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医療崩壊/突然コロナ指定病院にされた十三市民病院/現場に相談なく 医療労働者も患者も大混乱/府知事、市長の人気取り政策の犠牲に(十三市民病院労働者の訴え)

 「緊急事態宣言」が全国に拡大された。外出自粛要請による生活苦に加え、感染の急拡大と「医療崩壊」が迫っている。政権の対策は迷走を続け、自治体丸投げも多い。 大阪市のコロナ対策会議は、「宣言」以降開かれていない。それは「吉村府知事と松井市長が記者会見で次々と政策を発表する」ため、「会議が意味をなさない」(市職員)という。そもそも維新の会は、医療や福祉の削減を続けた張本人だ。府は、医療危機に直面して、雨合羽の募集や十三市民病院を突然コロナ指定病院にすることを発表。これに対し、十三市民病院の医療労働者から、現場無視の決定による混乱への怒りの声が届いた。 (編集部)


松井市長のパフォーマンス「防護服代わりに雨合羽を」

 大阪市では、維新の会の松井市長が「病院でコロナ治療のための防護服が買えないから、雨合羽とポンチョを送ってほしい」とTVで呼びかけた。私はこのニュースを見て、何かの冗談だろうと思いたかった。あなたは自分の家族が苦しんで病院に行き、やっとの思いで名前を呼ばれて入った治療室で医師や看護師が「雨合羽」を着ていたら、安心して自分の家族を預けられますか? 
 まともな防護服ではなく雨合羽などで治療をしようものなら、たちまちコロナが蔓延する。しかし、次の日のニュースでは雨合羽が1万枚も集まっていると聞いて、2度意識を失いかけた。多くの産業がある大都市大阪で、まともに取り組めば防護服を用意・製造できないわけがないからだ。
 しかも同じ維新の会の吉村大阪府知事は、私の働く十三市民病院をコロナ指定病院に決めた。私たち現場には一切話がなかった。そして次の週には手術室が閉鎖され、2週間後には外来が閉まることになった。こんな勝手なことがあっていいのだろうか! 私はコロナ特定病院にされると、手術がなくなって仕事を干される可能性が大だ。地元住民のための市民病院を、府知事の一存でコロナ指定病院にするな!維新が進めるカジノの予定地に臨時病院を建てろ!と言いたい。
 患者からも抗議の声が絶えない。コロナ専門病院化により、自分のかかりつけの医者がいなくなるのは、持病のある患者には悪夢だからだ。
 コロナ専門の病院にするなら、医師が100人くらい必要らしい。だが当病院では、看護師とほんの一部の人たちだけが市の「職員」で、残りの清掃、滅菌、警備、ポーター、受付などの従業員は、委託会社の契約社員や派遣社員だ。みんな「仕事がなくなるんじゃないか」と不安で、毎日その話をしている。豊中市民病院にも同じ職種の友達がいるが、コロナ指定だから外来がガラガラだ。
 また病院事務の女性からコロナ「陽性」と出たのに、他のスタッフを検査することもなく、ただその女性を休ませることしかしていない。院内の消毒も行われていない。たまに暇になっている外来の看護師たちが、待合室の椅子をアルコールで拭いているだけだ。発表の日から外来患者は減り続けている。病院は一度外来を閉めて消毒するべきだ。

防護服もマスクも不足で『コロナ指定病院』医療労働者への支援と危険手当を

 医療スタッフは、テレワークや時差出勤などできない。感染リスクも高いのに、マスクも不足し、1人1日1枚と決められている。当病院の私のチームは正社員、契約社員、パート、派遣で合計16人。なのに配給されるマスクは1週間で100枚だ。16人×2交代=32枚(1日)。×5日=160枚(1週間)。1日1枚確保するには60枚足りない。マスクも防護服も足りないのに、何がコロナ指定病院だ! 馬鹿にしている。
 私は手術室で使用した手術器具を受け取る仕事なので、マスクは「特別」に1日2枚。その他のスタッフは1枚だ。私は朝礼で「大阪市と交渉してマスクの数を増やしてほしい」と直訴したが、上司は「皆我慢している」「うちだけの問題じゃない」と繰り返すだけ。そのうち、しつこく食い下がる私をバカにしたかのように笑いながら「あのね~マスクしていても、感染するよ」と言われた。「知っています。私が陽性かもしれないじゃないですか? ここでみんなに撒き散らしているかもね!」と言い返すと、ギクッとして黙った。
 上司は、翌日の朝礼で「コロナ菌は水を飲むと胃に落ちて、胃液で殺されます。皆さん水を飲みましょう」と言った。私は無意識に首を横に振った。みんなじっと私を見て、笑いを噛み殺していた。私が耐えきれず「ありえへん」と呟いた瞬間、「さあ、今日もがんばりましょう!」と話を打ち切られた。振り返って見た上司の顔が、安倍首相とダブって見えた。「雨合羽を着て水を飲んでさえいればこの世は楽園」? これが国の無策で追い詰められた今の医療現場だ。この異常な社会を止めてくれ!
 本紙で報じられている大阪市役所前の座り込み行動で、フリーランス単身者が休業補償をもらえないということを知り、大きな怒りを感じた。同時に、「毎日、命がけで」電車に乗り、消毒もされていない病院で働いている私たち医療労働者も「危険手当」を要求するべきだと思った。
 日本政府は、医療スタッフや医者だけでなく清掃、滅菌、警備、リネンなど、直接治療に関わらないスタッフを含めた院内で働く全員に今すぐ危険手当を払うべきだ。危険手当への政治家の注目が全然足りない。私は毎日の通勤と外来診察室への入室でストレスがMAXだ。政府は、医療スタッフに対する敬意を持ち、最大限の支援をすべきだ。

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