【はじめて短歌を詠むために】短歌の作成3STEP(2020年10月号)
はじめて短歌を詠むあなたに
短歌を読んだことや見かけたことはあっても、自分で「詠んだ」ことはないあなたへ贈る恋の短歌キット。まずはさまざまな恋を歌った4首を紹介。
こんなに力強い歌はなかなかない。特徴は出だしが6音であること。五七五七七の定型を破り、わざと字余りにしたことで勢いが生まれている。一度読んだら忘れられない。
「先生にも家庭がある」と言われても「そりゃそうだ」としか思わないが、こうやって歌になると途端にリアリティーをもって迫ってくる。31音の外の世界を想像してしまう。
ちょっとびっくりしてしまう歌。現実世界では後ろめたい恋かもしれないが、短歌世界ではその強い思いが人を惹きつける。ぜひ声に出して味わってほしい。
恋人と家具を見るのは一種の特別感がある。共感できる人も多い歌だろう。面白い点は、消滅したいのが「入る瞬間」なこと。主体にとっていちばん幸せなのはそこなのだ。
恋を詠むとは心の淵に立つこと
奈良時代から恋は数多く詠まれてきた。百人一首は、そのうち43首が恋の歌だ。短歌は一人称の文学といわれており、基本的にはいつも「自分」を主題にする。そのため、自分の人生の主要なドラマである「恋」が多く詠まれているのかもしれない。短歌と恋は切り離せない関係なのだ。
上記の4首はどれも恋愛に関する歌だが、詠まれている内容はバラバラだ。恋人との幸せ、妻との日常、不倫の情熱、それらがもしただの日記のような文章であれば、これほど強烈なインパクトは持てない。短歌の形だからこそ輝くのだ。
今回の短歌キットも、「恋」の歌に限定した。恋をして相手から受け取ったものや自分の心の動きをよく観察することができれば、おのずと良い歌になる。ただし、上記の歌のような破調や句またがりは諸も刃の剣。初心者は定型を守るのが得策だ。
逆に言えば、それさえ守れば十分ということである。楽しみながら作ってほしい。
短歌作成3STEP
場面を想像しよう
まずステップ1では、短歌にしたい場面を考える。空想でもかまわないが、鮮明に思い描けるほうがよいので、実体験をベースにすると取り組みやすいだろう。恥ずかしい人は、主体の性別を変えるなどフィクション性を高めよう。
どんな場面を選べばいいかわからないという人も多いが、プロポーズのような印象の強い場面である必要はない。日常のさりげない、でも自分だけは覚えていることを詠むと素敵な歌になる。
具体的に想像しよう
短歌は31音しかないため具体性が重要。たとえば「君がくれた花」よりも「君がくれたバラ」のほうが状況や気持ちがわかりやすいはずだ。
一瞬をとらえよう
長い時間を詠もうとすると内容が曖昧になる。心が揺れた一瞬を思い出そう。色や匂いなどの五感を使って一瞬を膨らませられるとよい。
言葉を抜き出そう
ステップ2では、ステップ1で考えた場面を頭の中で写真や動画のように想像して、関連する言葉やフレーズをあげていく。時間や場所、持ち物、風景、そのときの気持ちなどを単語で書いていこう。オノマトペやフレーズも思いつく人はあげておくといい。
書いていくうちに「この言葉が重要だな」とわかるはず。この作業をしながら、自分が歌にしたいものの輪郭がなんとなく見えてくるとなおよい。
31音にしよう
ステップ3は最後の工程。ステップ2で書いた単語を五七五七七の型にはめていけば短歌の完成だ……
このステップを踏めば短歌が詠める
特集「恋の短歌キット」
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※本記事は「公募ガイド2020年10月号」の記事を再掲載したものです。