バズの代償

 現代のSNSを突き動かしているものは承認欲求である言い切ってもそこまで的外れではないと思う。他者に見てもらえる、他者に共感される、他者に褒められることは誰だって快感だ。創作をしている身としていっそうそう思う。それ自体は誰にも咎められるべきものではないし、そのために活動するのだって自由だ。もちろん世の中にはそう思わない人もいるようであるが。

 だが、そういった他者からの承認を得るために誤った行為や、本来やりたかったことから遠ざかってしまうことだってある。無断転載や承認を追い求めるあまり表現方法を狭めてしまうことがそれらに当てはまるだろう。

 昨今のTwitterで蔓延するツイートの盗用、いわゆる「パクツイ」と呼ばれるものも、業者ではなく個人がやっているのであれば、あくまでRTや「いいね」を稼ぐことが目的だろう。その昔、TwitterにRT機能がなく、まだパクツイという概念も希薄だった頃にそれを行った先輩を咎めたことがあった。それ以降、距離を置かれてしまった。曰く、「みんなにも伝えたくてやった」ということだった。悪気は微塵も無かっただろうし、それによって承認を得たいという気持ちも無かったのかもしれない。

 彼の真意はさておき、他者の言葉を広めるのならばもう少しやりようがあったようにも思える。その時にRT機能があれば、彼もワンクリックで済ませていたかもしれない。無断転載しかり、違法DLしかり、おおよそ行っている人の大半は罪悪感が無いのかもしれない。それもまた、ワンクリックで済むのだから。

 表現活動について言えば、純粋に創作を追い求めるだけであれば、作品を公開しなくてもよい。けれど、創作することで人とつながりたい。創作することで褒められたい。それは立派な動機と言えるし、だからこそ人は発表するのだとぼくは思っている。貶してほしくて発表する人はそういないだろう。

 さて、なぜこんなことを書いているのかといえば、自分がTwitterにおいて表現を制約されていると感じた経験があったからだ。Twitterは140文字以内で表現するが、これから語ることにおいてその制約はさほど問題ではない。むしろ140文字は多すぎるくらいだ。バズらせようと思えば。

 Twitterでの「マーケティング」は何より即時性が重要である。140文字たっぷり使った文章なんて多くの人は読み飛ばす。必要なのは、いかに短い文章で印象に残すか。あるいはより多くの情報を持った画像や動画につなげるかだ。つまり、時としてキャプションに徹することが求められる。

 より短く、より端的に「刺さる」センテンスにまとめる。その意識で実際に狙ってバズらせたこともある。いわゆる「ツッコミどころ」を残すのも有効な手段だ。ネット民は基本的に揚げ足取り、重箱の隅を突くのが好きだ(おそらく自分もそうだ)からである。刺さる一文とあえてスキを見せることの二本立てだ。

 そうこうしていると、なるほど確かに拡散されてRTやfavを貰えた。けれど、それは果たして自分が望んでいた表現だっただろうかと思い直す羽目になった。おそらく、そんなこと考えながらネタツイを作る人もそう多くはないだろう。ともかく、自分は何をしたかったんだっけと思ってしまったのだ。それは、いまこうしてnoteを始めて文章を書くようになった一因でもあるように思う。

 さて、新人作家や新人バンドマンに向けられる言葉として「見てもらえなきゃ始まらない」というものがある。これは、最初はやりたくないことをやってでも知名度を上げることに徹しろという考え方だ。それに対する反駁として、最初からやりたいことで売れなければ一生やりたいことはできないという考えもある。自分は、それのどちらも正しいと思う。やりたいことやって売れる人は強い。間違いなく勝ち組だし、需要とマッチしていたわけで運も良い。そんな人はきっとあまり多くないだろう。

 けれど、今のコンテンツ産業においてはTwitterやPixiv、Youtubeをはじめ、様々な「踏み台」がある(失礼)。そこで一発当てて名前を売ってから、本当にやりたいことをやる機会を得た人だっていた。そのルートだってやはり間違いではない。誰に咎められる謂れもないだろう。ただ、その結果ファンにはしごを外された人もいたけれど。

 何が正解かは分からないし、売れた人の言葉はいつだって話半分に聞くのがよい。ぼくはそう思う。少なくともひとつ言えるのは、やりたくないことをやって売れないのは最悪ということだ。それはクリエイター業じゃなくたって同じことだろう。

 さて、だいぶ話がとっ散らかってしまったが、自分の真意はどちらだろう。やりたいことをやれているだろうか。そもそも今もまだ売れたいと思っているのだろうか。そもそもそもそも、やりたいことはなんだろう。

 あなたはどうだろう。

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