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夢のかけら

 早朝5時。
 目が冷めて、なんとなく音楽を聞いていた。
 ブルートゥースのイヤホンで、アイフォンで。

 ランダムにかけていた曲の中で、こんな曲が流れた。

 ZONEの、『夢ノカケラ』である。

 この曲を聞きながら、ぽろぽろと涙がこぼれた。

 この曲は、ボクが高校三年生のころに聞いていた曲だ。

 部活も終わり、受験も終わって、自動車学校に通っていたころ、聞いていた曲だ。
 
 あれから、20年以上経ったのだ。

 なんで、涙がこぼれてくるんだろうか。

 それはたぶん、「あのころ描いていた夢」と、「今の現実」がかけ離れていて、何か、何か、何か、「何やってんだろオレ」と思ったからだ。

 あのころ持っていた夢。

 追い求めていた夢。

 20年も掛けたのに、まったく叶えられていない。

 学校の制服。ローファー、重いカバン。

 自転車で通う登下校。

 記憶の中の高校時代が蘇る。

 あの頃のオレが、今のオレをみたら愕然とするだろう。

 夢を、何一つ叶えていなくて、病気を発症して、仕事もできなくなって、いつの間にか酒とタバコを覚えていて、自堕落な生活をしていて、

 ーーーおじさんになっていて。

 何、やってんだろオレ。

 そう思うと、泣けてきた。

 あのころもっていた理想。夢。そういったものが、全部、カケラとなってこぼれていった。

 いまも、この文章を書きながら泣いている。

 朝、6時。

 祖母が起きた。

 窓のカーテンを開けている。

 一日が、始まる。

 20年間、オレは、どんな「一日」を過ごしてきたのだろう。

 弱い自分が浮き彫りになる。

 学校の制服。卒業式、友だちと撮った写真。

 あのころ見ていた夢は、どこにいったのだろうか。

 カケラになった夢を、もういちど集めて、また、前を向いて歩くことができるだろうか。

 すっかり社会に揉まれ、

 すっかりすり減ってしまった40歳の自分。

 くそ、と、思った。

 くそ、と、思った。

 涙をこぼしながら、くそったれ、と、思った。

 こんな自分、きっと、あのころの自分は許さないだろう。

 もうちょっとがんばれよ、そう、朝から思った。

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