「多摩美はすべて山の中である」雑記 2022/4/11~4/17

・まずは先週の雑記の補足から。


・多摩美の隣の工事現場が、もともとは広い空き地だった、という話をした。

 工事が始まる前の写真も撮ったはずなのだけど、データを失くしてしまって、先週の雑記にはまともな写真を貼っていなかった。それであんまり想像ができなかったと思うんだけど、ひとつ工事が始まる前の空き地を見せられる方法があることに気付いた。Google mapのストリートビューだ。

 ストリートビューの画像は数ヵ月~数年ごとに更新されるけれど、左上の時計マークを押すと過去のアーカイブを見ることができる。その機能を使って、過去の多摩美周辺を見てみようと思う。

これが最新の多摩美横の道だ。2021年の12月なので、僕が総合型選抜を受けに行った少しあとになる。右に見えるのが多摩美で、左が工事現場。

 これが工事が始まる前、2019年6月の多摩美横。草深い空き地が広がっている。僕がオープンキャンパスに行ったのが2019年の7月だったので、僕が見たのもちょうどこんな景色だったはずだ。

 秋~冬の間は枯草が広がる。僕の印象に残っていて先週の雑記で「趣深い」と形容したのは、どちらかというとこういう景色だったように思う。

 2021年12月の正門前。右手にはすでに物流センターの骨組みができあがっている。

 11年前、2010年の同じ場所。まだ真ん中の道路すら通っていない。

 せっかくなので、他の場所も見てみることにする。

先週言及した、多摩境駅に向かう途中の新しい家ばかりが並ぶ道。

10年前は果てしなく何もない空き地である。

空き地の広さがよくわかる場所を見つけた。

同じ場所が現在はこうなっている。

 橋本や多摩境の方面にもう少し進むと、2010年でもあまり今と変わらない景色なので、多摩美の周辺の鑓水地域だけがここ10年、というか5年くらいで一気に開発が進んだのだろう。

 いいな~。僕も荒野の中の大学に通いたかった。


・「今昔マップ」で昔の多摩美周辺の地図を見てみる。

これが現在の多摩美周辺の地図と航空写真。

 赤で描き加えたのが多摩美の隣の道、青が橋本駅までの道、緑が多摩境駅までの道だ。現在といっても何年か前の写真だから、物流センターとショッピングモールの場所はまだ空き地のままになっている。

 せっかくなので、地図の範囲を広げて多摩ニュータウンの開発も一緒に見てみることにする。青が橋本、赤が多摩美、ピンクが京王線、黄緑で囲ったのが大雑把な多摩ニュータウンのエリアだ。多摩美は多摩ニュータウンの文字通り西端にある。いちおう多摩ニュータウンのエリアマップを見ながら囲ったけど、かなり大幅に間違っている気がする。許してください。

 そしてこれが多摩ニュータウン計画以前、1960年代の地図。多摩丘陵はまだ開発されておらず、田畑と山林の中に集落が点在する山の中だ。場所の目安として残してあるけれど、当然まだ京王線は通っていないし、多摩美の校地はあるもののおそらく何も建っていない。

 多摩丘陵の外にある橋本は当時から住宅が並ぶ街であり、橋本駅にはすでに国鉄横浜線と国鉄相模線の2路線が乗り入れている。橋本のあたりが開発されたのは江戸時代のことらしい。多摩美から駅まで歩くとき、橋本駅までの道のりと多摩境駅や南大沢駅までの道のりではだいぶ雰囲気が違うなと思っていたけれど、ようするにニュータウンの中と外だから歴史がぜんぜん違うのである。

 この地図でいうと黄緑とピンクが交わるあたりが多摩境駅で、その少し奥にあるのが南大沢駅だ。

 70年代になると、多摩丘陵の東部では多摩ニュータウンの開発が始まり、西端には多摩美の八王子キャンパスが完成する。画像が少しわかりづらいけれど、右側の赤茶けた部分が造成された土地かな。

