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「同人誌書いたけどセーラームーンの原作読んだことない」とツイートして炎上した事件について

質問箱「同人誌書いたけどセーラームン読んだことない」とツイートして炎上

質問箱の質問です。

小林信重(七邊信重)さんの論文で、『 「同人界」の論理-行為者の利害-関心と資本の変換-』というのがあります。この中に、大変興味深いことが書いてあります。

曰く、商業界では経済的な利害関心(売れる/売れなかった)が第一のポジションに来るけれど、同人界では、「参加する楽しさ」や「多くの人に作品を読んでもらいたい」という非経済的な利害関心が第一のポジションに来る

専門的な言い方をすると、商業界では経済的な利益が第一に追求されるが、同人界では象徴的な利益が第一に追求される。象徴的な利益というのは、「参加する楽しさ」とか「多くの人に作品を読んでもらうこと(仲間うちでの人気や承認の獲得)」です。

同人界がお金なんかいらないと言っているわけじゃないけれど、まず参加する楽しさがあり、仲間うちでの人気や承認の獲得があり、それに対して副次的な形で付随するものとして経済的利益が認められている。

つまり、参加して楽しかった~、みんなにもたくさん読んでもらえた~。その結果として、つまり、第一のポジションではなく第二第三のポジジョンとして経済的利益が上がるのなら、それはOKということ。それが同人界。商業界では、経済的利益は第一のポジションであることと対照的です。

そしてそれゆえに同人界では、経済的利益を第一のポジションとして行動することは批判され、嫌われる。参加する楽しさ最優先じゃないのかよ、みんなに読まれるうれしさ最優先じゃないのかよ、金儲け第一に走りやがって~、という感じです。

「セーラームーンの原作読んだことない」というのは、「経済的利益の追求は二の次の同人界、参加する楽しさ、読まれるうれしさを最優先に追求する同人界で、おまえは利益追求を第一にしていたのか!」と受け取られたということです。それゆえ、恐らく同人界を中心にして炎上したのだろうと思います。

専門的な用語がいっぱい出てきますが、小林信重さんの『 「同人界」の論理-行為者の利害-関心と資本の変換-』は、是非読んでみてください。

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