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(2000字の短編小説)夏祭りどうするんDAI

外は湿気を帯びた暑さに少しなまあたたかい風が吹いている。
暗くなりかけた空に満月が顔を出している。

町内会の実行委員会に10人程が集まった
みんな60代以上の高齢者だ
自治会長の鈴木が最初の挨拶を始めた
「町内会の会合を始めます。
今日のお題は、夏祭りの出店についてです。
この議会はライブ配信します。」

実行委員たちはみんなボソボソ話し出す
「LIVE配信って、みんな観てるって事?」
それをさえぎるように、鈴木が大きな声で話し始める
「それでは議長、司会進行をお願いします。」
議長の小山が資料の紙を荷物から出して、それを見ている。
緊張しているのか、下を向いて紙ばかり見ている。
「なんてこった。ライブ配信なんて聞いてないぞ。
変な事が起こったら俺、終わりや。ずっと文面を読むだけにしよ。」
小山は心の中で固く誓った。
そしてガチガチの声で
「これから会議を始めたいと思います。何かトラブルがあったらいけないので
AIロボットを持ってきました。
トラブルがあれば、このAIロボットに解決してもらおうと思います。」
「すごいね!!AIロボットやって」
みんなボソボソ話しだす
その声に気を良くして、小山は司会進行にのぞんだ
「これから夏祭りの出し物を決めて行きたいと思います。
出し物によって、夏祭りの雰囲気も変わってきます。
 そこにたどり着くまでの地域での打ち合わせが成功の鍵になります。
前回の出し物は、綿菓子、フランクフルト、焼きそば、スイカ割りなど
でしたが、今年はコロナ明けでもありますし、昨今の食中毒により
現場で調理したものが心配でもありますので、出し物は缶ジュース、
袋入りの駄菓子、凍らせるチューブタイプのアイスにします。
あとスーパーボールすくい、輪投げのゲームにしようと思います。」
 
       ◆           ◆           

 小山が説明を読んでいる間に、50歳ぐらいのおじさんが入ってきた。
が、誰も気付いていない。
どうやら彼はお化けのようだ。
その男はキョロキョロしながら小山の事ずっと見ている
「あーあ、ここどこやろう。田舎やなー。人が全くおれへん。
人の声が聞こえて賑やかそうやから入ってきたんやけど。
このおじさん紙ばっかり見てしゃべってるやん。」
男は小山の横に座り、ちょっかいを出すが、小山はその気配も感じていない。
そしてずっと紙だけを読んでいる。
「それでは、今年はコロナ明けでもありますので、出し物はそのようにさせてもらいます。よろしいでしょうか。」
それを聞いた自治会員たちはざわざわする。
その中の一人の男性が手を挙げて発言した。
「出し物がそんなに少なくていいんですか?そんなんじゃ人も来ないし、収益も上がりませんよ。」
小山は恐る恐る反論した。
「手伝ってくれるボランティアが少ないんです。しょうがないんです。」
場内がざわめく。小山慌てる。
横を見ると、AIと目があった
「AIに聞いて見ましょう。」
小山はAIのボタンを押す
「イルカのような目を持つ純粋な心の持ち主を探しましょう。
遊び心も大切です。」
「どういう意味?」
会場がざわざわする。
一番前に座っていた女性の佐々木が発言する。
「孫が楽しみにしているんです。これじゃあ遊びにおいでとは言えません。
ボランティアを募集するのはどうですか。近所の人に声を掛けるとか。」
「AIに聞いてみましょう。」
味をしめた小山はまた、ボタンを押した。
「たくさんの選択肢を視野に入れておく事も大切です。」
「だから意見を言ってるじゃない。このAI役に立ってるの?
自分の気に入った言葉をランダムに言ってるだけじゃないの?」
佐々木は呆れたように言った。
見かねた感じで、いちばん長老の鈴木が口を出してきた。
「わしも手伝うよ。車で荷物も運ぶし。」
近所に住んでいる佐々木が
「もう80歳過ぎてるのに運転して大丈夫なの?
この前、玄関の門に車ぶつけたって、奥さん怒ってたよ。」
「目が悪くなったからしょうがないんだ。
血圧も160以上あるからな。ガハハハ。」
それを聞いていた小山は心の中で思った
「ライブ配信してるのに大丈夫やろか」
「世界にわしの病気がばれてしまったよ。ガハハハ」
鈴木は豪快に笑った。

それを聞いていたお化けの男は怒り出した。
「なんやって。俺は交通事故で死んだんや。」
そして小山に憑依した。
「なんで車に乗ってるんや。すぐ免許返納しろ。」
小山は今までにないくらい大きな声で叫んだ。
「どうしたの?急に」
みんながびっくりする。
一番びっくりしていたのは小山だった
お化け小山は喋る
「俺は交通事故で亡くなったんや。」
佐々木はびっくりして言った
「生きてるやん」
会場がざわつく
小山自身は何が起こったかわからない
不安になってボタンを押した
AIが作動する
「今こそ悪癖を断ち切るチャンスです。」
なぜかボリュームが最大になっていた。
それにびっくりしたお化けの男がカメラに映ってしまった
「やばい。映っちゃった。」
ザーーーーとなりカメラは止まった






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