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なぜ地銀からの転職は難しいのか -銀行員の勘違い-

「地元に貢献したい。」

こんな希望を持って就職先に地銀を選んだ人は少なくないでしょう。

しかし、希望とは裏腹の仕事に辟易し地銀から転職する人は年々増えています。

イメージ的には銀行員が転職するのは難しくないと思うかもしれません。

たしかに優秀な人も多く、一般企業も銀行員は優秀な人材と考えているところは多いです。

ただ、銀行員の誰もが簡単に転職できるとは限りません。

また、転職しても多くの銀行員は「銀行の方がよかった」と思うかもしれません。

特に地銀の場合は、落ちぶれた業種とはいえ、地方ではまだまだ人気企業の一つです。

その安定した地位を捨て転職しようと考えたのに、うまくいかない人が多いのも事実です。

そこで今回は地銀からの転職の難しさについて記事にします。


地銀からの転職は難しい

結論として地銀から転職するのは難しいです。

主な理由は次の3つです。

1. 転職したいのではなく、退職したいだけ
2. 生活環境を変えられない
3. 何のスキルも無い

それでは順番に解説していきます。

1. 転職したいのではなく、退職したいだけ

あなたが地銀を選んだ理由は色々あると思います。

しかし、一度は自分で選択した決断です。

人は後悔を嫌うので、自分の選択が間違いだったと思いたくありません。

そのため、選択は誤りではなく「違う選択肢が見つかった」と理由づけをします。

しかし、それが間違いです。

おそらく、あなたは転職したいのではなく銀行を退職したいだけです。

それは転職先にも見透かされます。

銀行から転職する人は増加

銀行員の転職は増加しています。

リクルートキャリアによると地銀を含めた銀行員の転職者数は、2017年度の調査で全職種の平均(2.64倍)を大幅に上回っています。

地銀の行員は2018年3月末時点で約17万4千人と統計で遡れる2001年と比べて17%も減ったそうです。

2019年2月21日 日経電子版より転載

疲弊する銀行員

これだけ行員が減ると、当たり前ですが一人当たりの仕事量は増加します。

特に地銀はアナログ的な仕事が多く、まだマンパワーに頼る傾向にあり、効率化も簡素化もそれほど進んでいません。

しかも退職するのは、主に20代や30代の若手行員です。

しわ寄せがくるのは40代以上の中堅・ベテラン行員です。

昔の銀行なら、とっくに営業マンを卒業して支店長や本部の部長などになっている年齢です。

しかし、若手行員が不足しているため、今でもカブや原付でお客様への訪問を続けなければいけない人がたくさんいます。

その仕事が好きなら問題ありませんが、やはり身体的にも精神的にも外回り営業はキツイです。

いつまでもこんなキツイ仕事を続けるくらいなら、自分も若手行員と同様に転職しようかなと考える地銀のベテラン行員は多いです。

内勤の女性も疲弊

地銀の場合、外回り営業は主に男性行員の仕事ですが、内勤は主に女性の職場です。

内勤も同様に、若手がいないのでベテランにしわ寄せが来ます。

そのため環境は改善しないのに業務負担だけが増えるという悪循環になります。

さらに問題なのは同じ職場の世代間の格差でしょう。

40〜50代の層が厚い銀行に大学や高校を卒業したばかりの10代、20代の若い人が入ってくるのです。

いってみれば親子ほどの年齢差がある職場環境です。

何か困ったり、相談事があってもそれだけ年齢が離れていては気軽に相談がしにくいです。

しかも、忙しいベテラン行員に声を掛けるのは若い人からすれば、躊躇してしまいます。

そして人間関係などに悩んで退職していく羽目になります。

地銀から脱出したい

地銀から抜け出したい、脱出したいという思いを「転職したい」に置き換える人を私は多く見てきました。

話を聞けば、もっともな理由をつけていますが、実は単に今の環境がイヤだというのがほとんどです。

それはここまで述べたように、地銀の環境が悪循環に陥っているので理解できます。

しかし、それは地銀から脱出したいという理由で、転職理由ではありません。

採用企業からみれば、魅力的な人材には見えません。

だから地銀から転職するのは難しいのです。

2. 生活環境を変えられない

二つ目の理由として地銀の環境はそうはいっても、地方企業の中では恵まれていることが挙げられます。

恵まれた生活環境を変えてまで転職したいとは思わないというのは、「地銀あるある」でしょう。

もし仮に転職するにしても、収入も休暇も銀行同様で・・・など好条件を求める傾向にあります。

しかし、そんな企業は地方にはほとんどありません。

そのため転職したくてもできないという人は多いのです。

若手は辞めやすい環境

ただ、若い行員は状況が少し違います。

ご存知のように、環境に恵まれた地銀とはいえ、若い行員の給与は一般企業とそれほど変わりません。そのため、特に未練はありません。

しかも、将来の自分の姿かもしれない上司や先輩を間近で見ています。

辞めるのにそれほど躊躇しないのではないでしょうか。

40代以上は辞められない

しかし40代以上は若手のようには考えられません。

それなりに、銀行員である恩恵をこれまで受けてきています。

簡単に手放すのはもったいないと考えるでしょう。

しかも、昔の銀行のイメージもあるので「いつかはよくなる」と淡い期待も抱きやすいです。

だから40代以上は転職するにしても「いまと同水準以上でなければ・・・」などの考えに陥り、転職できないのです。

3. 何のスキルも無い

銀行員というと頭が良くて、計算が早くて、頭の回転が早くて、とイイことばかりイメージしますが、実際は違います。

それは、銀行員が一番よく分かってます。

銀行員の問題は「銀行業務の知識だけは一人前」という点です。

たしかに私も銀行業務のことなら20年以上働いていたので自信があります。

しかし、その知識やスキルはハッキリいって一般企業ではほとんど役に立ちません。

経理が出来そうで出来ない銀行員

銀行員は経理業務が出来ると思うかもしれません。

簿記や会計の勉強や、経理事務の仕事をしてきた銀行員なら出来るかもしれませんが、一般的な銀行員に経理業務はまず出来ません。

決算書はなんとなく読めても、決算書は作れません。

勘定科目はなんとなく理解していても、仕訳はできません。

黒字・赤字はなんとなく理解していても、繰越欠損金や税効果会計については説明できません。

また財務会計やファイナンスについても同様です。

WACCやCAPMなどの資本コスト、IRRやNPVなどを説明できる人は銀行内には、ほとんど存在しません。

一般企業が銀行員に求めるスキルは、これ以上のものです。

しかし、多くの銀行員は勘違いしています。
「自分は銀行員なんだから財務会計、経理くらい出来る」と思い込んでいます。

勘違いしている地銀出身の人へ

私が地銀で働いてきた時に、意識して学習していたのは「実社会で本当に役に立つのか」です。

もし転職を考えた時には、銀行での知識やスキル、経験はほとんど役に立ちません。
ExcelやWordといったoffice系のツールを使える人のほうが役に立ちます。

もし銀行以外のライフプランも持っておきたいという方は、銀行以外の仕事を意識してみてください。

過去の知識だけで飯を食っていける時代は終わりました。常に新しい何かを取り入れる柔軟な態勢を整えておくことが非常に重要です。

ただ、行員が減り続けている地銀では余裕がなく、それも難しいかもしれません。

もし転職を考えたいなら早い者勝ちではないでしょうか。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
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