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すばるとおりおんの友情【マイキャラストーリー】

※これはプリマジのマイキャラ「すばる」とそのパートナー「おりおん」の話です。


すばるとおりおんの友情


夕暮れ時、人々が帰路につく中統星(すばる)は公園のベンチに座っていた。近くのブランコでは遊び疲れた様子の兄弟が、そろそろ帰ろうかという話をしている。

統星が帰るべき家はこの公園の裏にある団地だ。元々母親と二人暮らしをしていたが、数年前の再婚を機に「新しい父親」が住み始め、その直後に妹が産まれた。4人家族はとても上手くいってるように見える。

ただ統星はこうも思っていた、僕が居なくても上手くいくのではないか?統星の母親は昔から気分の浮き沈みが激しい女性で、統星に対し怒鳴ったりしないものの「お母さんいなくなっちゃうかも」と心配させるような事を言って気を引くような行動を繰り返していた。

統星はそんな母親を嫌ったり疎んだりはしなかった、ただ可哀想だなと思い、そういう時は母親の背中を摩り抱きついて「僕の側にいて」と言うのだった。

思えばこれが共依存という物だったのかもしれない。統星は子供ながら自分はしっかりしてる自負があった。メンタルの弱い母を支えるしっかり者としての自分に少なからず誇りがあった。

父親と妹が出来るまでは。

再婚してから母親は見違えるように変わった。
病むような事象がなくなったのか、それとも夫の為にそういう面を出さないようにしてるのか、とにかくかつての母親の弱さを見せなくなっていた。これは統星にとっては予想外の出来事だったが、良い兆しだとも思った。しかし同時にもしかしたら父親に対してそういう面を見せるようになったのでは?という猜疑心も生まれていた。

そんな中妹が産まれた、統星の人生で初めての兄妹であり、半分血の繋がった可愛らしい女の子。両親は妹に「明良(あきら)」と名付けた、女の子にしては珍しい名前だけど、漢字と名前の響きがとても気に入ったらしい。母親は明良にかわいい服や玩具を買い与えていたが、その中には統星のお下がりもあった。幼い時、統星が母親とおままごとに使っていた人形だった。

「統星にはもう要らないもんね」

妙に引っかかった言葉だった、決してその人形を手放したくなかったわけではない。思い出の品ではあるけど統星も当時もう高学年でおままごとするような歳ではない。それに母親とそんな遊びをする機会も何年も訪れていない。

統星はこの焦燥感の原因に薄々気づいていた、妹の明良に我が家を侵略されている気がしているのだ。

兄弟がいる人は誰しもこういう感情を抱くのかもしれない、ましてや統星は長い間母子家庭の一人っ子だったのだ、違和感があって当然かもしれない。しかしそれだけではない、何か心のしこりのような物をずっと抱えていた。

「ごめんね、今までおままごとなんてさせて」
「統星は男の子だもんね」

統星にはよく意味がわからなかった、今まで感謝こそされど謝られることなど一度もなかったのだ。そこで初めてしこりの正体に気づく、僕はきっと「かわいくある」理由が欲しかったのだ。

母親は口にこそ出してなかったがきっと女の子が欲しかったのだ、だから一人息子の統星にかわいい服や人形遊びをさせていた。しかしその対象は既に明良に移っている、これでは統星がかわいくある理由がなくなってしまっている。

統星は現在中学2年生、同級生は皆二次性徴を迎える時期であり、既に声変わりしてる男子も大勢いる。統星は決して女性になりたい願望があるわけではない、しかしかわいさに対して常に羨望のような物があった事を否定できないのだ。

昔は長い髪だった為よく女の子に間違われいたが、背が伸びて短髪になった今それももうない。母親が望む「男の子らしい男の子」になってるはずなのだ。
なのにどこか満たされない、そしてその理由がまるで明良にあるような感情が渦巻いてしまう。そんな自分の心の弱さがとても嫌だった。


「なんでそんな事で悩むかね〜好きなように生きればよくね!?」


ベンチで隣に座っていたクマのぬいぐるみが喋る。正確にはぬいぐるみではない、「おりおん」という名前の魔法使いだ。見た目がぬいぐるみなので外見ではわからないがどうやら男子らしい。

統星はこのおりおんに数週間前に出会い、プリマジスタになるように誘われた。成り行きでプリズムストーンに行くとそこでかつての幼馴染「心晴(こはる)」と再会した。

いや正確には同じ学校なのだが、違うクラスの男子と女子はあまり接点を持たないものだ。そんな2人がプリマジをきっかけにまた接点を持った。

統星はそこで心晴に対して羨ましい気持ちになったのだ。彼女は自分を輝かせる事の出来る方法を見つけている。僕はまだ自分がどうなりたいのか、よくわかっていない。

「そんなの、具体的に決める必要なんてないだろ〜色んな自分になってみればいいじゃねえか!」

この言葉は目から鱗だった、色んな自分になるという選択肢は今まで考えてもみなかったのだ。

「そうだね…僕もこはちゃんみたいに輝けるかな」
「なれる!このオレ様が見込んだ男なんだからな!」

おりおんはいつも自信満々でポジティブだ。
しかし彼が記憶喪失なのを統星は知っている、過去を知らないからこその自信なのか、それとも不安を隠すための虚勢なのか、それはまだわからない。でもおりおんの言葉はいつも真っ直ぐに統星に刺さり、勇気を与えてくれる。

「うん、そろそろ帰ろうか。お腹も空いたしね」
「おう!あ、またイチゴのお菓子くれよ!生のイチゴはダメだからな!」
「はいはい」

おりおんを肩に乗せた統星はどこか誇らしげに前を向いて歩いていったのだった。


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