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TVアニメ『マイホームヒーロー』備忘録

TVアニメ『マイホームヒーロー
地上波&BS局での放送が終了致しました。奇しくも父の日に(笑)
2023年春クール。裏では超ビッグタイトルが放送されておりましたが、我らが『マイホームヒーロー』も「毎回秒で終わる」的なご感想を同様に頂戴していたような。原作の面白さを、構成と演出の妙でアニメでも表現出来たからこそ……と個人的には思っております。

今回演じたのは、主人公・鳥栖哲雄という男。
平凡な中年サラリーマンである彼は、妻と大学生の娘の三人家族。
ある日、ひとり暮らし中の娘がDV彼氏と交際していることが発覚。それをきっかけに、哲雄の人生はとんでもない方向へと一気に転がり落ちていくのであった……。

しっかり心重ねて演じようとすると、毎回メンタルがかなり削られる大変な役でした。それは視聴者の皆さんも一緒だったようで、日曜夜にリアタイ視聴してしまうと「月曜から一週間がんばる気力がなくなる」といったコメントをSNSで見かけましたね(笑)

現代劇で、設定年齢も身の丈に近いことから、デフォルメはせず、出来る限り「生」テイストで感情を表現していくことを意識して収録に取り組みました。日常生活域まで哲雄メンタルが侵食してこないよう、気持ちの切り替えをしっかりとしながら。

演じ手として、ひとりの人間として、時間と経験を重ねてきたからこそ、理解できるようになった、表現できるようになった、そういうものはやはり少なからずある気がしており。哲雄とは、このタイミングで出会うことができて良かったと本当に思いました。

推理小説マニアとして蓄えていた様々な知識を駆使し、困難な状況に立ち向かっていく哲雄。その行動力をもってして、彼を「普通じゃないヤツ」と思われた方もおられたことでしょう。まぁ、原作でも狂気を孕んだ人間のように周りから見られている描写はありますが、私にとって「鳥栖哲雄」はそこまで特別な人間ではありません。そもそも、彼ひとりではすべてを成し得ることは出来なかったはず。妻・歌仙の協力があったからこそだと思うのです。

こういう文脈になると、「歌仙やばいヤツ」でまとめそうですよね? でも違います。まぁ確かに、やばいことはやばいのですが(笑)。

歌仙もひとりでは戦えなかったはず。夫婦ふたりで力を合わせ、心を支え合ったからこそ、ここまでの窮地をどうにか乗り越えられた……そう私は思うのです。言うなれば、「赤信号みんなで渡れば怖くない」の心理です。

極限状態における感覚麻痺や自己正当化はごく普通に起こることと言われています。確かにやり遂げる胆力は尋常ではないかもしれませんが、哲雄の行動原理は「愛する者を守りたい」というプリミティブな感情。これは世の多くの人が持っているものだと思うのです。同様の状況にもしも置かれたならば、同様の知識の備蓄があったとしたなら、誰もが哲雄になりうるのでは? 少なくとも、私自身はそうなる可能性が高そう……

そんなことを考えながら全12話、鳥栖哲雄として、父として、生き抜きました。事前に思っていた以上に大変ではありましたが、非常に充実した時間を過ごさせていただきました。
もちろん、満足しているわけではなく、もっとああすればよかった、こうすればよかった、という思いはたくさんあります。
ですが、世にUPされているご感想をあれこれ拝見するに、放送前「哲雄が諏訪部? 違くない?」と思われていた方の認識を、結構ひっくり返すことができたように見受けられたのですが……どうかな?(笑)。もしもそうであったのなら、個人的にうれしく思うところです。

もしも未見の方がおられるようでしたら、すでに配信系では全話一気見が可能です。(配信サービス一覧はコチラ
そして、8月に全話収録のBlu-ray BOXも発売となります。鳥栖家キャスト3人での第一話オーコメと、私&窪役の大塚明夫さんの最終話オーコメに加え、サントラ未収録音源全21曲も収録。販売店さんによって店舗購入特典などもあるようです(詳しくはコチラ)。よろしかったらぜひ!

なぜこんなに推すのかというと…… できることなら続編やって欲しい!!
原作読者の方はお分かりかと思いますが、今回アニメ化されたのは「マイホームヒーロー」のいわば序章。ここから先が真骨頂という感じなのです。
明夫さんも腕ブンブン回しながらお待ちになられております(笑)。そしてもちろん私も、ふたたび「鳥栖哲雄」として刺激的な時間を生きることができたらいいなと心から思っております。

まぁ、何はともあれ、原作ともどもアニメも引き続きどうぞよろしくお願いいたします!
御鑑賞済みの貴方様には心からの感謝を。ありがとうございました!

左から鳥栖零花役の白田千尋さん、私、鳥栖歌仙役の大原さやかさん。最終回収録直後に。