 多摩ニュータウンの第一次入居が永山駅の南側とのことなので、たぶんこの辺だ。このころにはすでに京王線は多摩センター駅まで、小田急線も永山駅まで開通している。

 そしてこれができたばかりの多摩美八王子キャンパス。周囲は空き地どころか山の中である。

 多摩美ホームページの「八王子キャンパスの沿革」に、昔の多摩美の写真が載っていた。今よりキャンパス自体もだいぶ建物が少ない。おそらくこの写真の左下が橋本駅の方向だけど、写真を見ても地図を見てもまだ道すら通っていなさそうだ。いったん北側に出たあと山をぐるっと迂回して橋本駅まで通学していたんだろうか。

 80年代にはニュータウンの開発もだいぶ進んでくるけれど、多摩美の周辺は依然として山の中だ。

 相変わらず道すら通っていない。

 80年代後半、ようやく多摩美のある鑓水地域にも開発の気配が見えてくる。

 多摩美の東側が切り拓かれ、あの巨大な空き地ができたのはこのころだ。

 90年代の地図を見ると「宅地造成中」とあるので、ここもすぐに住宅が建つ予定だったのだろう。しかし、公的な多摩ニュータウン計画は鑓水地域の開発を待たず2006年に終了する。だから鑓水の開発は遅れることになり、2~30年ほどの間、拓かれたままの何もない荒野が広がっていたのではないだろうか。

1990年代
2000年代
最新

 航空写真が見られないので地図だけにはなるけれど、90年代~現在の間にどんどん多摩美周辺の開発が進んでいるのがわかる。南側の山が切り拓かれ、道路が開通し、住宅が立ち並ぶ。多摩美自体も大きくなった。絵画棟やデザイン棟など、色々建物が増えたのである。

 京王線が橋本駅まで開通したのが1990年、多摩境駅が開業したのが1991年。そして橋本駅から通学する多摩美生なら全員が通るであろう久保ヶ谷戸トンネルが開通したのは2000年のことだ。それまではどうやって通学していたんだろう。僕は地図があんまり読めないけれど、久保ヶ谷戸トンネルが開通する2000年前後までは、少なくとも大きい道は繋がっていないように見える。さっきも書いたように山をぐるっと迂回していたのか、それともマジの山道を通っていたのか……。

 なんにせよ、ここ30年の間に鑓水は山奥の秘境から何もない荒野になり、そして今まさに普通の街中になろうとしているのである。開発が進んで便利になっていくのはもちろん喜ばしいことなんだろうけど、やっぱり僕も山奥の秘境か何もない荒野でキャンパスライフを送りたかったな……。先週も書いた通り、何もない荒野でキャンパスライフを送るために僕は多摩美を志望したわけなので。

 とはいえ、多摩美の北西には大きな緑地が残っていて、「山の中」感は今も一応ある。今度こっちの方面も散歩してみようかな。


・今週あったこと:大学の履修登録をした。ちょっと授業入れすぎた気がする。意欲があるからとかじゃなくて、優柔不断すぎて削れなかったから……。 

 授業が始まった。といってもまだガイダンスとかだけなんだけど、すでに集中力が散漫すぎて不安しかない。思えば、授業をちゃんと聴こうとするという経験は生まれて初めてかもしれない。さすがにそんなことはないけど。

 人とまったく喋っていない。サークルとかも入ろうかと思ったんだけど、怖くて入れない。

 というわけで、今のところ大学生活でいちばん楽しいのは大学周辺の散歩です。毎日歩きまくっているせいで、「慣れない大学生活による疲れ」とかじゃなく物理的にめちゃめちゃ疲れた。散歩って楽しい。


・今週読んだ本。

『首里の馬』:作者の高山羽根子さんが多摩美の入学式に校友会代表として来ていて、それで気になったので作品を読んでみた。丁寧さを感じる文章や物語で、不思議な世界観を描きつつも淡々と静かな空気感がいい。

『ニュータウンの社会史』


・今週読んだ漫画。

『ゆるキャン△』1巻:アニメは全部観ているので、原作ならではの感想というと「絵がきれい」とかしかないけど。ゆるキャン△のいいところって、お互いに干渉しすぎない自立した距離感ですよね。

『さよなら絵梨』:こんなに丁寧な爆発オチってあるんだ。

『ブルーピリオド』10巻、11巻


・来週読みたい本。

『同志少女よ、敵を撃て』


・来週観たい映画。

『平静狸合戦ぽんぽこ』

『耳をすませば』

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