2021年に観た/読んだ作品の感想

好きな作品の話がしたいだけのオタクの記事。

去年も色々な作品を観たり読んだりしました。

去年の春ごろからアニメを観るようになったんですが、今年も変わらず月に1作品くらいのペースで観ました。

今年の4月から電車に毎日乗るようになり、電車でずっと小説を読んでいたため、今年は小説をかなり読みました。

ちょうど100冊読んだらしい。小説以外も混ざってるけど。あと、2回読んだ本が5冊と3回読んだ本が1冊あるけど(全部ユーフォシリーズ)。

あと、これまで漫画をほとんど読んだことがなかったんですが、今年はちょっと読みました。

ということで、今年読んだ/観た中で特に好きだった作品とその感想を書きます。あんまり現行の作品をリアルタイムで追うということをしないので、9〜10割くらいは2021年の作品ではないです。括弧の中に書いてあるのは僕が読んだ/観た媒体のみ。

けいおん!(アニメ/アニメ映画)

ひたすら緩く賑やかな日常が描かれていて、居心地のいい楽しさを感じる作品だった。アニメや映画を観るとき、どうしても1歩引いて醒めた目で観てしまうことがわりと多いんだけど、いちばんそういうことが少なかったのがけいおんで、終始ニコニコしながら観ていた。

2期20話の部室のシーンがめちゃくちゃ好き。大きな緩急のない日常を丁寧に描いてきたからこそ、その日常の終わりを突き付けられる瞬間がとても刺さる。

ツリーハウス(小説)

ごく普通の家族の物語が、戦後の時代を背景に大河ドラマ以上の壮大な時間の流れで描かれていて、"人生"を感じる作品だった。

たまこまーけっと/たまこラブストーリー(アニメ/アニメ映画)

絵面の新しさ(といっても10年近く前の作品ではあるけど)のわりに、全体的にどことなく昭和のホームドラマのような雰囲気を感じる作品だった。商店街が主な舞台となるところとか、「一家のもとにへんてこな生き物がやってきて居候をする」という設定からして昭和っぽい。

本編の後半~『ラブストーリー』では、そんな平穏で閉じたモラトリアムの世界にもたらされる変化が描かれる。変わらないと思っていた日常の終わりに直面し、人生の岐路に立つ主人公たちの感情の機微が繊細に描かれていて、青春アニメとして本当に最高の作品だと思う。そんな変化に対して登場人物の1人が漏らす「宇宙の入り口に立ったみたいな気分なんですよ」というセリフがとてもいい。

『ラブストーリー』、直接的なセリフをあまり介さずにあそこまで"感情"を描けるのが本当にすごい。告白を受けたシーンのたまことか、セリフだけ見ればコミカルなのに、ハッとするような感情が伝わってくる。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン(アニメ/アニメ映画)

ヴァイオレットという1人の人間の人生譚としてとても好き。

1話を観たとき、ヴァイオレットの生真面目な言動と垣間見える幼稚さのチグハグ感にちょっと引っ掛かっていて、後にヴァイオレットの年齢を知って納得したんだけど、最後まで観たあとに1話を見返すとちゃんとただの不器用で幼い子供に見えて、「キャラクターの成長をこれだけしっかりと描けるの、凄……」と思った。

ヴァイオレット自身の物語や、彼女が代筆屋として関わる人たちの物語のひとつひとつが、戦争が終わり目まぐるしく変わっていく一つの時代の中に描かれていて、なんというか、"世界"の厚みを感じる作品だった。

聲の形(アニメ映画)

いじめや障害でも恋愛でもなく、ディスコミュニケーションが主題の話なのかなと思う。一見丸く収まったように見えても、全員がわかりあえたわけでも善人になったわけでもなくて、そういう割り切れなさ、どうしようもなさみたいな部分も含めて"人間"というものがとてもリアルに描かれていると感じた。

エヴァンゲリオンシリーズ(アニメ/アニメ映画)

シンエヴァが公開されてから旧シリーズと序破Qを一気見してシンエヴァを映画館に観に行った。

旧シリーズの前衛的な終わり方に度肝を抜かれたんだけど、Qは漠然と想像していた通りのわからなさだった。シンエヴァを観て「ちゃんと終わるんだ、エヴァって……」と思った。

シリーズを通して、「他者との関わり」が主題として描かれているように思う。そういう意味で、ひたすら内向きのまま終わる旧シリーズに比べシンエヴァは精神的に大人になったなと感じる終わり方だった。

古典部シリーズ/氷菓(小説/アニメ)

謎解きのおもしろさだけでなく、登場人物たちの心の機微や、事件に関わっていく中で少しずつ変わっていく主人公の成長などが描かれていて、青春物としても本当にいい作品だと思う。

