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創作大賞2024イベントのまとめ 新川帆立×秋谷りんこトークイベント

5月6日noteさん主催のトークイベント
創作大賞2023の大賞受賞者の秋谷りんこさんと、
小説家新川帆立さんのトークイベントが行われ
YouTubeでも公開されています。


でも、すぐ忘れてしまう自分のために
文字で書いて復習できるようにします。
めっちゃすごいお話だったから。


①デビューまでの軌跡

新川さん
大賞をとっても、本が出るのは当たり前かと思いきやそうでもない現実があるのに、刊行予定通り本を出すって、めっちゃえらい秋谷さん!
しかも、受賞作は、3万字ないぐらいだったのを13万文字にっていう編集者からの無茶ぶりに答えたんです。2カ月で3倍ぐらいにするって……。やばい。普通こんなんできないから。1カ月でやったよ、優秀すぎる。

秋谷さん
いろんなアドバイスをその都度頂きました。特に印象が残っているので病院という緊張感のある場面が続くから、読者さんにほっと一息つける場面を入れるようにするといいと。
例えば休憩室の場面とか、外食の場面とかを入れて「もぐもぐTime」を入れました。また、看護師の人ばかりが読むんじゃないから、仕事をしている人目線になるように例えば、夜勤明けは足がむくむみたいな表現を入れて、それがどれくらい大変なのかを体感を加えたり。

新川さん
私が新人としてデビューした時に、「結局、改稿が上手い作家はうまくなるし、生き残るんだ」って編集者さんから言われたから、秋谷さんの改稿を見て、大丈夫だって思いました。秋谷さんの作品には、根本的には、読者への愛がある。読者さんより、自分のことが好きな作家もいるので、ちゃんと読者さんに向けて書いてある。そういうのは、原稿を読むだけで分かります。

秋谷さん
noteで書き始めた時から、コメントで楽しんで頂けるな、感動して頂けるなっていう反応が嬉しくて書いていたのはあります。読者さんと自分の距離が近いというか、相手の方がどう思うかを感じながら書いていました。フォロワーさんたちには、恵まれました。

<参加者より質問>
Q.お仕事小説を書くにあたり、絶対入れておきたかったことと、省いたことは何ですか?

A.私がやってきた看護のスタンスです。仕事に対しての思い入れの部分。私だから書ける、肌感覚をいれるように意識していました。除外したことは、実際の患者さんを想起させるようなものは個人情報が関わるので、自分の中でかみ砕いて、架空の患者さんを作ることにしました。体験してきた死などをコンテンツとして消費させないように、読んでくれる全ての人を絶対不快にさせない事は無理だとしても、デリケートなテーマなのでエンタメ小説としておもしろくしようって意識しました。

繊細なテーマとエンタメ性のバランスが上手い小説

新川さん
発売まであと数日だから、もう作家にできることはあまりないんだけど、作家にできる販促としたら、できるだけ早く次の作品を書くこと。私は、デビュー当時は、メディア露出も頑張ったけど、一番は次の作品を書くことです。

②コンテスト応募の心得

コンテスト経験者のお二人へ。

<参加者より質問>
Q.新川さんは、デビュー前に小説教室に通われていたそうですが、その理由は?また、何年ぐらいやろうと思っていましたか?

A. 私の場合は、人に教えてもらえればできると思っていたのと、宮部みゆきさんが好きだったのでその方が通っていた所に入りました。何年やるかは、20年って思っていました。なぜなら、公募で1年で新人作家が何人でているかと投稿数を見たら、5%だった。だったら、20年やれば確率論的に行けると思ったから。実際は2年目でデビューできました。私は、傾向と対策をしっかりするほうで。他の受賞作の選評を読んで、分析しました。

コンテストに関して、秋谷さんのnoteの反響がすごかったですね。
note社内でも、スゴイのが来たって反響が凄かったものがこちら。

<参加者より質問>
Q.この10の中でさらに大事なもの3つ選ぶとしたら?

A.③と⑤と⑦の3つです。

③ジャンルを熟考した!
どこのドアから自分が覗いたら得意なのか。それを知っておくのが大事。それが、ジャンル。私は、「人が生きるとは?」ということを熟考したので、それをミステリーか、お仕事か、恋愛か、書きたい軸となるものをどこ側面から書くといいのかを自分で判断できると強い。

⑤絶対に一作品は完成させた!
いきなり10万字書かなくてもいい。それよりも自分の熱量をしっかりさせて、募集要項に入っていれば大丈夫。

長いより、短い方がいいですよ。長いと、長いなりの面白さが要求されますから。(新川さん)
どの出版社さんも、完成されてそのまま本になるものより、何かきらりと光るものを持っている人を探している感じがしますね。(noteスタッフさん)

⑦あらすじにこだわった!
あらすじがおもしろい作品は強い。あらすじがおもしろいってことは、自分の小説の良さがわかっているってことなんですよね。おすすめポイントがわかっているってこと。それを、読み始めてもらえる一歩目。

