まばゆいばかりの世界的オーロラ現象を生み出したのは、HAARP実験ではなく地磁気嵐によるものだということが明らかになりました。

【主張】

  • オーロラ現象はHAARP実験による「捏造された光のショー」である。

2024年5月11日未明、北極光として知られるオーロラがミシガン州アナーバーの上空に出現しました。鮮やかな紫、緑、黄色、ピンクのオーロラは世界中で報告されています。(画像提供:AP通信)

【評定概要】

  • 5月10日から数日間に渡って強力な地磁気嵐が地球を襲い、GPSサービスの障害などを生じさせました。また、北極光として知られるオーロラを、通常よりもずっと南で観測することが出来ました。

  • このタイミングは、高周波活性光線研究プログラム(High-frequency Active Auroral Research Program)という研究機関で実施された研究と時期を同じくしていました。この研究は、宇宙空間にある軌道上のデブリを検出するもので、地磁気嵐とは関係がありません。

  • HAARPは人工的なオーロラを発生させることが可能ですが、世界中で見られるほど強いオーロラではありません。

【レビュー】

週末に発生した稀に見る強力な地磁気嵐により、オーロラは通常よりも広範囲で見ることが出来ました。

しかしながら、一部のSNSユーザーは、多くの人々が予期せず観測した緑、青、ピンク、紫の鮮やかな光のショーは、自然現象ではないと述べています。それは、高周波活性光オーロラ研究プログラム、通称HAARPによる実験の結果だというのです。

「捏造された光のショーを楽しんだかい?そんな大げさな評価を下すのはやめよう。これはオーロラではない」と、5月11日のFacebookの投稿のキャプションには書かれていました。

この投稿と、それに類似した複数のSNS上の投稿は、光の出現は5月8日から10日まで予定されていたHAARPの実験 によるものだと述べています。しかしながら、HAARPと米国海洋大気庁の宇宙天気予報センターの広報担当者は、これらの主張には根拠がないと述べています。

この投稿は、Metaのニュースフィードにおける偽ニュースや誤報と闘う努力の一環として、フラグが立てられました。( FacebookとInstagramを所有するMeta社とのパートナーシップについての詳細はこちら)

HAARPとは何か、何を研究していたのか?

HAARPはアラスカ州ガコナにある研究施設で、1990年代に米軍が建設したものです。2015年からはアラスカ大学フェアバンクス校が管理しています。全米の研究者達が、高周波無線送信機を使って地球の大気上層部である電離層を研究するためにこの場所を利用しています。恐らく、その起源が政府であるためだと思われますが、HAARPは天候が操作されているという数多くの根拠のない主張の対象となっており、PolitiFactによって論破されてきました

今月初めに実施されたHAARPの科学キャンペーンは、オーロラとは何の関係もありません、と広報担当のBecky Lindsey氏はPolitiFactに電子メールで回答してくれました。

「この実験は、軌道上のスペースデブリの検出メカニズムを研究したものです」とLindsey氏は述べています。

軌道上のスペースデブリには、古い宇宙船や人工衛星の部品といった人間が作り出したものが含まれます。NASAによりますと、地球を周回するデブリは約9000トンあるということです。

「この実験は、世界中で見られる太陽嵐や高いオーロラ活動とは全く関係がありません」とLindsey氏は述べています。

世界中で見られたオーロラ活動は、太陽によって発生した強い地磁気嵐によって引き起こされたものであり、アメリカ海洋大気庁によって事前にかなり予測されていたものです、とLindsey氏は述べています。

HAARPが人工的なオーロラを発生させること自体が可能であり、2023年11月の実験では、アラスカから300マイル離れた場所までオーロラを観測することが可能でした。しかしながら、HAARPが作り出すエネルギーは、自然のオーロラで見られるような光学的な現象を作り出すほど強くはありません、とHAARPはウェブサイトにて述べています

太陽嵐とオーロラについて

オーロラとも呼ばれる)北極光は、電子や陽子が地球大気中のガスと衝突することで発生し夜空に色とりどりの閃光が揺らめいて見える現象です。

南半球にも同様のオーロラ現象があります。

一般的にオーロラは北極に近い地域で観測されますが、ここ数日はメキシコやハワイといった南の地域でも観測されました、とNOAAの宇宙天気予報センターのプロジェクト・マネージャーであるBryan Brasher氏は語ってくれました。

Brasher氏はまた、多くの人々が予期せぬ場所で光を見ることが出来たのは、稀な、しかしながら完全に自然な出来事、強力な地磁気嵐によるものであるとも述べています。

予報センターは5月9日、珍しいG4の地磁気嵐警報を発令し、5月10日にはXの投稿で、極端なG5の状態が地球に到達したと発表しました。

地磁気嵐は1から5のスケールでランク付けされ、5が最も強力です。

Brasher氏は、この極端な地磁気嵐を「一連のコロナ質量放出(数十億トンのプラズマ)が時速数百万マイルで移動し、地球の磁気圏に衝突しました」と表現しました。

Brasher氏によりますと、地球の磁場の変動を測定する磁力計のステーションは何十とあり、嵐のためにこれらの変動が世界中で測定されたとのことです。

「アラスカ上空の電離層の一部に局地的な無線送信機が通電したからといって、地球全体に影響を及ぼすことはありません」とBrasher氏は述べています。

Brasher氏によりますと、科学者達は、何が太陽嵐を引き起こしたのかを示すデータと画像を持っており、それがいつ我々に襲いかかるのかを判断することが出来ていたということです。激しい太陽嵐は、通信、ナビゲーションシステム、電力網、無線や衛星の運用に支障をきたす可能性があるため、彼らは事前に何度か警告を発していました。

《評定:デマです》

  • 5月に広く見られたオーロラは、5月8日から10日にかけて実施されたHAARP実験によって引き起こされたとするFacebookの投稿がありました。

  • しかしながら、HAARP実験は宇宙空間にある軌道上のデブリを検出する方法を見つけるためのものであり、強力な地磁気嵐が引き起こした世界的なオーロラ現象とは無関係なものでした。

  • HAARPは人工的なオーロラを発生させることが出来ますが、発生するエネルギーは自然のオーロラで見られるような現象を発生させるほど強くはありません。

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