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プレジデントまとめ#3 「リーダーの器」を広げるレッスン(前編) 2022.4.29号 P83-86


今日は、ゴディバジャパン社長のジェローム・シュシャン氏の記事を取り上げます。

シュシャン氏は、来日してから30年間、弓道を続けているそうです。

弓道には「正射必中」という言葉があります。 これは「正しく射られた矢は、必ず的に当たる」という意味です。 シュシャン氏は、この教えに沿って正しい姿勢でゴディバジャパンを動かしてきたと ころ、結果として7年で売り上げが3倍になった、という内容です。

前編では、弓道から得たビジネスに対する姿勢、「正射」する為に必要なことについてまとめていきます。


1.西洋のアーチェリーとの指導の違い

シュシャン氏は弓道を始めたばかり頃、西洋のアーチェリーとの指導者の教え方の違いにとても不思議に思ったそう。

アーチェリーでは、「今日は7割ぐらい当ててみましょう」といった様に、「狙って当てにいく」指導を受けました。

しかし、弓道では「的当たったか」について、誰も気にしていないのです。正しい姿勢のみ、つまり「正射」を育てるということです。

西洋の文化をベースに、弓道の文化に触れたからこそ、シュシャン氏は「正射必中」がビジネスにも通じると気づき、取り入れるようになったのです。


2.結果が欲しければ、結果を求めてはいけない

私達は普段、仕事のする上でアーチェリー的思考で動くことが多い様に感じます。

「売上や利益を上げたい」「プロジェクトを成功させたい」と考えて仕事をすることはおかしいことではありません。

しかし、シュシャン氏はここに大きな落とし穴があると述べています。

その考えが結果として「正射」する意識を薄れさせ、的を外してしまうのです。

シュシャン氏はこう続けています。

「正射」を意識すべきは、「自社の強み」です。
ゴディバジャパンにおいては、「商品」「販売チャネル」「マーケティング」「接客」の4点です。
それぞれでお客様の満足に集中し、結果として的に当たったのです。正しく矢を射続ければ、一度きりのまぐれのヒットではなく、持続可能な無限の好循環が生まれるのです。
どんな局面でもお客様の満足だけを意識するのです。 正射を意識し継続できれば、的中率は、おのずと上がっていきます。

弓道範士 (最高位の称号)でも狙ってすべてを命中出来ない様に、ビジネスでも思い通りにいきません。
だからこそ、「思うようにいくはずがない」ことを前提にし、 余計なプレッシャーを自分にかけず、 正しい姿勢で矢を放つことだけに集中することが大切です。


言葉ではわかっていても、そのように行動し続けることは非常に難しいもの。

シュシャン氏は命中率を上げる為に、的をどう意識するかも重要だと述べています。

弓道では、「的と向き合う」 のではなく「的と一体になりなさい」と指導されます。

向き合うということは、 的との間に距離があるということ。それを意識のうえでゼロにしてしまえば、 必然的に矢は命中します。では、的と一体化するためには何をすべきなのでしょうか。


3.お客様とは向き合うのではなく、一体化しなさい


マーケティングの世界では、「お客様目線が大切」「お客様の立場に立って考えよ」などと言われますが、 お客様とは「向き合うのではなく、一体になる」ことが重要です。

それは非常にシンプルで、「自分自身がお客様になる」ということです。

シュシャン氏は、商品やサービスのアイデアを生み出す際には、「ゴディバジャパンの社長」という立場を一切「無」にするそうです。

お客様からデータを取って、会議をしたりすることもないそう。

以下は実際にシュシャン氏が実践している「正射」についてです。

自分がゴディバジャパンの人間であることを忘れて味わってみる。その後で他社の商品を味わってみる。そのとき、自分はまず何を思ったか、自分の五感の違いを感じてみるのです。
「何をいいと思ったか」「どこが嫌だと感じたか」、そのままの感想を突き詰めることが、お客様になるということです。

ゴディバジャパンは現在、日本国内に約300店舗を展開していて、各店舗の販売スタッフたちは、毎日お客様の行動を見て、会話をしています。
定例報告では、「お客様の声を聞いてスタッフが何を感じたか」ではなく、お客様に「どんな状況で、何を言われたのか」を、そのままの言葉で知らせてほしいと伝えています。
「一切、自分で考えない」ことが大切なのです。 自分の考えや立場が入った瞬間、それは的に対して「当てにいく」行為です。そうではなく、社員一人ひとりが我を捨て、お客様の立場になり、良い商品やサービスをつくるために、無心で仕事に向き合う。これが、ゴディバジャパンの正射です。

《後編へ続く》



人生の目標は豊かな老後を過ごすこと。

そこから逆算した日々を過ごします。


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