初めて氷菓を観たのが2020年で、そこから京アニ作品にハマったんだけど、それから1年越しに原作の古典部シリーズを読んだ。

やっぱり『クドリャフカの順番』は本当に面白い。多視点で話が進んでいったり、出来事がいくつも並行して起こったりするの、学園祭らしい楽しさがあって好き。いくつもの出来事が一つのところに収束していく構成が気持ちいいし、「期待」という言葉の残酷さを描く人間ドラマもよくて、青春ミステリーとして本当に完成度の高い一冊だった。

部誌は伊原摩耶花が個人的な同人誌と間違えて発注したらしいんだけど、個人的な同人誌を200部発注する伊原摩耶花すごすぎる。大手じゃん。

短編集『いまさら翼といわれても』は、より青春小説としての純度が高くなった一冊。古典部員それぞれの人物像が掘り下げられていて、より一層彼らに対する愛着がわいた。『鏡には映らない』を読んで、古典部シリーズは胸を張って「大好き」と言い切れる作品になった。

小説を読んだのと並行して、アニメ版も1年ぶりに観返した。初めて観たのはまだあんまりアニメというものを観たことがないときだったんだけど、改めて観ると本当にアニメとしてのクオリティが高い作品だなと思う。武本監督のご冥福をお祈りいたします。

色彩設計が、古典部の落ち着いた空気感ととても合っていていい(石田奈央美さんのご冥福をお祈りいたします)。同じ理由で劇伴も好き。あと、キャラデザも好き(西屋太志さんのご冥福をお祈りいたします)。あのキャラデザじゃなかったら奉太郎の態度にちょっとムカついていたと思う。

キャッチャー・イン・ザ・ライ(小説)

子供でも大人でもいられない思春期の葛藤が描かれた作品。主人公ホールデンの、反社会的で捻くれた性格の裏にあるまっすぐなイノセンスがいい。

「一千万個くらいのゴミ缶」みたいな誇張表現が1ページに50個くらい出てきてクソデカ羅生門かと思った。

響け!ユーフォニアム シリーズ(小説/アニメ/アニメ映画)

コンクールで全国を目指すスポ根的展開の中に、登場人物たちの感情のやりとりが厚みを持って描かれていて、青春物の"全部"が詰まっている作品だった。ここ数年で観た/読んだ作品の中でいちばん好き。

原作の7作目?となる短編集の『ホントの話』では、登場人物たちの日常と卒業によるその終わりが色々な角度から描かれていて、主人公の久美子たちにももうじきやってくる終わりが予感させられ切なくなってしまった。

僕は今まで創作物で実際に涙が出るまで泣いたことが一度もなかったんだけど、『決意の最終楽章』は読みながら文字通りボロ泣きした。求が緑の卒業を想像し泣き出す場面で、明白に意識させられる日常の終わりの切なさに涙腺が決壊し、それ以降ずっとページをめくるたびにぼろぼろ涙を流しながら読んだ。時間が進まないでほしいと呟く求に「その場で足踏みしてるだけじゃ、どこにも行けなくなっちゃう」と返す緑輝、まっすぐな価値観が本当に格好良くて好き。

スピンオフのアニメ映画『リズと青い鳥』は、正統派な青春群像劇である本編とは変わって、鎧塚みぞれと傘木希美の2人の関係のみにフォーカスした作品。閉じた世界が、まるで望遠レンズで捉えたような静謐さで描かれる、美しい作品だった。京アニの描く繊細な映像美と、リアリティを持った空気感が本当にいい。『映画けいおん!』や『たまこラブストーリー』で「モラトリアムの終わり」、『聲の形』で「ディスコミュニケーション」というテーマを表現してきた山田尚子監督の一つの集大成だなと思う。よすぎて3回観返した。

リズと青い鳥は芸術作品。

その日、朱音は空を飛んだ(小説)

ユーフォニアムシリーズと同じ武田綾乃さんの小説。ユーフォニアムシリーズから共通する、学校という空間内で交わされる感情のやりとりがより一層の厚みで描かれつつ、"理"によってストーリーが組まれていて、重めの青春小説としても伏線回収の巧みなイヤミスとしてもとてもいい作品だなと思う。ラスト数行のどんでん返しがすごい。

百鬼夜行シリーズ(小説/アニメ)

去年から読んでいたシリーズだけど、1冊が余裕で1000ページを超えるので一気読みのハードルが高くて数か月おきに読んでいて、読み終えるまでに1年ちょっとかかった。せっかくなので、今年読んだ分に限らずシリーズ全体について書こうかな。

