外で食べることさえ贅沢になってしまいました。ラーメンやカレーの類はお給料をもらった直後のご褒美くらいの域に達してしまいましたから、どうせなら納得のいく、絶対に間違いのないところで食べたい。例えばカレーなら四条大宮の南国ジンジャーのようなお店で。

 さて。そんな私でありますから旅先で何か食べるにしても、名物だからといってなんでもかんでも食べるわけにはいかず、お財布との相談あるいは長考の末に何を食べるかを決めねばならず、うーんうーんとうなされながら、結局のところ、駅前の蕎麦屋に落ち着くのがいつものことなんですが、これを続けておりますうちに、逆に駅に降りたてば必ず近くの蕎麦屋で蕎麦を食わなければならない、というような決まり事があるかの如く、足らない脳がバグりはじめ、毎週水曜日、大阪でのお仕事のあと、お昼に阪急大阪梅田駅に立ち寄った際、ホームにある若菜そばをどうしても通り過ぎることができず、水曜日の私にとっての若菜そばは、京都のかつ子さんにとっての島耕作のような「通りぬけできまへん」的存在になってしまっておるわけなんですが、そんな若菜そばでさえ、通りぬけざるをえないほど、財布が圧迫されており、たかだか六百円程度のお昼ご飯代を吝嗇るため、試行錯誤するなんてこと、やっぱり裕福な人たちはしないよなー。

蠱惑暇
こわくいとま

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