新川さん
あらすじをちゃんと書ける人は、企画を立てるのもうまいので、編集者さんとの次の話が早いと思います。私は②商業で闘うんだろ?という覚悟を決めた!が凄いと思います。投稿時から考えているのは、偉すぎる。

秋谷さん
自分が書きたいものを書き続けるには、やっぱり買ってもらわなきゃいけないって去年わかって「足切り上等だ、書くぜ!」って前向きになりました。
創作大賞の#だけだと、7万ぐらいあったから。でも、世の中の本はもっとあるから、その中で自分を選んでもらうにはこれよりもっと大変なこと。そこで、意識は変わりました。

新川さん
新人賞は、新しいものを求めているんですよ。結局は、自分がそのまま出ていれば絶対それは新しいんです。だから、この作品を出したら死んじゃうぐらいで書く。熱量があれば、下手でも大丈夫。これが、私の人生だ!を出す方がおもしろいんです。
あとは、自分の強みを出し惜しみしない。この1作にすべてをかける。それをやらないと、成長しない。業界の人が新しいものを、1つの原稿からどれだけの熱量を感じられるか、が大切です。人生をかける。

③作家のキャリア

新川さん
デビュー作が売れると、たくさん依頼がきて締め切りがあるのでどんどん書いている。でも、自分でもたくさん書こうと決めている。量は書かないとうまくならないから。ちょっとうまくなると、ちょっと前の作品が下手に見える。だから、自分の過去の作品を読者さんに忘れてもらうには、どんどん出して、薄めるしかない(笑)

秋谷さん
看護、医療分野はまだ書けると思いますが、そうじゃない作品の方向性はいつ書けばいいのでしょうか?

新川さん
いつでもいいと思うけど、ちょいずらしていくといいですよ。絶対、同じ分野で「次はドクターコトーみたいな?のどうですか?」って来るから。
次は獣医でいきます。とかってちょっとずらしていくといい。弁護士ものは需要がある。でも、そればっかりだと自分が飽きるので。仕事としてはお役所ものみたいにちょっとずつずらしていった。現実的にはメリットが多い。
技術的にやってみたいことがあるでしょ?

新川帆立さんの最新刊

この作品は、技術的にやりたいことっていうより、
「女性差別について正面から書いてみませんか?」と編集者さんに言われて今まで、テーマありきで書いたことなかったから、やってみた。

企画の立て方の参考に。
巷で「女性差別」というと、
貧困と結びつけられることが多い。
ただ、私のキャリアの中では地位が高い人を見てきた。
世の中にあんまり出回っていない、ハイキャリア女性の差別にしよう。
さらに日本で一番ハイキャリアは誰?
じゃあ、国会だ。って結構あざとく決めました(笑)
取材もしたけど、自分で調べられるところは調べる。
言い訳せずに調べる!
世の中にあるもの全部読むぐらいな勢いで集める。
Amazonで20冊ぐらい買う。
書き始める前に、2~3冊読んでみる。
書いてる中で分かんない事があったら、都度調べる。
あとは、取材させてもらえる機会があれば聞いて修正していく。
アマチュアでも、創作仲間同士で聞くのもできる。
結構珍しい職業についている方もいらっしゃるので。

④質問タイム

Q1.途中で筆がとまることはありますか?

A.秋谷さん
卯月に関してはなかったです。公募に出していた小説はありました。
ネタ不足なら、映画、本、散歩などで吸収をするといいです。書いていてしんどいなら、私は辞めた方がいいと思います。今はその時期じゃないから。

新川さん
たくさんやっていると、どうして止まるのかは、わかってくる。
私の場合は、資料の読み込みが足りないから。
向き合いたくないのはあるけど、私はツッコんでいく。一番大事なこと。精神状態による。私は元気なのでできる。食べるのと寝るのはした方がいい。

Q2.資料集めはどうやっていますか?調べたこととストーリーのすり合わせはどうしてる?

A.秋谷さん
看護のリアリティの描写に近づけました。自分の経験と、同僚に話を聞いたりして。

新川さん
リアリティかエンタメよりかによって違う。作家のスタンスによる。
こんなことないけどって作者がわかっているのが大事。

Q3.嫌な人物を書けない。物語の深みがないと悩んでいます。

A.秋谷さん
私が新川先生に相談したこと。極悪人を出す必要は全然なくって。
それぞれ方向性が違うベクトルをもったいい人を書く。いい人の他の部分で衝突が起こるかもしれない。信念がぶつかるから。だから、わざわざ嫌な人を書こうとしないで、いろんなパターンのいい人を用意しておけば。

新川さん
嫌な人がいないからじゃなく、主人公が苦労していないと深みが出ないんだと思う。すごく都合のいい話になってしまっている。いい人ばっかりでも状況が大変ならいいけど、主人公に苦労させたら突破口になるかも。

Q4.小説のプロットをどう作っている?