最初に読んだのが、シリーズ物であることを知らずに読んだ3作目の『狂骨の夢』だ。読みながら「さすがに状況が不可解すぎるし、雰囲気も夢か現実かわからないような感じだし、これは最終的に夢がどうこうとかであんまり伏線回収されずに意味ありげな感じのまま終わるタイプのやつかな……?」と思っていたんだけど、終盤現れた黒衣の男が壮大すぎる謎解きですべてを回収していって度肝を抜かれた。

以下、前に書いたけど結局誰にも読んでもらう機会がなかった百鬼夜行シリーズおすすめ文をそのまま載せます。

戦後すぐの日本を舞台としたミステリー小説。「誰が/どのように事件を起こしたのか」といった謎ではなく、「そもそもいったい何が起こっているのか」「どうして事件が起きたのか」というような部分が物語の核となります。ニ十ヵ月の間身ごもり続ける妊婦、何度殺しても蘇ってくる死者、望んだ相手を殺してくれる黒い聖母像。そんな摩訶不思議な事件に対して探偵役が行うのは、解決ではなく「憑き物落とし」。複雑に入り乱れて誰一人として(殺しの犯人でさえ)全容を把握できないような事件たちを、言葉によって解体していきます。探偵役が語る脳科学や心理学、民俗学などの薀蓄によって説得力を与えられた展開は、言ってしまえば壮大な詭弁なのですが、だからこそ緻密に組み上げられた世界に引き込まれます。

以上。

上記のような複雑な展開や謎解きのカタルシス、民俗的な世界観のよさだけでなく、ラノベかと思うくらいにキャラの立った人物造形や会話劇、文章の上手さによる圧倒的な没入感なども魅力。切迫した場面で改行が多くなるやつかっこよくて好き。僕はよく電車を乗り過ごすんだけど、その7割くらいは百鬼夜行シリーズを読んで没頭しているときです。

アニメ『魍魎の匣』も観た。あの長い原作がちゃんと1クールに収まっているのか心配だったけど、よくまとまっていてよかった。京極堂の講釈にも2話分丸々使われている。京極堂の肩幅がイメージより広かった。

豆腐小僧双六道中ふりだし(小説)

百鬼夜行シリーズと同じ京極夏彦さん(作家名に一律でさん付けしてるけど、「京極夏彦さん」がいちばん違和感あるな)の小説。コミカルなのに百鬼夜行シリーズにも増して詭弁濃度が高くてすごい。

普通ならご都合主義にも見えるような展開を、圧倒的な薀蓄と詭弁で"必然"に持っていくのが京極夏彦の凄いところだと思う。積み上げてきた薀蓄と詭弁の全てが繋がるカタルシスがある。

水は海に向かって流れる(漫画)

タイトルや表紙やあらすじから漠然と想像した「読みたかった物」が最後までちょうど読めた感じがある。期待を裏切らないいい作品だった。

シェアハウスに居候することになった主人公と同居人たちの、少し重めの人間ドラマ。淡々としながらも爽やかで優しい、どことなく邦画っぽさを感じる空気感がとてもいい。邦画まったく観たことないけど。細かい会話の温度感も好き。

小暮写眞館(小説)

元写真館の古家に引っ越してきた一家を中心とした物語。写真館に持ち込まれた心霊写真をめぐる物語、主人公の高校生活、家族の抱える過去など、いくつもの人間ドラマを通して主人公の青春が描かれる。重めの題材も扱いながらも、全体を通してハートウォーミングな空気感を感じる作品だった。

宮部みゆきさん、登場人物全員実在するだろと思うくらいに、人間を描くのが本当に上手い。なんというか上手く表現できないけど、現実の人間とちょうど同じくらいの厚みがある。

映像研には手を出すな!(アニメ)

描かれているアニメ制作は決して楽しい部分ばかりではないんだけど、それでも(というか、だからこそ)全体を見るとやっぱり「創作活動の理想像」そのものなんだよな。

エスプリの効いた会話が面白い。「しかも財閥令嬢だとか」「財閥はGHQに解体されたろ」とか、「ねえ、あそこに行く道無いのなんで?」「ローマ経由すれば行けるんでしょうよ」とか、天才すぎる。

熱帯(小説)

『熱帯』という謎の本を巡る物語。メタフィクション的な入れ子構造が面白い。

痛快な森見登美彦節は控えめで、かわりにワクワクするような不思議な世界観がより一層の深さと壮大さを持って描かれる。「物語に触れる楽しさ」が表現されているように感じた。

ちーちゃんはちょっと足りない(漫画)

