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マツタケの絶滅危惧種認定はアカマツ林のカラマツ化が原因?

 7月に「秋の味覚の王様・マツタケ」が絶滅危惧種に認定されたニュースをご存じでしょうか?

 日本の味覚がどんどん遠い存在になっていってしまう状況は非常に残念なことであります。ニュースでは山林の環境悪化や松枯れ病など様々な原因が指摘されています。

今日はマツタケが生育に必要な条件と減少している原因を林業目線で考えていきたいと思います。(超個人的な見解なので、温かい目で見てください)

 まず、マツタケが生育するために必要な条件です。

・密集したアカマツ林
・草や落葉が少ないこと

「密集したアカマツ林」

 マツタケは基本的にアカマツの根から生えるキノコです。
また、他の菌類よりもデリケートなキノコでもあるので、ほぼアカマツしか生えていないような林だと多くのマツタケが生える可能性が高くなります。


「草や落葉が少ないこと」

 マツタケは、あまり養分が多い土地では生えにくいとされています。そのため、マツタケを多く発生させるためには低木や草を刈り、落葉を取り除くなどの手入れをしていく必要があります。


 次になぜマツタケが減っているのかの原因を考えていきたいと思います。私が考える減少の原因は以下です。

・アカマツ林の下刈りや落葉搔きをしなくなった
・松枯れ病によるアカマツの減少
・カラマツのニーズの増加


「アカマツ林の下刈りや落葉搔きをしなくなった」

 前項で述べた通り、マツタケが多く生えるためにはアカマツ林の下刈りや落葉搔きは重要となります。
 昔は堆肥を作るため草や落葉を集めたりしていたようなので、自然とマツタケが生育するための条件がそろっていました。しかし、現代では山から草や落葉を集めて堆肥を作る必要がなくなったため、落葉搔きをするところは減りました。
 また、造林従事者の減少により、山林の管理が行き届かないこともあり、マツタケにとって生育しにくい環境ができてしまったのだと思います。


「マツクイムシによるアカマツの減少」

 現在、全国的にマツクイムシ(マツ材線虫病)の蔓延による松枯れが問題となっています。この病気はアカマツやクロマツなどに感染し、感染した木は枯死してしまいます。
 蔓延した地域での対処方法として樹種転換が行われています。この方法は、まず被害を受けた木や被害を受ける前のアカマツ林の皆伐が行います。その後に植える苗としてカラマツや広葉樹など感染しない樹種の苗を植えるというものです。
 この樹種転換という方法により、徐々にアカマツ林の減少、つまりはマツタケの減少につながっているではないかと考えています。


「カラマツのニーズの増加」

 木を伐ったら植えるというのは当然の話。
ただ、植える苗の樹種は「土地環境に合うか・将来的なニーズ・山主さんの意向」など様々な状況から決める必要があります。
 私の住んでいる地域では、かつての人気樹種は建築用材としても人気の高いスギや元々自生しているアカマツが選ばれてました。現在の造林樹種はスギやカラマツがほとんどです。
 造林樹種がアカマツからカラマツに変化していった理由は
「伐期の違い」だと思っています。
アカマツとカラマツの最近の出荷先は合板工場やバイオマス工場など用途が似ています。しかし、伐期はアカマツが50~60年、カラマツが30~40年とされています。
 つまり、「用途が同じで伐期が違うなら早く収穫できるカラマツを植えたい」ということになりアカマツ林のカラマツ化が進んでいるのだと思います。


 以上の理由により、マツタケ・アカマツが減少しているのだと思います。
山主さんや林業授業者としては、どうしてもお金が絡んでくるので難しい問題ではありますが、いろんな樹種が生えるように森林を多様化できていけたらいいものですね!!

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