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コーヒーとジェンダー

コーヒー店を開拓していた時の話。

職場の近くに、お客さんが入っていない穴場の喫茶店を見つけた。
いい出会いになるといいなと思い、足を踏み入れる。

コーヒーメニューは、浅煎りと深煎りの2種類から選べるのが、またいい。

かなり渋めの深煎りコーヒーを朝に飲んだばかりだった。悩みながらも、ここでは浅煎りを頼むことに決めた。

すると、年配の男性店主が言う。

「女性の方は、みなさん浅煎りを頼まれます。女性は、フルーティーで甘いのがお好きですよね。苦いコーヒーを選ぶのは、男性です。」

女性は、か。そういう選び方はしていないのだけどな。
正直、いい気分はしなかった。

あまりにも偏見の層が分厚い気がして、訂正する気にもなれない。

この店主は、誰にも指摘されないまま今までもやってきたのだろう。訂正されないと「やっぱりそうなんだ」と信じる気持ちが強まっていく。いつまでも気がつかないまま、今日も偏見の層を強固にしていることだろう。

至福のコーヒー時間にこんな思いをするなんて。
あれから一度もあのお店には近づいていない。

人は見たいものしか見えない。
信じたい情報しか集められない。
そういうものだけれど、自分の信じているものを疑い、視野を広げて、目の前の人と向き合っていきたいものだ。


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