読み終わったあとめちゃめちゃ暗い気持ちになる。このままずっと、ただ自己否定をするだけで何一つ成長しないまま取り残されていくのかな、僕って……。

やがて君になる(漫画/アニメ)

百合漫画。ストレートな恋愛ものを読んだのは久しぶりかもしれない。

よかった。

恋愛のことはわからないので関係ないことを書くと、表紙が絵としてめちゃめちゃ好き。アニメ版も観たんだけど、表紙の雰囲気がそのままアニメになっていて、雰囲気の良さという点では結構上位に入るくらいに好きな作品だった。

屍鬼(小説)

150人にも及ぶ登場人物のひとりひとりが、それぞれ人間らしさを抱えて行動していて、これ以上ないくらいに"群像劇"をやっているなと感じた。日本の田舎という現実的な舞台や人物たちが生々しく重苦しいリアルさで描写されているからこそ、起こっている異常事態が緊迫感を持って伝わってくる。

2ページに1回「正常性バイアス……!」と思ってしまうな。

少女歌劇 レヴュースタァライト(アニメ)

トップスタァを目指す舞台少女たちのスポ根であり、巨大感情と巨大感情で殴り合う感情のバトルロワイヤル。

映像作品としてめちゃめちゃに格好いい作品だった。何より演出が格好いいし、赤青黄のカラーリングも、メタファー的な表現として印象的に登場する「東京タワー」「電車」「トマト」などのモチーフも、スタイリッシュなグラフィックデザインも、全部が格好よすぎる。

特に好きなエピソードが、アニメ7話の大場なな回だ。「届かなくて眩しい」のシーンで、胸が苦しくなるような切なさに襲われる。設定も演出もセリフもとてもいい。あの1年間が、99期生のみんなが、本当に大好きなんだろうな……。でも、何度再演を繰り返したところで最初に感じたキラめきは遠くなっていくだけなの、切ないね……。

君の話(小説)

偽物の記憶と偽物の幼馴染をめぐる、「虚構の青春」を描いた作品。感傷マゾ系の金字塔といえると思います(知らないけど)。「青春ゾンビ」などの概念を作品の中に持ち込み青春をメタ的に扱った作品として、これ以上ないくらいに"正解"をやっているなと思った。

折れた竜骨(小説)

魔法が存在する中世の世界を舞台とした特殊条件ミステリー。単なる特殊条件ミステリーのルール付けのためだけのファンタジーではなく、ファンタジーとしてもしっかり面白い。ファンタジーとミステリーの美味しいところが両方詰まっていて最高だった。

少女終末旅行(アニメ)

緩さと虚無感と文学的な抒情性の同居する不思議な空気感が心地いい。文明の崩壊した世界の中で語られる素朴で哲学的な問いかけから、普段感じている「当たり前」について考えさせられる。

最終話を観たあとに見るED曲の「終わるまでは終わらないよ」というフレーズ、あまりにもいい。

少女(小説)

「人が死ぬところを見てみたい」というスタンド・バイ・ミー的なところから始まる、女子高生2人の物語。

怒涛の伏線回収がすごい。さすがに繋がりすぎて嘘くささも感じるけど、でも嘘くさいくらいの世間の狭さを感じることって現実でもあるよな。

思春期の持つ爽やかさと毒の両方が強烈に描かれる。友情っていいな……。湊かなえさんなだけあって「友情っていいな……」で終わる話ではないんだけど、友情っていいな……。


以上、2021年に読んだ/観た作品たちでした。こうやって並べてみるとなんとなく雰囲気に偏りがある気がする。

創作物を読んだり観たりするとき、「読みながら心を動かされたり何かを考えたりすることがないまま読み終わり、特に余韻にも浸らずそのまま終わる」みたいなことになってしまいがちなので、せめて自分がどんなものを読んでいたのかを言葉にして把握しておきたいなと思って、感想を書くということをやってみた。

何にも考えず感じずに読んでいるだけあって、ほとんど「~~を描いた物語。~~を感じる作品だった。~~なのが好き。」みたいなテンプレートになってしまっている感じがあるな……。

2021年に読んだ/観た中でいちばん好きな作品は間違いなく『響け!ユーフォニアム』シリーズだ。ユーフォに出合えただけで2021年はいい一年だったなと思える。

これがちょうどユーフォのアニメを観始めたくらいのツイートだった気がするんだけど、このツイートの数週間後には読みながら涙が止まらなくなる作品に出合えているの、いいね。

今年も色々な作品を読んだり観たりしていきたい。気になった作品をメモしているんだけど、今数えたら30作品近くあった。とりあえずこれを消化していこうかな。

皆さん、おすすめの作品があったら教えてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?