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メーカーの開発職が在宅勤務してみた話(業務環境編)

 とあるメーカーに勤務しています。担当業務は新製品の開発。大学の研究とは畑違いだけどまぁなんとかなってます。
 メーカーというとIT対応に疎く、メールより電話の文化だったり、会議が多かったり……と想像されるかもしれませんが、まさにそれです。
 さて、そんな感じの会社が急に在宅勤務になったらどうなったか? 実録したものを「業務環境編」「実務編」「生活編」に分けて書いていこうと思います。

0.「明日から在宅勤務です」

 緊急事態宣言が出される少し前、4/7(火)の昼過ぎ。あっさりとそう言われた。確かにそういう気配はあったし、ロックダウンしたときに備えてどう仕事を回すか、どうしても出社しないといけないのは誰かという調査はされていたけれど、実際のところ在宅で仕事をする環境は全く準備されないまま「明日から」と来たものだから困ったものです。
 ひとまず自分は会社からスマートフォンを渡されているからメールは見られるので当面はしのげるとして、アクセスできる会社のシステムには限界があります。スマホの画面は小さいしメールも打ちにくい。この環境がどれだけ続くかわからないけど、まぁそれでもなんとかできる範囲でやっていくしかないでしょう。直近の仕事に必要になりそうなファイルは持ち帰るとして、ソフトもどうにか動くでしょう。
 なーんてのんきに構えていたんですけど、どうやら他の人はそうでもなかったらしく……。

1.普通の家庭はハイスペックパソコンが無い

 自分は自宅のパソコンに設計用ソフトを導入して、特に問題なくサクサク動いていたのですが、

「設計ソフト重くて動かない」
「そもそもパソコン持ってない」
「Officeのバージョンが古くて使えない」
「パソコンが古くてOfficeが動かない」

 在宅勤務開始直後に飛び交うそんなメール群。マジかよ。
 自分は長らくDTMやっていることもあって、PCのスペックは確かに一般家庭よりかは良いものだと思いますが、Officeが動かないってどういうレベルなのだ? ていうかOS何使ってるんだろう。まさかWindows XPとかじゃないだろうな

2.まさかのデスクトップPC持ち帰り

 いや、最初は笑っていたんですよ。でも実際に仕事ができないとなると真面目な人は不安になるみたいで(人としてあるべき姿ですね)、トントン拍子でデスクトップPCを持ち帰るという話が進みました。会社のシステムにアクセスさえできれば設計も通常業務もほぼ普段どおりにできる環境が出来てしまいました。なんという力技。
 でもこれ、うちだけじゃないみたいですね。「デスクトップ 持ち帰り」なんかでTwitter検索すると結構な数出てきますよ……。

3.「1日でパケ死した」

 会社のデスクトップPCは無線LAN非対応のため、モデムとPCをLANケーブルで繋ぐ必要があります。また、会社のサーバからデータを引っ張り出したり送ったりするとなると、結構な通信量が必要となるでしょう。要するに、固定回線で使い放題であることが前提なわけですが……
 するとやっぱり出てきました「テザリングしてたら1日でパケ死した」という人が。甲斐甲斐しい……甲斐甲斐しいよ……会社の仕事のためにそこまで身を削るなんて……家で社畜やったらそれもう家畜じゃん……
 そんな中、容赦なく始まるSkypeによる動画会議。家畜の明日はどっちだ。

4.非オタは作業机がない

 噂には聞いていたけど、部屋に作業机とワークチェアがあるのはオタクならではって本当なんですね。普通の家はローテーブルとソファなんだとか。なるほど、大学時代に見た先輩のオサレな部屋がそんなだった。
 んで、雑談程度にどんな環境で在宅勤務してるかをシェアしたりするんですけど、送られてくる写真がなかなか壮絶。

・ダイニングテーブルにデスクトップPCの本体とディスプレイ
・ダンボールを積み重ねた上にディスプレイ
・椅子が背もたれのない丸椅子

 なんの苦役ですかそれは。いや、決して馬鹿にしているわけじゃないんだけど、子どもがいるご家庭でも学習机とか無かったりするんですね。今どきはそうなのかな。

5.子どもがいる家庭は仕事にならない

 保育園も自粛中で、小さな子どもの面倒を見ながら仕事なんてとてもできやしないという声はだいぶ前から上がっていますが、障壁はそれだけではないようです。
 会社よりも先駆けて全国で休校になってますが、大学や塾ではオンライン授業に移行しているようで、そうすると家族でパソコンの奪い合いが始まるということらしいです。あとは集合住宅の回線が弱いと何もできなくなるそうです。たしかにTwitterのTLでも悲惨な通信速度を叩き出している画像が毎日のように流れてきますね。

6.これってフリーライドなのでは?

 事態が事態だから、みんなで助け合っていこう、多少は身を削ろう、困ったときはお互い様というのはいいと思うんですよ。自分も在宅に切り替わってから電気代は増えています(1日あたり2kWh程度)けど、それくらいは良いかなと思っています。でも、そこについて何も言及されていないのはどうにも会社が従業員の環境にフリーライドしている感は否めないです。パケ死した人も出てきたわけですし(自己責任で済ませていいのかなぁこれ)。

7.まとめ

 すぐには難しいでしょうけれど、会社として在宅勤務で「成果」を求める以上はやはり環境を整えていく必要があると思います。まずは開発に耐えるだけのスペックの人権のあるノートPC支給からでしょうか。
 会社がどれだけ環境整備を頑張っても、人によって成果に差が出てくるのは避けられないでしょうけれど、いまの状況でいきなり放り出されて「成果を出せ」と言われてもなかなか難しいですよね。やれることがないのにサボりと咎められるのも解せないでしょうし。とはいえ、これもまた会社と従業員の信頼関係ありきなのかなぁとも思います。

 さて、今後は雇用形態として在宅勤務もますます増えていくことになると思いますが、在宅勤務環境を構築できることが採用の前提になったりするのかなぁ。などとぼんやり考えていたりします。それはハードル高いなぁ。
 ともかく、一日も早く元の暮らしに戻りたいものですが、自分としてはこの環境がすごく楽だったりするので、選択できるようになったら嬉しいなぁと思います。

 うーん……弊社じゃ無理かな。


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