A.新川さんはプロットを作らない派。書きながらキャラクターに会話させていく。

秋谷さんは、プロットを章ごとに結末までの流れを決めて書いています。
1章でA4を1枚ぐらい。
キャラクター表の方が細かいです。年齢、出身地、理由、この本に出てこない事も書いています。キャラクター表を見ていると、そこでしゃべっているんです。この人なら、こういうことを言うだろうってわかります。
主人公のキャラは、この設定で「思い残しが視えた時」に、それを解消したいって正義感をもっていないといけないからって決めました。

Q5.新川先生がベッドの上で執筆していると見ました。創作環境とかルーティンを教えて下さい。

A.言い訳せずにどこでも書くのが大事。
去年まで海外にいたから、飛行機に乗るまでの搭乗待ちでも書く。ベッドの上は楽だから、そこで書く。周りに聞くとルーティンがあると長く書けると聞いた。あとは、作品ごとにオリジナルサウンドトラックをつくっている。
何本も書く時は、混じらないようにオリジナルサウンドトラックを聞き散歩して新しい方に入るために切り替える。

Q6.小説を書くことのおもしろさは?

A.秋谷さん
好きだから書くだけだったけど、デビューってなって、言葉って強い力があると感じました。小説って一種のコミュニケーションの1つ。言語的表現で自分の言いたいことが伝わるってちょっと怖いことでもあり、それがおもしろいことかなって最近感じるようになりました。

新川さん
単純に、いろいろ考えて、0から作るクラフトマンシップ的なおもしろさが1つある。それだけだと乗り越えられない事もある。そういう時は読者さんとのコミュニケーション。私は、自分以外との繋がる手段。何もしないと、孤独。自らの孤独を救ってもらってる。読者さんに生かしてもらっているのが、醍醐味かな。

Q7.自分の書いている文章が面白くないと思った時は?

A秋谷さん
文章か、内容か?それで違う。
内容だとしたら、もう一回読んで面白くなかったら寝かせる。
文章なら、工夫して技術的な問題で解決できる。

新川さん
原因がいろいろあるんですよね。
短編なら、つまんねーと思いながら置いておく。
単純に、チャレンジしている題材と自分があってないのもあって、後から見るのも悪くはない。
ただ、完成していない原稿は0なんですよ。
経験値0でよければ、どんなに駄作でも最後まで書けば経験値はなる。

Q8.資料を集めで、読むのに夢中で手が止まる。集める時の見切りは?

A.新川さん
集める資料はお金が許す限り集めます。書き始められないのはよくある。
そこは、冷徹にやったほうがいい。基本的には読者さんにおもしろいを入れる。自分のおもしろいと読者さんのおもしろさの距離感。

秋谷さん
私の場合は、医療現場で経験してきたことは書きすぎちゃった。
ここは、教科書みたいになってるからって削った。説明みたいになっているところを。最終的には、読者さんの読み心地。

Q9.文章の技術力。地の文章の技術力の向上はどうしている?

A. 秋谷さん
私も、文章力は課題です。全体的に堅めになりがち。
だから、自分と違う柔らかい文章をしっかり読んだり、小説写経をやります。結構地の文のバランスが違い、自分の癖に気づけます。
私も絶賛頑張り中です。

新川さん
地の文章を向上させたいっていうスタンスが良いことです!
地の文が小説家の腕の見せ所だから。
基本的に語彙を増やすといい。意識して増やしていくことです。
広告とか、自分の読んだ本とかで自分が使えない言葉はメモして単語帳を作っています。見直して、語彙が増えるから自分が書きたいことを的確に示す言葉選びができるようになります。的確に選べるようになる。筋トレみたいなもんです。
あとは、文法をおさらいする。普通に、「てにをは」の文法を知らないんですよね、みなさん。公文式ドリルをやってもいいし、日本語作文法とか新書を読んだり。正しい文法を憶える。
その先は、作家による。正解がない。
私の場合は、人の作品を読んで、自分と合わせる。逆に添削します。
私なら、こうするな。って見方をする。絶対言わない方がいいですよ(笑)

感想

いい話を聞いただけに終わらせないようにするには、
もっと、読者目線で文を書くこと
私に足りないのは、そこだって気づきました。

「読者目線」。言葉でいうのは簡単だけれど、
自分で自分の文章を客観的に見る力を身に着けるのは難しいです。
それには、やっぱり書くしかないし、読み返すしかないのです。

まだまだ私は読者さんより、
自分のことが好きな作家だもんなぁ。
優しさを育てていかないと。
もっともっと、目線を上げて。
そんな自戒を込めて。

最後に、
トークイベントのアーカイブおもしろかったです。
noteさん、ありがとうございました。
司会の志村さんが新川先生の言葉を言い換えてくれた
デビューに関しては100m短距離走で全力疾走
というフレーズも心に残りました。
結局は、文章に熱量をどれだけ込められるかが大切。
うん、頑張ろう!


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